#ベストソング2018 2018年の邦楽大決算!

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12月も後半にはいり、いよいよ2018年も終わろうとしていますね。この記事を読んでいただいている皆様にとって、今年はどんな一年でしたでしょうか。

このブログの年末恒例企画、 #ベストソング 記事でございます。今年一年で僕が聞いて良かったものを並び立ててああだこうだ言うだけの記事。これを選んでる時ホントに楽しい。

今年は30曲を選びましたよ。本当はもっと選びたかったところなのですが、時間の都合上この曲数で。毎年そうなんですけど、本当は全部1位!と言いたいところなんだけど、便宜上、あくまでも形として順位付けをしてます。選定基準としては2018年内にYouTubeになんらかの形でアップロードされているもののみ、1ミュージシャン1曲としています。今年はさらに「スポットライト」枠として、18年内に音源は出していないけどビビっと来たぞ!な今年僕がハマったミュージシャンを選ばせて頂きました。

それでは30位からどうぞ!

 30.「changes」アイドルネッサンス

今年の1月に発表された「アイドルネッサンス解散」のニュースは、僕にとってはかなり衝撃的なものだった。デビュー時から彼女たちの活動をなんとなく追ってはいたものの、彼女達の活動に貢献できるようなことはなにひとつできなかったことを少し悔やんだりもしたし、発表直後に音楽番組で取り上げられた時は、事務所がもう少し解散の選択を留まっていたら、まったく違う景色がそこにはあったんじゃないのかと思ったりもした。

横浜ベイホールで開催された彼女達のラストライブ、そこで初披露された「最後の名曲ルネッサンス」はBase Ball Bearの「changes」だった。そのあまりにも美しすぎる「アイルネという環の結び方」に思わず涙すら流しそうになった。

Base Ball Bearの史実では、「十七歳」の次にリリースされたのが「changes」だった。一方、「17才」で幕を開けた彼女たちの活動は「changes」で幕を下ろした。「17才」から「changes」までの、Base Ball Bearの活動では見ることのできなかったグラデーションを、彼女達が見せてくれていたという解釈もできるなと思ったり。

アイドルネッサンスのメンバーは、今はそれぞれ全く違う活動を、それぞれの場所で行っている。そのどれもにきっとアイルネでの活動が活きているはずだ。これからの少女たちに幸あれ。

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29.「FUNNY GOLD」Suchmos

横アリでのワンマン、紅白出演、来年にはアリーナツアーにスタジアムライブ。益々飛ぶ鳥を落とす勢いなSuchmos

今年リリースされたミニアルバム「THE ASHTRAY」は、その人気に乗っかるようなわかりやすい作風ではなく、あくまでも彼ららしく「やりたい音楽をやる」というスタンスが如実に現れた一作だった。その中でもこの「FUNNY GOLD」は、彼ららしいグルーヴにさらに「艶」のような色めきが加わり、歌詞も一夜の情事が描かれている。同じ同郷であるサザンオールスターズの80年代の楽曲の雰囲気にも近いモノもあったりして、「湘南の海で出会った女性とのワンナイトラブ」のような世界観に思わず酔いしれてしまう。

28.「蒼糸」indigo la End

キーボード、バンド、女性コーラス、そして弦楽が絡み合うサウンドと、R&Bを基調とした、ゆったりとしているのにリズミカルなビート、川谷絵音の儚げな歌声。前作「Crying End Roll」は歌謡曲っぽさのある作品だった一方、「PULSATE」はR&Bやヒップホップの要素を取り入れた作品で、この「蒼糸」はその両者が上手く噛み合わさっている1曲。indigo la Endらしさとらしくなさが共存した「蒼糸」は、indigo la Endというバンドが持つ魅力と、常に進化し続けるこのバンドの在り方が最大限に発揮された1曲と言えるだろう。

27.「かわE」ヤバイTシャツ屋さん

数年前、ビレバンでしかCDが売っていないような頃から彼らのCDを買っていたことを思うと、NHKでのレギュラー放送にRIJFではGRASS STAGEで演奏したりと、すっかりデカいバンドになったなと誇らしい気分になってしまう。それでも彼らの基本的な部分はなにも変わっていなくて、歌詞中にもあるようにクッソ古典的な表現を使い、平成という時代の最後に彼らなりのラブソングで挑む彼らはやっぱりどうしようもなくロックバンドでむちゃくちゃカッコ良いのである。次の時代に彼らが「覚悟を決めて」王道ラブソングを作った時、いよいよどうなってしまうのだろう。期待が止まらない。

