サザンオールスターズ「海のOh,Yeah!!」完全レビュー! ~「壮年」期サザンを総括する、1家に1枚必携のベストアルバム!!~

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8月1日、サザンオールスターズのプレミアム・アルバム「海のOh,Yeah!!」がリリースされた。

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サザンオールスターズは1998年に「海のYeah!!」(海のイエー!!)というベストアルバムをリリースしている。それから20年が経過し、サザンそのものも40周年の節目を迎えた今年、20年振りに満を持してサザンが発売する2枚組ベストアルバム、それが「海のOh,Yeah!!」(海のオヤー!!)だ。

本記事では「海のOh,Yeah!!」に収録される全曲解説を行うと共に、その曲順や2枚に分けられた収録曲に込められた意味や、この20年のサザンオールスターズを総括することができたらと思う。

そもそも「海のYeah!!」ってどういうアルバムだったの?

今作のレビューの前にまずは「海のYeah!!」がどういうアルバムだったのかを記しておきたい。

1998年の6月25日、サザンオールスターズのデビュー20周年記念日にリリースされたベストアルバム。バラードベストや完全生産限定版を覗くと、今回「海のOh,Yeah!!」がリリースされるまではこの作品がサザンオールスターズ唯一の純粋なベストアルバムとなっている。

「純粋なベストアルバム」と書いたものの、「海のYeah!!」の基本テーマは「夏」であり「海」である。「SEA SIDE」「SUNNY SIDE」と題された2枚のDiscはヒット曲と爽やかな夏空を彷彿とさせる曲に溢れている。 サザンオールスターズの楽曲を年代順に、ヒット曲や夏・海がテーマとなった楽曲を30曲詰め込んだこのアルバムは、2018年現在までで480万枚を記録。一家に一枚、という文句があながち間違いではない程の販売枚数記録を打ち立てた。

デビュー当時のサザンは22歳(今の俺より若いじゃねえか...)そこから20年というと42歳。そろそろ老いを感じるようになるかな?といった頃に「海のYeah!!」はリリースされた。そういった背景からもこの曲に収録された楽曲は全体的にまだまだ若さを感じるものばかりである。「勝手にシンドバッド」なんてもう若さという勢いで突っ走って作られたんだろうなってのをヒシヒシと感じる曲だし、「エロティカ・セブン」「マンピーのG★SPOT」あたりも、桑田佳祐の心の奥底に残されていた童貞イズムみたいなものが突然暴れだして作られた、みたいな曲。

そんな「青年」が「壮年」に至るまでの思考や感情(から作られた曲たち)をギュギュッと濃縮させたのが「海のYeah!!」であり、今では日本の夏に欠かせないアルバムとして今でもチャートの常連として名を連ねている。

 

そして、あれから20年。

Disc1「Daddy Side」

今回の「海のOh,Yeah!!」は「Daddy Side」「Mommy Side」の2枚に分かれている。Disc 1の「Daddy Side」には、「海のYeah!!」から地続きの若さ、まだまだ「恋」や「愛」に生きたい気持ちと、家庭や社会と上手く付き合っていかなくてはならない「中年」あるいは「壮年」さ、そしてその先に向かう自分という、様々な感情の狭間に生きる一人の男の葛藤、まさしくDaddyな葛藤がこのアルバムを通して表現されている。

TSUNAMI

 40周年を記念してリリースされるこのアルバムの1曲目に相応しい、サザンオールスターズ史上最も世の中に浸透した、言わば彼らの1番の代表曲。ワビサビを感じるグッドメロディと、普遍的な愛をテーマにした美しい日本語が使われた歌詞が人々の心に突き刺さる。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない

愛し合ってるからこそ、素直になれないときだってあるだろう。そんな恋愛関係が僕は美しいと思うし、たくさんの人がそう思い、共感したからこそこの曲は広く世間に広まったのだろう。

3.11以降、タイトルが原因でこの曲は放送されないこともあったし、未だにサザンオールスターズとしてこの曲を演奏したのは10年前の30周年記念ライブが最後になっている。今回、改めてこの曲がこのアルバムの1曲目に据えられた事で、日の目を見ることになった事が心から嬉しい。曲に罪は無い。この曲がサザンオールスターズのライブで演奏される日も近い事だろう。心待ちにしたい。

