美しい旋律、歌声、言葉。吉澤嘉代子「みつあみクインテットツアー」名古屋公演レポ!【ネタバレ含】

f:id:fujimon_sas:20181209194254j:image

12月7日に名古屋BOTTOM LINEで開催された、吉澤嘉代子「みつあみクインテットツアー」を見てきました。今年のライブ納め。

吉澤嘉代子のライブを見るのは、3月の「ウルトラスーパーミラクルツアー」CLUB QUATTRO以来。年内になんとかもう一度見ることが出来て嬉しい限り。

ツアータイトルの「みつあみクインテットツアー」が示す通り、今回のツアーは五重奏によるクインテット編成で行われる。思えば前々回の「お茶会ツアー」はギタリストと2人きりというシンプルな編成で、前回の「ウルトラスーパーミラクルツアー」はキーボード、ベース、ドラム、ギターに加えサックスとトランペットという豪華な編成で、そして今回はクインテット編成での開催。3回のツアーはいずれもレコ発ツアーでないツアーいうこともあり、どのツアーもそれぞれのツアーならではの特色を持つ。ツアー毎に編成が異なるという他に類を見ない彼女ならではのライブの在り方に、毎ライブ発表の段階から驚かされる。これは吉澤嘉代子というシンガーソングライターが持つ自由な発想と彼女の楽曲の魅力があってこそ行えることだろう。

早速本編の話を。まずはセットリストから。

1. 鏡

2. ユキカ

3. 月曜日戦争

4. 胃

5. えらばれし子供たちの密話

6. 地獄タクシー

7. 人魚

8. 女優

9. 残ってる

10. がらんどう

11. 泣き虫ジュゴン

12. 綺麗

Enc.

1. さらばシベリア鉄道[大瀧詠一]

2. 東京絶景

3. 一角獣

ピアノと弦楽器の五重奏は、師走のこの時期に聞くのに相応しいクラシカルな雰囲気を漂わせていて、リアレンジされた楽曲は同じ曲なのにひとつひとつの音が新鮮に響く。打ち込みや豪華なバンドサウンド、ギターの弾き語りなど、元来から彼女の楽曲は1曲1曲がそれぞれ違った音楽性であり、それぞれ違ったサウンドが鳴っているが、原曲からアレンジが変わることによって曲が原曲とはまた違った意味合いを持ったような鳴り方をしていた。

例えば2曲目に演奏された「ユキカ」は、原曲では煌めくような恋心の表れとして打ち込みサウンドが印象的な1曲となっていたが、今回のライブでは恋をするひとりの少女の内面世界の中に迷い込んだかのような、軽やかでありどこかシリアスな印象に。そのシリアスさが「ユキカ」の歌詞の中でもとりわけ印象的な「あなたが好き」というフレーズを一層引き立たせていた。楽器が変わるだけで印象も随分変わるんだなと驚いたし、それこそが彼女の1曲1曲が持つグラデーションであり奥深さだ。

そしてその新しいアレンジを巧みに乗りこなし、「歌心」のある声を届ける吉澤嘉代子自身に思わず惚れ惚れとする。曲間のMCの時の吉澤は、ひとつひとつの言葉をゆっくり推敲して発していて、その彼女の人間味というか、言葉が持つ底なしの影響力を理解しているからこそ慎重に言葉を選ぶ姿が印象的なのだが、曲になると柔らかだったり、時には熱烈な歌声を迷いなくホール中に響かせる。曲によって歌声の印象が全く違う彼女の歌は、まるで歌詞を自分に憑依させている様。その詞を憑依させた歌声を一人一人の観客に届ける様は僕が今まで見てきたどんな歌手のなかでも誠実さに満ちていた。

彼女の歌詞の中には鋭利な刃の様な言葉も、スノードームみたいなキラキラした言葉も、とにかくたくさんの言葉があって、そのどれもが彼女ならではのワードセンスに光っていて、油断してると彼女の詞世界から戻ってこれなくなりそうな気持ちになる。「残ってる」の生々しい描写も、「東京絶景」の日常を「美しい」と肯定する姿も、そのすべてが人間味にあまりにも溢れすぎていて、だからこそ彼女の詞世界は美しい。その美しさに思わず引き込まれ、日常を忘れそうになるほどだ。彼女の人間味溢れる楽曲は、人間の酸いも甘いもすべてを映し出していて、それがどうにもリアルだ。小手先の生活感に紛れ込ませた人間味・日常味じゃない、一見するとフィクショナルな世界に人間の本質を紛れこませて、見せつけ、曝け出すからこそ、彼女の紡ぐ言葉は、歌は、美しい。そんな彼女の美しさが、五重奏によって一層引き立てられていたライブだった。

今回のツアーは「女優姉妹」のリリース後のツアーだが、今回のツアーはあくまでも『五重奏で演奏される吉澤嘉代子の楽曲』を存分に聞かせるというコンセプトであり、「女優姉妹」アルバム曲の演奏は数曲に留まった。「鏡」「女優」という「女優姉妹」の中でもハイライトとなるような2曲の演奏は、2月からの「女優ツアー」の前哨戦ともいえるようなものだった。月並みな言葉だが、「女優ツアー」も益々楽しみだ。

彼女にとって2018年は躍進の年だった。そんな彼女のライブで今年のライブを納めることができたのは僕としてもとても光栄だ。とっても贅沢で美しい2時間でした。もっともっと、吉澤嘉代子の音楽が世間に広まることを、来年も益々の彼女の躍進を祈ってこの記事を終える。

女優姉妹 (通常盤)

女優姉妹 (通常盤)