26.「栞」クリープハイプ

FM802 × TSUTAYA ACCESS!」キャンペーンソングとして、Radio Bestsellers名義で制作された楽曲のクリープハイプバージョン。Radio Bestsellersとしての「栞」は底抜けにキャッチーで、バンドサウンドに加えて打ち込みも弦楽もジャンジャン鳴りまくっていて、クリープハイプとしては到底作られないであろうサウンドだった。このサウンドに加えて、あいみょん04 Limited SazabysのGEN、sumikaの片岡、UNISON SQUERE GARDENの斎藤、スガシカオ錚々たる面々が揃った「栞」はクリープハイプの範疇から飛び越えて、様々な場所で「栞」を評価する声が聞こえてきた。

でもやはり僕はあのバージョンの「栞」がどこか好きになれなかった。尾崎世界観が作った曲にしてはあまりにも底抜けにキャッチー過ぎた。そんな気持ちでいたらクリープハイプの新譜「泣きたくなるほど嬉しい日々に」に、彼らバージョンの「栞」が収録されて、ちゃんとロック然としたアレンジになっていて、キャッチーさとロックのいい塩梅が出来上がっていたことがとても嬉しくて。このバランス感こそクリープハイプなのかなと。

25.「PAPARAZZI  ~※この物語はフィクションです~」RADWIMPS

君の名は。」でRADWIMPSは押しも押されぬ国民的バンドのひとつになったが、その一方できっと好き勝手色んなことを言われたりやられたりするようになっただろう。例えば今年の「HINOMARU騒動」なんかはそういう類のもののひとつだろうし、ポップなRADが好きだとか、昔のRADのほうが良かっただとか、こういうブログの批評も含めた一般ファンの声も矢面に立つ人間の心を苦しめるモノになっているかもしれない。なにより「文春砲」という言葉が代表するように、芸能人のプライベートを「有名税」という言葉で正当化して壊すような存在がこの世界には存在する。星野源が「Pop Virus」に伴うインタビューで「恋以降、パパラッチに追っかけられて廃人寸前だった」と話していたがまさにそのインタビューが示す通り、知らない誰かに追われ、自分のプライベートを世界中に暴露されることが芸能人なら当たり前の世の中は狂っていると言わざるを得ない。

そんな矢面に立つ人間と、そのプライベートを暴くことが仕事であるパパラッチ側の2つの構造で出来ている「PAPARAZZI  ~※この物語はフィクションです~」。タイトルに「この物語はフィクションです」とあるものの、あまりにもリアリティのある生々しい表現が印象的である。

「君の名は」の大ヒットが起こるとすかさず出てくる 下衆な奴

実家の親の家にへばり付いて 堂々直撃してきたな

息子さん苦節10年成功してよかったですね

親御さんとしてどうですか

あんたの親にも聞いたのか

カップルのフリで隣座って ストーカーばりに盗み聞くな

これが本当にフィクションなのが、それとも洋次郎をはじめとしたRADメンバーの身に本当に起こったことかは本人達のみぞ知ることである。が、これを「矢面に立つ人間」と「パパラッチ」の対立構造にするのではなく、その2者から様々な情報を享受している我々こそが一番この曲を真剣に受け止めなくてはならない。一時の知りたい感情だけで芸能人のプライベートを暴き、それでああだこうだと騒ぎ立てるか、そんなものに興味を示さず、彼らが自ら発信する音楽や言葉を大切にするか。あなたはどちらを選びますか。

24.「フィクション」sumika

ピアノが跳ね、ストリングスが響き渡るアレンジはまさにJ-POPのソレ。ポップとロックの二面性を持つ彼らだが、この曲はまさに彼らのポップサイドの魅力が爆発した1曲。ロックバンドは大好きだけど、ロックバンドがこういうポップな楽曲バンバン作っても良いと思うんです。特に今J-POPのど真ん中を走るシンガーって減ってるし。ロックバンドだけどポップも出来るよ!とか、ポップシンガーだけどロックも歌うよ!って人が増えると良いと思うし、sumikaはその好例。

23.「大不正解」back number

で、その「ポップスやるけどロックも出来るよ!」な曲がback numberの「大不正解」。とはいえ元々back numberはちゃんとロックバンドだったし、この曲はどちらかと言えばそれが揺り戻ってきたなって曲ではあるのだけど。「クリスマスソング」とか「瞬き」みたいなJ-POP然としたback numberも好きだけど、「スーパースターになったら」や「高嶺の花子さん」みたいなロックっぽいback numberも好きだし、蔦谷好位置のプロデュースによってこれまで以上のロック然としたback numberが見れたのは非常に嬉しかった。今後もいい塩梅にこういう路線もやってほしいと切に願います。

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22.「さよならエレジー菅田将暉

ホントこのMVの菅田くんの髪形何回見ても慣れねぇな...