この曲からDisc 1が始まることで「Daddy Side」はラブソングやサザンと言えば!な夏歌が中心に据えられることが示唆される。

LOVE AFFAIR ~秘密のデート~

横浜の街と不倫関係を描いたラヴソング。

昨今の報道を見てると「不倫=悪」と断罪する人が沢山いて、だからベ〇キーとか川〇絵音とかがバチクソに叩かれた訳なんだけど、その人達の関係を他人が叩くのってなんだかなぁと思ったり。人間は「正しさ」で行動する訳では無い。「してはいけないと分かってるけど」という事が世の中には溢れてる。そんな揺れる気持ちが(直接的に表現されてる訳ではないが)描かれている。

何より、横浜デートの入門編としてこの曲を参考に出来てしまうのもこの曲の魅力だろうか。マリンルージュに乗って海を楽しみ、大黒埠頭ベイブリッジ(虹=レインボーブリッジの意味なのだが、桑田佳祐がレインボーブリッジとベイブリッジを勘違いしてこの歌詞が生まれた)を一望し、シーガーディアン(元町のホテル・ニューグランド内にあるBar)でお酒を楽しむ。これだけで充分素敵すぎるデートができる。デートソングは世の中に溢れているが、その中でも最も素敵な曲のひとつだろう。

BLUE HEAVEN

40thシングル。美しいメロディに清らかな歌詞。サザン節なようで、他にこんな曲は思いつかない。夏なようで、秋なようで、冬っぽくもあり、春らしさも感じる。要はオールタイムで聴ける曲なのだが、季節性も含んでるような気もするのが面白い。

特筆すべきは間奏のギターソロ。桑田が得意とするボトルネック奏法が生み出す浮遊感のあるギターサウンドは、まさしく青々とした空を飛んでいるような、独特の感覚に浸ることが出来る。桑田佳祐という人は唯一無二の声を持った稀代のボーカリストだが、実は様々な楽器を演奏できるマルチプレイヤーの側面も併せ持つ。ギターはもちろん、ベース、ドラム、キーボードも演奏してしまう。その中でもボトルネックギターは、国内でも著名な演奏者として名が上がるほどである。桑田佳祐のマルチな才能を音で感じることの出来る1曲だ。

イエローマン~星の王子様~

 サザンオールスターズは98年に「さくら」と呼ばれるアルバムをリリース。その内容はハードロックに傾倒した、まさしくダークサイドで、サザンオールスターズの多面性を魅せるものだった。そのアルバムを携えた初のドームツアー直前にリリースされたこの曲は、「さくら」を踏まえた語感重視のデジタルロック。歌詞に意味は無く、「海」や「夏」、「失恋のハートブレイク」といった世間がイメージするサザン像とはかけ離れた1曲。サザンオールスターズってバンドはつくづく「ロックバンド」なんだと改めて納得してしまう1曲である。

SEA SIDE WOMAN BLUES

ハワイアン調の柔らかなサウンドは夏の夜の海辺で思わず聞きたくなる柔らかさ。そこに乗る歌詞は、出ました桑田佳祐恒例の「クソ女々しい男」。酒飲んで酔ったフリして振られた女の名前呟いてる男、はっきり言って相当キツい。けど、その男に200%共感してしまう僕もまた女々しいのである。男の人が男らしいより、男の人がたまに見せる隙とか男らしくなさから僕は人間味を感じる。男とか女とか関係無い。悲しい時は悲しさに誰もが打ちひしがれていい。

 もう1億回は優に超える程話してる事だが、サザンオールスターズの楽曲で何よりも僕が思い入れの深い曲がこの「SEA SIDE WOMAN BLUES」である。その辺の話はもう十二分にしてるからその記事(本記事の最後に関連記事として載せておきます)を参照してもらうとして、この曲が改めてこうして世間で再評価されることが僕は何よりも嬉しい。サザンにはこういう隠れた名曲が沢山あって、そういう曲が今作には沢山収録されている。そういう曲を探すのもひとつこのアルバムの聴き所かもしれない。