シンガーソングライター石崎ひゅーいが作詞作曲を手掛けた1曲は、菅田将暉の音楽活動の中でも最大のヒットを記録し、今年リリースの楽曲の中でも大ヒットの部類に入るくらい世間に浸透したのではないだろうか。イントロからアコギのエレキ、2つのギターのリフが高揚感を生み出しつつ、石崎の世界観を踏襲した菅田将暉の歌声を邪魔しないように絡みつきながら曲を展開していく。役者活動だけでなく、来年の歌手活動も期待したくなる1曲。

21.「終わらない世界で」DAOKO

 深い緑色のような、爽やかなのに憂いのある、これまでのDAOKOらしさを一段階上へとアップデートしたようなメロディとサウンド小林武史のプロデュースによるもの。以前から何度かこのブログやTwitterにも書いているように、小林武史の大味のアレンジ、ミスチルやback numberに代表されるようなサウンドメイクは正直あまり好きになれないのだが、この曲は大味じゃないのにおもわずホロリとしてしまうような雰囲気に満ちていて、彼のこういうアレンジはとても良いなと。DAOKOは様々なミュージシャンとコラボを積極的に行うミュージシャンで、今年は中田ヤスタカ小林武史という、今の日本音楽シーンを代表するような2者とのコラボが印象的だが、中田ヤスタカはあくまでもヤスタカ節を貫き、一方小林はDAOKOに寄り添ったアレンジで、普段の活動から感じているイメージとは両者逆のことをしているのが個人的には面白い。

20.「My HERO」04 Limited Sazabys

フォロワーさんの影響で聞き始めたフォーリミ。ボーカルのGENくんとはほぼ同郷だったり、彼らが毎年開催しているYON FESが近所で開催されていることもあり、スゴク親近感を覚えている。

彼らの音楽性はメロコアやパンクの流れを汲んだパワーポップ。以前はその激しいイメージにちょっと敬遠していた部分もあったのだけど、メロコア・パンクの前に彼らはポップ。それの僕自身気付くことができたから彼らの音楽を聴きだした部分があるのかなと。彼らがより世間に広まることで、僕みたいにメロコアやパンクのイメージが変わる人も多くいるのかなーなんて考えたり。

「My HERO」は辛い時に聞いたら絶対元気になれるような曲。いつかこの曲に励まされたら、この曲がもっと好きになれる気がする。

19.「ain't on the map yet」Nulbarich

 シティポップなのに自然派。それが僕のNulbarichのイメージ。都心を走る高速で聴いても、海沿いの道を走る時に聞いても映えるのが彼らの音楽性で、ひとくちにシティポップと言っても様々あるよな~とNulbarichの曲を聴くたびに思わされる。いい意味で何も考えず、シンプルに聞いているだけで心地よくなるような楽曲は今年は武道館公演も行い、人気を上げている彼ら。近年のシティポップブームを来年ももっと盛り上げてほしい。

18.「たったさっきから3000年までの話」チャットモンチー

チャットモンチーの解散は2018年の大きなトピックだった。00年代から10年代に渡ってロックシーン/ガールズバンドシーンを牽引してきた彼女達。特に後期は音楽的にも新しい取り組みをガンガンやっていて、若手バンドにとっても他のガールズバンドや女性ミュージシャンにとっても彼女達の活躍は励みになっていたのではないだろうか。

新曲「たったさっきから3000年までの話」を含むラストアルバム「誕生」は、あくまでも「新しいチャットモンチー」という、結果としてどこまでもいつも通りのチャットモンチーで、そのあまりにも美しすぎる結末は心が震えて止まなかった。チャットモンチーからチャットモンチー済になった彼女達だが、其々新たな場所でまた音楽を作り続けている。西暦3000年になっても彼女達の作った音楽が鳴り続けていればいいな。

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17.「カメレオン・レンズ」ポルノグラフィティ

誤解を恐れずに言えば、もうポルノの新しい曲に心を揺さぶられることは無いだろうと思っていた。元々音楽を能動的に聞き始めた頃に他のどんなミュージシャンよりも高い熱量でファンでいたし、僕のライブ童貞は今から10年前、僕が中学生の頃、三重サンアリーナポルノグラフィティに捧げた。だけどいつしかJ-POPの真ん中を走ってた彼らの音楽と、高校大学とロックバンドやサブカルチャーに傾倒していった僕との距離は、段々離れていった。
それでも新曲は追い続けてて、彼らの紅白の連続出場が途絶えた以降の新曲は良いなと思わせるものが幾つかあって、それでも当時ほどの熱量では曲を聴くことは無かった。2018年を迎え、彼らは初春にリリースしたこの「カメレオン・レンズ」をキッカケに、「ブレス」「Zombies are standing out」「フラワー」と、つくづく僕の心を揺さぶるようなカッコイイ!と思えるような曲を連発した。もうそれだけでなんだか嬉しいのに、それが全部良い意味で今までの彼ららしくない革新的な楽曲なのも嬉しい。まるで「そろそろ本気を出してみっか」と昭仁と晴一の声が聞こえてきそうなほど。そして来春3月、10年前に僕が初めてポルノを、そして音楽ライブというものを生で見たあの場所で、また彼らを見る事ができることになった。こんな運命めいたことがあって良いのだろうか。心から、心から楽しみだ。

16.「ノーダウト」Official髭男dism

「今年ブレイクしたと思うミュージシャンは?」と新宿か渋谷の駅前で誰かれ構わず聞いて回ったら、結構色々な名前が出そうなものだが、きっとOfficial髭男dismの名前は沢山上がる事だろう。ピアノポップが中心にドカンと据えられて、そこから様々な音楽性に枝が分かれているような彼らの音楽性は、老若男女を越え、そして音楽ジャンルをも越えて沢山の音楽ファンに今年刺さったことだろう。

15.「Summer Gate」佐藤千亜妃

オルタナシューゲイザーといった音楽性が印象的なきのこ帝国のボーカル、佐藤千亜妃のソロプロジェクト。バンドとは完全な棲み分けがなされ、重たいバンドサウンドが印象的なきのこ帝国本隊に対して、佐藤千亜妃名義でリリースしたE.P.「SickSickSickSick」は全編打ち込みで作られた軽やかな作品となっている。とりわけこの「Summer Gate」は、夏夜の匂いや湿度の高さみたいなものがそのまま曲にギュッと込められているような、聞き手にそれぞれの思い描く「夏」がフラッシュバックさせるような楽曲で、そういう季節感がそのままパッケージングされているような楽曲はきっとこの先も歌い継がれていくんじゃないかなと。

14.「SUNNY GIRL」Awesome City Club

ありふれた日常が、或いはその中に想う人がいれば、その日々は美しいという歌は、決して少なくない。星野源が支持された理由のひとつは彼の日常描写が新鮮かつ普遍性の溢れる物だったからだろう。
この「SUNNY GIRL」もまた、ありふれた日々が「君」の存在によってガラリと色を変えると歌った1曲だ。先日記事にしたラブソングについての話じゃないが、そういう歌詞をありきたりだ、という人も多いかもしれない。でも、僕はそれこそが恋の本質なのではと考えてしまう。恋をするだけで見慣れた街が色めき、歩いているだけなのに駆け出したくなって、日々が少しだけ楽しくなるような。そんな恋の有り様を彼らならではのポップスで表現したこの曲が、やっぱり僕は大好きなのである。

13.「住所 feat.岡村靖幸KICK THE CAN CREW

昨年の「ステップアップLOVE」に続く岡村靖幸のコラボ作品。とは言っても、「ステップアップLOVE」と大きく異なるのは、前作は彼自身がプロデューサーとなりDAOKOの魅力に岡村靖幸の音楽性を注ぎ込んで生まれた共作と呼べるようなものだったことに対し、今回はあくまでもKICK THE CAN CREWに寄り添うように、しかし岡村靖幸の身体中から溢れてやまない魅力はまるで大海のようにこの曲の間中絶えることはない。
...なんて、岡村靖幸のことばかり書いてしまったが、もちろんKICKの3人の「LOVE」がテーマになったリリック、そしてサウンドメイクも十二分に素敵だ。サウンド・プロデュースにはKREVAだけでなく蔦屋好位置も携わっているとのこと。悔しいが、彼がプロデュースする作品は好きなものが多くて困ってしまう。

12.「Lemon」米津玄師

今年最大のヒットソング。もうこんなところで僕がどうこう言うよりも至る所に書かれた「Lemon」評論を読んでいただく方がこの曲の魅力が伝わるのではないかとちょっぴり投げやりな気持ちになりそうなほど、そのくらいこの曲は2018年の日本にジャストフィットしたということだろう。昨年の「打上花火」といい、つくづく米津玄師というミュージシャンは10年代音楽シーンを代表する存在になったなと驚かされる。言わずもがな、来年も彼は音楽シーンに素晴らしい作品を残し続けることだろう。
「死別」という、ポップスという音楽ジャンルの範疇で歌うことが出来るものの中でも最大級に重たいテーマを背負いながらも、その重さを幾多もの比喩で包み込み感じさせることなく、でも誰しも聴いた後は胸にチクりと微かな痛みを残す。この途轍もない絶妙なバランス感が「Lemon」をここまでヒットさせたのではないだろうか。