彩~Aja~

 48thシングル。春の煌びやかさが込められたポップソング。離れ離れになった恋人や愛する人を時折思い出す瞬間が誰しもにあって、痴話喧嘩だろうが死別だろうが「別れ」はどんな関係にも訪れるものである。人間は「別れ」から絶対に逃れられない。そんな「別れ」と、その先の感情をこんなにもポップに明るく、しかしどこか愁いを帯びて描き切る桑田のポップセンスには脱帽してしまう。

HOTEL PACIFIC

 45thシングル。今回がアルバム初収録。

ギラギラと刺すような太陽の光のようなサウンドは、桑田佳祐のルーツの一つでもある歌謡曲的。音のひとつひとつがもうギラッギラの夏感満載。聞いてるだけで思わず汗ばむような1曲。ホーンセクションとエッジの効いたギターが印象的なテンポの速いサウンドと、ご当地感も織り交ぜつつ、それまでのサザンの夏曲にはなかったような“ギラギラ感”が織り込まれた意欲作。

この曲が作られたのは、サザンオールスターズ伝説のライブである2000年の「茅ヶ崎ライブ」直前である。「茅ヶ崎ライブ」で盛り上がれる曲、と制作されたこの曲は、当時TSUNAMIでキャリア史上でも人気がピークであり、凱旋公演という後に伝説となるライブをより盛り上げるための起爆剤として、そしてその後もライブの必殺チューンとして今でも機能している。

唐人物語 (ラシャメンのうた)

 13thアルバム「さくら」収録、毎アルバム恒例の原由子枠。以前も「さくら」をレビューした時に書いた話と重なるが、江戸時代に本当にあった実話(とされる)を元に制作された楽曲である。当時の(今よりも激しい)人間の差別意識と、それが原因で自死した『唐人お吉』がこの曲のテーマである。現在もこの国の至る所で「差別」は巻き起こっている。「お吉」は今でも生まれ続けてる。「海のYeah!!」以降、幾多ある原由子曲の中でもこの曲がこのアルバムに収録された理由はきっと、今この国に必要なテーマがこの曲に内包されているからではないだろうか。これ以上「お吉」のような悲しいストーリーを、「お吉」が苦しんだ差別という名の暴力を、この国で生み出してはならないという桑田佳祐からのメッセージではないだろうか。

SAUDADE~真冬の蜃気楼~

 ボサノヴァ調のダークネスなサウンドが印象的な1曲。こういうジャジーな雰囲気のある曲もサザンは作れてしまう。本当にサザンオールスターズってバンドはどんな音楽性でも自分のものにしてしまう力があるなと思わされる。

涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~ 

イントロのホーンセクションから夏感満載の、まさにサザンオールスターズ節な1曲。バンドが25周年を迎えて(15年も前なのかこの曲)改めてサザンオールスターズというバンドに求められているものを桑田佳祐なりに作り上げたといったところだろうか。

リリース当時のライブ以降、長らくライブでは封印状態にあったが、35周年のスタジアムツアーで解禁。そして今年の6月に開催されたNHKホールでのライブでも披露されるなど、近年改めて桑田自身の中で再評価されていることが伺える。

私の世紀末カルテ

アコギの弾き語りスタイルで歌われる、サザンオールスターズ史上最も暗い曲のひとつだろう。サラリーマンの悲哀をカルテの体でつらつらと歌うこの曲は、その後の「栄光の男」そして本作で初収録となった「闘う戦士たちへ愛を込めて」の源流とも言える。音数は少なく、シンプルな構成なのに、聞くたびに胃が重くなるような気持ちにさせられる。まさに「壮年期」の葛藤や惨めさ、虚しさがこの曲に詰め込まれている。世紀末はとっくに過ぎたわけだが、ぜひまたライブで披露してほしい。

OH!! SUMMER QUEEN~夏の女王様~

 08年にリリースされた「I AM YOUR SINGER」のカップリング。「デジタルサマーロック」とでも形容したらよいのか、「I AM YOUR SINGER」が打ち込みで制作されたこともあり、そのイズムをうっすらとこの曲にも感じてしまう。ピアノの軽快なサウンドが思わず癖になる。