11.「Ref:rain」Aimer

まるで雨音のような鍵盤によるイントロ、そして雨雲のような憂いを持ったAimerの歌声。「恋は雨上がりのように」という作品の文脈を継承しながらも、楽曲単体でも十二分に感動させるパワーをもった1曲だ。このフレーズがどうこう、このアレンジが云々、という曲ではなく、この曲全体を包み込む雰囲気や感覚、情緒があまりにも愛おしく、美しい。

10.「今夜このまま」あいみょん

あいみょん、すごく売れすぎだみょん!ってくらい売れたあいみょん。なんだ紅白って。そんなことあんのか。
もうね、ほんっとうになんだか悔しいくらい売れちまって、でもほんっっとうに悔しいけどこれっだけ売れるのにも全然納得できるくらい曲も良くて。米津玄師もそうなんだけど、本当に良質な作品を生み出しているミュージシャン(勿論、良質というのは主観かもしれないのだけれど)がこうやってどんどん世間に浸透して、いわゆる「ヒット」を生み出していることが本当に希望だし、日本の音楽シーン、めちゃくちゃ希望に溢れてるなって思わされる。
この曲が主題歌である「獣になれない私たち」の世界観を何気なく表現しつつ(「アレください」はまさにその好例)も、ドラマを見ていなくても曲の世界に浸ることのできる歌詞。Aimer「Ref:rain」もそうだが、安易なタイアップで簡単にヒットする/しないが左右されない時代だからこそ、楽曲とタイアップ先の関係性はお互いが良質な作品を創り出すためにとても重要になっていることを痛感する。

9.「かかってこいよ」NakamuraEmi

現代の社会の在り方に異議を唱えるかのようなリリックと、それを踏まえた上でひとりひとりの聞き手に対峙し、聞き手は3分6秒のうちに否応なく鼓舞される。そんな力強さが印象的なNakamuraEmi「かかってこいよ」。ギターとドラムだけで展開されるのに、どんな曲よりもグルーヴィでファンクネスなアレンジは1度聞いただけで二度と忘れられない。何より、力強くてメラメラと燃え滾る、魂を焦がすようなNakamuraEmi自身の歌声に、頭をぶん殴られたような衝撃を覚える。ヒップホップの文脈を踏襲しつつも、レゲエ、ジャズ、そして竹原ピストルをはじめとした様々な音楽から影響を受けている彼女だからこそ産まれるべくして産まれた作品だろう。

今年、中津川 SOLAR BUDOKANに参加した際、初めて彼女のライブを見たのだが、小柄な身体からは想像もつかないほどソウルフルで歌唱に驚いたし、なによりどんな曲を歌っていても彼女は笑顔なのだ。本当に心から音楽を楽しんでいる、音楽という文字を体現するかのようなライブに衝撃を受けた。何かに打ち込んで、心から楽しめる人を見ていると、こちらも楽しくなる。これこそエンターテイメントの基本であり、究極かもしれない。

8.「目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)」清竜人

ぶっちゃけ、今まであまり清竜人の音楽は積極的に聞いてこなかった。清竜人25の「Mr.PLAY BOY...♡」なんかは知ってはいたものの、その独自性というか、端的に言えばどこでも見たことのない何かに面喰らったというか、どう評価したら良いのか分からないというのが正直な感想だった。以来、特に彼の音楽を聴く機会は無かったのだが、今年清竜人と僕が愛してやまない吉澤嘉代子がデュエットする、と聞いて良くも悪くもどうなるのか物凄く楽しみにしていた。

蓋を開けば、その曲調は歌謡曲の匂いがするバラード。80年代を彷彿とさせるようなノスタルジックな雰囲気に包まれたサウンドと、男女の少しクサいような会話劇調の歌詞。J-POPには無い、歌謡曲ならではの艶や煌めき、哀愁や憂いといった要素が集まって出来たかのような1曲は、夜明けの港なんかで聴いたら泣けて泣けて仕方ないのかな、なんて考えてみたり。デュエット相手に吉澤嘉代子という人を選んだのもナイスチョイス。彼女もまた、歌謡曲の文脈を受け継ぐ存在だ。昭和の歌謡曲、そして平成のJ-POP。来たる新時代、次はどんなジャンルが「大衆音楽」たりうるのか、そもそも「大衆音楽」という概念は残り続けるのか。平成が終わろうとする今、こうして時代の橋渡しとして歌謡曲に舵を切った曲が生み出されたことは非常に価値があることだろう。

7.「はたらきたくない」打首獄門同好会

極めて僕個人の話となるが、4月から新社会人として働くようになり、正直に申し上げれば音楽をじっくりと聴いたり、ブログを沢山更新する余裕は無くなってしまった。1年経ち、もう少し仕事に慣れることが出来ればまた違うのだろうが、少なくとも今年はもうなんか社会人というシステムに忙殺されるような1年だった。
学生時代からよく聞いていた打首獄門同好会だが、いよいよ今年は日本武道館でのライブも成功させてしまい、僕がライブに行っていたキャパが100とか200の頃と比べたらもう全然めちゃくちゃデカいバンドになっちまったなーと思っていた。ライブにもあまり行けてなくて、そのうち見たいなーと思っていた頃に参加した中津川ソーラー。打首はセカンドステージの大トリ。4000人くらいいそうな満員の会場に圧倒されつつも、そのデカいキャパを完璧に掌握していた打首の姿に思わず涙しそうになったほどだった。
その時の演奏された中でもとりわけ印象的だったのが、当時MVで公開されたばかりのこの曲。既に完全にライブで定着していたことにも驚いたが、もうこれ完全に今の自分の(というかもう多分殆ど全国民の)代弁者じゃねぇかと。そうだよ!はたらきたくねぇよ!!!!なぁ!!!!なんてライブを見ながら思ったものである。でも曲の最後の最後には明日に希望を持たせるような、シンプルなのにちょっぴり泣けるような歌詞なのもまた、グッとくるポイントだったりする。はたらきたくないね~♪

6.「Pop Virus」星野源

J-POPというジャンルにブラックミュージックの要素を取り入れ、「YELLOW DANCER」というアルバムで「イエローミュージック」という、彼が定義するブラックミュージックの手法と日本のポップスが融合した音楽性は、完全にひとつのジャンルとして出来上がった。そして「イエローミュージック」は「恋」によって日本中に爆発的な広まりを見せ、「Family Song」「ドラえもん」とまるで病原菌の潜伏期間のように我々リスナーの身体を蝕み、「アイデア」そしてこの「Pop Virus」で「イエローミュージック」は「ポップ ウイルス」となり、僕達は完全にそのウイルスを発症し、感染してしまったのだ。
「ポップス」「J-POP」なんてヤワなものでは無い。世界基準の音像、日本ならではの情緒、MPCやシンセの電子サウンドとギターやベース、ストリングスやコーラスが複雑に絡み合っては離れてを繰り返すサウンドは今までに聞いたこともない、けどどこか懐かしさも漂う。これこそが「イエローミュージック」なのか、という衝撃。既存の文化へのリスペクトを怠らず、けれどそれをぶち壊し、その残骸を全く違った手法という名の接着剤を用いて、新しい形の新しいモノを作り上げるような。そんな感慨がこの楽曲には漂っている。「Pop Virus」という言葉に嘘偽りのない、感染したかのように虜になってしまう新しいポップスの形がここにある。

スポットライト「Hero」安室奈美恵

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安室奈美恵、引退」という2018年の日本音楽シーン最大のトピックは、結果として安室奈美恵というひとりの女性の功績を改めて浮き彫りにした。

僕も彼女のラストツアーの映像を見て、今までは知りえなかった安室奈美恵という歌姫の底知れぬ魅力に心底惚れてしまったクチだ。何故今まで触れてこなかったのだろう、と後悔の念すら感じてしまった。笑顔を絶やさず、全力でステージを駆け抜け、最後の最後までカッコよくて美しい「安室奈美恵」を魅せ切った彼女は、今年聞いたり見たりしたどんな他のミュージシャンよりも輝いていた。

安室奈美恵は引退した。表舞台に戻ってくることはきっともう無いだろう。それでも、表舞台に立っていなくても、彼女はこの国の「Hero」として名前を遺し続ける事だろう。

 5.「WATER」マテリアルクラブ

Base Ball Bear小出祐介主宰、音楽プロジェクト「マテリアルクラブ」。小出に加え、チャットモンチー福岡晃子の2人が中心となりつつも、様々なミュージシャンをゲストに招き作られた1stアルバム「マテリアルクラブ」は、「分かりやすさ」や「キャッチーさ」とは程遠いアルバムで、言葉通り「実験的」な作品だ。簡単に理解できるものではないし、主宰者の小出自身、マテリアルクラブは「分からないと言われる方が嬉しい」という旨の発言をしている。

ポップスとは分かりやすさ、というのが今の音楽シーンの常である。分かりやすい物が消費されて、分かりにくいものは敬遠される。ポップスはいつだって分かりやすい。

なのにどうしてマテリアルクラブは、この「WATER」という曲は複雑で分かりにくい作品なのに、どこまでもポップだ。こんな曲は他に聞いたことがない。

星野源が、分かりやすいポップスに分かりにくい複雑な音楽性を混ぜ込んでいるミュージシャンだとすれば、このマテリアルクラブは分かりにくい複雑な音楽をポップスに仕上げている。スゴく似ているな、と思うし、どちらも僕は愛しい。