当時ファンになりたてホヤホヤだった僕は、このシングルをそれこそすり切れるほど繰り返し聞いていたこともあり、今でもこの曲を聴くと10年前のあの夏を思い出してしまう。「Mステ」がまるごとサザン特集という、その前も後も見たことがないような特別さに溢れてた1時間を、活動休止前最後の日産スタジアムの日の翌日に朝の電車の中でオジサンが読んでいたスポーツ新聞の一面に大きく載っていたサザンの写真を、テレ朝で放送されたライブのダイジェストに映っていた泣きながらサザンを見つめていたお姉さんをテレビ越しに見つめたあの夏を、僕は思い出してしまう。

LONELY WOMAN

 サザンには珍しい冬歌である。前作「海のYeah!!」の基本理念は「海」であり、それまでも多少あった冬歌は一切収録せず、基本は夏を感じさせる歌が中心となった作品だったことに対し、今作は「夏うた」に拘らず、冬の歌も、社会風刺も、応援歌もキチンと盛り込まれていて、そういう意味ではサザンらしさはむしろ「海のOh,Yeah!!」に軍配が上がるだろう。「夏」「海」「ポップ」だけがサザンではない。その音楽性の幅広さ、振り幅にこそサザンオールスターズサザンオールスターズたる由縁がある。

01MESSENGER~電子狂の詩~

 そんな社会風刺曲の1つがこの「01MESSENGER ~電子狂の詩~」。電子音のようなイントロからバッキバキのハードギターサウンドに思わず脳天をブチ抜かれる。やはり「さくら」期はハードロックに傾倒していたこともあり、こういったサウンドに落ち着いたのだろう。

この曲が収録された「さくら」では〈Album Version〉と題し、この曲のテーマでもある「デジタル」な世界観をより音で表現するために電子音を追加し、デジタルロックサウンドに進化した。そして今回のベストアルバムでは元々のシングルバージョンが収録された。「海のOh,Yeah!!」収録のシングルバージョンはハードロック、「さくら」収録のアルバムバージョンはデジタルロック。同じ曲なのにアレンジひとつでこうも変化するのかと、楽曲制作における「アレンジ」というものの重要さに改めて気付かされる。今回のアルバムを気に入った方で、まだ「さくら」を聞いてない人はぜひそちらに収録されたアルバムバージョンもチェックすることをおススメしたい。

限りなき永遠の愛

 アルバム「キラーストリート」のDisc1の最後を飾る「愛」がテーマのラヴバラード。まるで夢の中にいるような歌詞とサウンドに、思わず否が応でも耳を傾けてしまう。中間に突然なだれ込むラップとドスの効いたギターはいい意味で期待を裏切る構成。ピアノを中心に構成されたバラードはサザンオールスターズの十八番だが、自らの十八番もファンへのいい意味での裏切りに変えてしまうサザンオールスターズのエンターテイナーとしての才能を改めて感じさせる1曲である。

素敵な夢を叶えましょう

 Daddy Sideを締めるのはアルバム「さくら」収録のこの1曲。前曲で期待を裏切りつつも、その期待にしっかりと応えるのもサザンらしい。サザンオールスターズサザンオールスターズに、そしてそのファンに捧ぐ歌

南十字に戯れる星に願いを

南十字とはサザンそのもの、戯れる星とはファンのこと。もうこのワンフレーズだけでこの曲満点。

耳を澄ませば 風のSaxophoneが泣いている

という歌詞の後に間奏でしっかり管楽器が、風のような旋律を靡かせているのもニクい演出。

Disc 2「Mommy Side」

 2枚目は「Mommy Side」である。こちらはまるで母性のように包み込む愛を感じる曲、誰かを応援する、鼓舞するような曲が中心に構成されている。かの心理学者カール・グスタフユングは人間を「少年期・青年期・壮年期・老年期」の4つに分類したとされる。「海のYeah!!」で青年期に終止符を打ったサザンオールスターズの「壮年期」は、この国に生きる誰かを励まし、鼓舞し、共に生き続けた日々であり、その日々を纏めたのがこの「Mommy Side」である。

どっかの音楽サイトが「サザンオールスターズの音楽は幾つかのタイプがある」「バラード・タイプ」「ロック・タイプ」「ワールドミュージックタイプ」...と分類していたが、僕は(少なくとも今回の収録曲に関して言えば)「応援歌」か「それ以外」に分類できると考える。「国民的ロックバンド」というあまりにも大きな看板を背負ったサザンオールスターズがこういった曲を創り出すことは最早必然だった。