こんな革新的な音楽を鳴らされたんじゃあ次に期待しない訳にはいかない。勿論小出にはBase Ball Bearというバンドがあって、来年には新作のリリースとツアーが控えている訳だが、ぜひマテリアルクラブとしてのリリースも気長に待ちたいと思う。彼らの文法が音楽シーンに革命を起こす。

4.「消えない」赤い公園


赤い公園がバンドの核となるボーカルを失ったのが昨年8月、年始には3人のみでのライブを立川で敢行したりもしていたが、やはり活動の場はかなり限定的なものだった。そんな彼女達の活動が大きく展開したのは5月、石野理子の加入発表からだろう。赤い公園が次の活動形態を模索していた頃、時を同じくして解散したアイドルネッサンス。その中でもとりわけ大きな存在感を放っていた石野理子赤い公園の組み合わせは、今までの赤い公園の魅力を踏襲しながらも、「新・赤い公園」がとんでもないモノになる予感に満ち満ちていた。
そして遂に新体制以降初めてとなる新曲「消えない」がYouTube上で解禁された。

石野理子の幼さの残る瑞々しくも激しい歌声と、赤い公園らしさ全開のポップなのにしっかりロックなサウンドはまさに、予感通り赤い公園らしさとらしくなさが共存していた。

とりわけ、この曲は歌詞が素晴らしい。赤い公園のこれまでのストーリー、そして石野理子のこれまでのストーリーを踏まえ、その先にある「新・赤い公園」のこれからを宣誓する、狼煙の様な詞がどこまでも泣けてしまう。 こんなところで消えない消さない。まさに、彼女達の胸で燃え滾る音楽への飽くなき魂が消えることは無いだろう。

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3.「女優」吉澤嘉代子

あいみょん、米津玄師、ヤバT、DA PUMPリバイバルを含めても、今年ブレイクしたミュージシャンを挙げれば暇がない。だが、僕は他のどんなミュージシャンよりも彼女がブレイクしたことが何より嬉しかった。

吉澤嘉代子。年始の「関ジャム」で昨年リリースの「残ってる」が取り上げられてからという物、日に日に彼女の人気が伸びていくのを肌で感じ、その喜びをじんわりと噛み締める日々だった。

ブレイクしても彼女はあくまでも彼女で、特に今年リリースしたシングル「ミューズ」、そしてアルバム「女優姉妹」で彼女が紡いだ音や詞は、まるで絹のような柔らかさと温かみを内包しつつも、時折チラリと覗かせる人間の持つエグみが吉澤嘉代子たらしめていた。

特に「女優」という曲は、ポルノ女優が主人公という生々しさを持ちつつも、永遠の愛を誓う歌詞と優しさを音にしたような曲に思わず胸がすくわれたような気持ちになる。心にあるつっかえが、彼女の歌を聞くと消え失せてしまう。

僕もいつか愛を誓う時、己の姿が変わり果てても変わらない愛を約束出来るように生きていたい。

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2.「初恋」宇多田ヒカル

2年前、アルバム「Fantôme」で、あまりにも生々しく「死」をポップスとして描き切った宇多田ヒカル。一転して今年リリースしたアルバム「初恋」では、12曲を通して瑞々しい愛を歌った。 彼女のデビュー作「First Love」を彷彿とさせるタイトル曲「初恋」。「First Love」は「最後のkissは タバコのflavorがした」という歌詞が示す通り、「初恋の終わり」を描いた失恋歌だった。一方、今回の「初恋」は煌めくような「恋に落ちた瞬間」、そして「最初で最後の恋」という恋に落ちたひとりの人間の覚悟が描かれる。

うるさいほどに 高鳴る胸が

柄にもなく 竦む足が今

静かに頬を伝う涙が 私に知らせる

これが初恋と

風に吹かれ震える梢が

陽の射す方へ伸びていくわ

小さなことで喜び合えば

小さなことで傷つきもした

ひとつひとつの情景描写に耳を傾け目を閉じれば、まるで映像をみているかのように頭の中に映像が浮かんでは消えていく。クラシックの名曲を聞いているかのような気持ちにさせられたと思えば、映画の劇伴を聞いているかのようなドラマチックな気持ちにもさせられて、結局この曲はどこまでもポップなのだと痛感する。