東京VICTORY

10年代サザンを代表するアンセム。来たる東京五輪に似合う曲はこの曲以外無いのではと言いたくなる程、全ての人に捧げる応援歌である。短パンジョギングで「今何時!?」と下世話極まりない登場を果たしたサザンオールスターズが、もうン十周もした結果が

みんな 頑張って

という歌詞なのだろう。「頑張れ」という言葉は正直言ってあまり好きではないのだが、他でもない桑田佳祐をはじめとしたメンバーがいつまでも頑張り続けているからこそのこの言葉であり、だから僕はこの「頑張って」に痛いほど心を鼓舞されるのである。

この曲から「Mommy Side」がはじまることでこのDiscでは頑張る沢山の人を後押しするような曲が中心に据えられる。「海のYeah!!」と違い、時系列順ではないはずの本作だが、結果的にDisc 1は90~00年代まで(「さくら」から「キラーストリート」まで)の曲が、Disc 2には00年代から10年代まで(「キラーストリート」から「葡萄」まで)の曲という構造が結果的に出来上がっている。今回のアルバムはリリースの時系列順に曲を並べた訳ではないのにも関わらずこういった傾向が産まれるのには、桑田佳祐の作風、意識の変化の表れが強く影響している。

ロックンロール・スーパーマン ~Rock'n Roll Superman~

桑田佳祐、そしてメンバーが(恐らく)大好きな1曲。「キラーストリート」に収録され、そのツアー以降のすべてのライブで皆勤賞である。個人的にはあまりにも偏っていてどうなの?と思わなくもないのだが、それだけこの曲にパワーが込められていることの現れとも言えるだろう。

負けそうになったら おまじないはいつも

「I'm a Rock’n Roll Superman.」

この一節に励まされたファンがどれだけいるのだろうか。この曲を毎ライブでやっちゃう、ってところに現在のサザンオールスターズのモードが現れている。

豪快にギターが鳴り響くロックサウンドを基調にしつつも、ホーンセクションも豪華に鳴り響くサウンドは「サザン流・ロックポップ」という趣。ロックはギターとベースとドラムに拘らなくても作れるのである。

愛と欲望の日々

それ行けニッポンの皆様

What'cha gonna do's to dance!!

その後の「ロックンロール・スーパーマン ~Rock'n Roll Superman~」「東京VICTORY」ラインの萌芽というか、今に至る「サザンの応援モード」へのキッカケがここだったのかな、と。モー娘。の「LOVEマシーン」を彷彿とさせるような歌詞。

豪華絢爛なサウンドに日本語も英語もハチャメチャなのに、なぜかなるほどと納得させる歌詞は桑田佳祐の真骨頂。特に「葡萄」期は桑田自身「歌詞に拘る」をコンセプトに制作活動を行っていたこともあり、その時期の曲が多く収録されたDisc2は歌詞を読んでいても一種の読み物を読んでいるような気分になるのだが、この曲だけは「ああ、桑田佳祐の歌詞読んでんなぁ」って気分にさせられるのである。

DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~

僕がサザンオールスターズのファンになるキッカケのひとつになった曲。

まさに「壮年期」の葛藤を描く、このDiscにピッタリな1曲。「もう若くねぇなぁ」「所詮俺はきたねぇオッサンさ」という完全なる「諦め」と「オッサン舐めんな!!」という二つの相反するようで表裏一体な感情がこの曲に集約されている。この曲における「夏」は若さへのオマージュなのかな、と考えてみる。

キャッチーなダンスもサザンの持ち味。サザンオールスターズという一大エンターテイメントを語るうえで、ダンサーの存在は欠かせない。思えば「HOTEL PACIFIC」だって「愛と欲望の日々」だってダンサーは欠かせない存在だった。「TSUNAMI」以降の、サザンオールスターズというバンドの存在がこの国に欠かせないものになった瞬間、サザンが「国民的バンド」になって以来、そういう曲が増えた印象がある。桑田佳祐がサザンというバンドを「国民的」に名実共にするための試行錯誤やチャレンジがここから伺うことができる。

I AM YOUR SINGER

打ち込みサウンドが楽しい08年の1曲。しかしこの曲のリリース当時はまさしくサザンオールスターズ無期限活動休止の渦中。そんな中でこんな切なくなるような歌詞を歌われたら否が応でも泣けてしまう。楽しいキラキラした曲調なのに、なぜか泣けてしまう。しかし活動休止、それも無期限のってタイミングで「I AM YOUR SINGER」なんてタイトルで曲を作ってしまうのは、ある意味で物凄い覚悟だよなと思ったり。絶対に戻ってくるつもりが無ければこんな曲作れない。勿論結果としてサザンオールスターズは復活して、こうして今でもガンガンアルバムや新曲を作っているのだけど、少なくとも当時のファンや世間は「もう戻ってこないんじゃね?」的な雰囲気があった。邦ロック的に例えればエルレガーデンが戻ってきてほしい!ってファンは皆思ってる反面、どっかで諦めてたけど、結果的に彼らも今年復活した、みたいなものか。どちらにせよ、当時のサザンファンはフラットにこの曲を聴くことは出来なかった。そんな1曲。こうして改めてベストアルバムに収録されたことで、フラットにこの曲を楽しめるようになった人もきっと沢山いることだろう。

はっぴいえんど

「葡萄」期サザンオールスターズの名曲。やわらかい風に吹かれるようなゆったりとしたサウンドと、人生を旅に喩えたような歌詞に思わず涙してしまう。まだまだ24の若造である僕には、人生とはなんなのかとか、最終的な人生の着地点なんて到底想像できないし、そこに関してはデビュー当時の桑田佳祐だってきっと同じだっただろう。40年近くの時間の中で得た様々な経験と感情、とりわけサザンオールスターズというバンドを通して得たものがこの歌詞を生み出している。

北鎌倉の思い出<新曲>

今作初収録の新曲その1。つくづく原由子という人の声と「鎌倉」という場所の親和性は高いなと思わされる。例えば同じ原由子ボーカルのサザン楽曲でも、83年リリースの「そんなヒロシに騙されて」は横須賀が舞台の楽曲だし、00年リリースの「チャイナムーンとビーフン娘」は横浜・中華街が舞台だ。そちらの曲だって素敵な曲なんだけど、やっぱり原由子の声は鎌倉のあの清爽で趣のある独特な雰囲気を醸し出すのにはぴったりな歌声なのである。今回の「北鎌倉の思い出」もまた、そんな原由子のボーカリストとしての魅力が爆発した「鎌倉ソング」となっている。

100年前に消えた 君と出会った交差点

人影もなく寂しげな

鎌倉という場所は古から都として栄えた時代を経て今に至っている。今でも古都ならではの雰囲気を残しつつも、海沿いという立地や、京都や奈良のような「都」だけに拘らない姿勢が「鎌倉」という場所が唯一無二の他にはない情緒のある街になった理由である。そしてその情緒や趣に原由子の優しくて温かみのある歌声はぴったりなのだ。

サザンオールスターズ史上最高傑作の声も大きいアルバム「KAMAKURA」、そしてその収録曲「鎌倉物語」は原由子がボーカルを務める曲の中でもとりわけ人気の高い楽曲だが、「鎌倉物語」と「北鎌倉の思い出」をセットで聞くことでより鎌倉という街を疑似体験できるだろう。

FRIENDS

シングル「彩 ~Aja~」のカップリング及びアルバム「キラーストリート」収録の1曲。打ち込み中心のサウンドメイクから、最終的にバンドサウンドに帰結してしまう、8分25秒にも渡る長尺も含め、かなり実験的な1曲。こういう曲からもサザンの音楽性の幅広さや深さを感じてしまうものである。

歌詞は思わず「火垂るの墓」を連想してしまうようなストーリーから、人間が戦争という過ちを繰り返し続けることへの警鐘を鳴らしている。「人を傷つけたらいけません」。そんなこと人間誰しもわかっている筈なのに、どうしてこうも争いたいのかと悲しくなる。誰かと誰かの争いで、争いたくない人まで傷つき、亡くなってしまうのが戦争だ。思えばいつだってサザンは社会派な曲だって作ってきていたし、平和を祈ること、ラブアンドピースの精神が音楽という文化には広く根付いている。桑田佳祐の敬愛するジョン・レノンだって愛と平和を祈っていた。桑田はそのイズムを継承していると言っても良い。桑田佳祐反戦への願いを今度は次の若手が継承してほしいものである。