「Fantôme」も「初恋」も、宇多田光というひとりの人間の、極めてプライベートな部分が描かれた作品だ。しかしどうしたことか、僕も、僕の母親も、大学の同期も、日本中でこの2作が人々の琴線に触れている。それはきっと、彼女が生み出すその世界が、あまりにも美しいからだろう。

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1.「闘う戦士たちへ愛を込めて」サザンオールスターズ


#ベストソング2018、第1位はサザンオールスターズ「闘う戦士たちへ愛を込めて」。

平成も終わろうとしている2018年だが、社会派なことを芸能人が語ったり、ましてや風刺曲なんてものを作ったりすると、途端にネットで叩かれる時代だ。ミュージシャンは本来社会と深く繋がっているべきなのに、社会と音楽を切断してしまおうとする今の風潮はミュージシャンにとっても脅威だろう。

サザンオールスターズはいつだって社会と向き合い、時に世相に鋭く切り込むような楽曲を作り続けてきた。シニカルに、俯瞰した目線で現代を観察し、表層を撫でるのではなく、本質と言う名の深層まで刃が突き刺さるような社会風刺を40年間時折サラッとやってのけてきた。

サザンオールスターズは今年40周年を迎えた。もうそれなりに長くファンを続けてきてある程度彼らのやり方を知ってきた僕は、今年は軽快なサザンらしい夏ポップか、切ないバラードが新曲として披露されることだろうと高を括っていたのだ。

蓋を開いてみれば現代社会の闇である「労働問題」に真正面から向き合い、バサリと切り倒してしまうような歌謡ロック。労働者に寄り添い、権力に向き合うドラマ調の歌詞は現代社会に生きるすべての「闘う戦士」たちに突き刺さったことだろう。紛れもない、僕もその一人である。

こんなにも良い期待の裏切りが今まであっただろうか。このタイミングでリリースするにはこんな意外過ぎる楽曲なのに、ちゃんと彼ららしくもあるのが最早憎たらしいほどだ。

サウンドも前作「葡萄」の流れを踏まえつつも、当時のような歌謡曲全開ではない、歌謡曲のエッセンスを残しつつもどこでも聞いたことの無いような斬新なサウンドメイクにも心がときめいてしまう。「サザン=湘南ポップス」のイメージを、40周年というそのイメージに乗っかっても誰も咎めないタイミングでぶち壊してくるサザンオールスターズは、本当のロックバンドだ。

今年の活動はベスト盤のリリース、NHKホールとROCK IN JAPAN FES.でのライブ、テレビへの出演と、正直かなり限定的なものとなってしまったサザンだが、来年の春からは全国ツアーが控えている。もう今の今から楽しみで仕方がない。

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以上、僕の#ベストソング2018!

改めてすべての楽曲をプレイバック!

1.「闘う戦士たちへ愛を込めて」サザンオールスターズ

2.「初恋」宇多田ヒカル

3.「女優」吉澤嘉代子

4.「消えない」赤い公園

5.「WATER」マテリアルクラブ

6.「Pop Virus」星野源

7.「はたらきたくない」打首獄門同好会

8.「目が醒めるまで(Duet with 吉澤嘉代子)」清竜人

9.「かかってこいよ」NakamuraEmi

10.「今夜このまま」あいみょん

11.「Ref:rain」Aimer

12.「Lemon」米津玄師

13.「住所 feat.岡村靖幸KICK THE CAN CREW

14.「SUNNY GIRL」Awesome City Club

15.「Summer Gate」佐藤千亜妃

16.「ノーダウト」Official髭男dism

17.「カメレオン・レンズ」ポルノグラフィティ

18.「たったさっきから3000年までの話」チャットモンチー

19.「ain't on the map yet」Nulbarich

20.「My HERO」04 Limited Sazabys

21.「終わらない世界で」DAOKO

22.「さよならエレジー菅田将暉

23.「大不正解」back number

24.「フィクション」sumika

25.「PAPARAZZI ~※この物語はフィクションです~」RADWIMPS

26.「栞」クリープハイプ

27.「かわE」ヤバイTシャツ屋さん

28.「蒼糸」indigo la End

29.「FUNNY GOLD」Suchmos

30.「changes」アイドルネッサンス

スポットライト:「Hero」安室奈美恵

今年も沢山の音楽と巡り合うことが出来ました。ただ自分自身の生活環境が完全に変わってしまったこともあり、例年よりも聞き込めなかった感は否めません。来年は今年以上に沢山の音楽と巡り合うことが出来たら良いなぁ。皆さんの#ベストソング2018 もぜひ教えてください!!
最後に僕が選んだ30曲のYouTubeプレイリストを貼っておきます。


以上!#ベストソング2018 でした!

 

fujimon-sas.hatenadiary.jp

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