ピースとハイライト

そんな「桑田的・平和への祈り」の集大成がこの1曲。国同士の争いは今もなお絶えない。世界が円滑に動くために「国」という単位は存在しているが、大きな視点で見れば皆人類であり「互いの幸せを願う」ことが出来る世界の方が健全であり、幸福であるはずなのだ。それなのに人は皆、目先の即自的な利益や他人の権利を認めない自己満足を求め、その結果が争いや戦争につながっている。5年前の曲ながら、今もなおこの曲が日本や世界に訴えたテーマは有効である。

愛することを躊躇わないで

誰かを否定したり、傷つけるんじゃなくて、愛することに力を注ぎたい。

アロエ

「葡萄」期サザンらしい、聴く人全てを鼓舞するような1曲。こういうドキャッチーなディスコナンバーというのはサザンの十八番のひとつ(このバンド十八番多すぎでは)なんだけど、それまでの曲と違うのはやはり歌詞。

止まない雨はないさ

明けない夜はないさ

人間(ひと)は誰もが 弱く暗く寂しい

人間の弱さや脆さ、失敗を肯定しながらも、立ち上がって、前を向いて、勝負しようぜ!というあまりにもストレートな歌詞に、思わず身体が熱くなる。少なくとも40年前、30年前のサザンはこんな歌詞を書けなかった。「壮年」期を迎え、桑田なりのファンや聞き手へ還元したいという思いが「葡萄」期の誰かを鼓舞する応援歌やアンセムのような曲の増加に繋がったと考えられる。

神の島遥か国

沖縄民謡のような曲調と歌詞が楽しい51thシングル。ニューオーリンズサウンドのリズムが心地よい。「茅ヶ崎」「鎌倉」「湘南」のイメージが強いサザン及び桑田佳祐だが、沖縄ソングも実は沢山歌っていたりする。「ナチカサヌ恋歌」や「平和の琉歌」(ちなみにこの曲は前回のベスト「海のYeah!!」にて初めて正式にCD化された楽曲だった)はまさしく沖縄ソングなわけだが、この「神の島遥か国」は他の2曲と比べても最もキャッチーで、大衆がイメージする沖縄像をそのまま音にしたような曲。「泡盛」「三線」「オリオンビール」と、沖縄名物のオンパレードな歌詞は概念としての「沖縄」を真空パックしたよう。「ご当地ソング作家・桑田佳祐」の本領が発揮されたともいえる1曲。

栄光の男

「さくら」、もっと言えば「Young Love」のあたりから続く「俺ももうオッサンだからさ」ソングの集大成的作品。社会で働くサラリーマンの「業」のようなものが集約されたような1曲だ。「私の世紀末カルテ」をキャッチーにわかりやすくしたのがこの曲。こういうテーマの曲が増えたあたりにも桑田佳祐の心境の変化、もしくは彼の老いをどうしても感じてしまうのだが、老いてしまうこと、つまり時間の流れにはだれも逆らえないわけで、年齢と自分の思考や感情に合ったアウトプットができればそれでよいと僕は思っていて。そういう意味で桑田佳祐は理想的な年の取り方をしてるなと思う。この曲を僕が20年、30年後に聞いたらどんな感情になるのか興味があるし、また聞こえ方が全然違うんだろうなと思う。

BOHBO No.5

マンピーのG★SPOT」や「ボディ・スペシャルⅡ」などを彷彿とさせるお下劣ロックチューン。そんな中にも

闘魂(ファイト)だバキューム!!

とか

負けたら這い上がる

とか

人は誰もが輝く舞台(ステージ)に立っている

みたいな、このDisc 2の楽曲群に繋がってくるようなアンセム的歌詞が連発されているのが印象的。その後の「東京VICTORY」や「アロエ」の萌芽とも言えるかもしれない。やっぱりこの「海のOh,Yeah!!」に収録された「サザン壮年期」には明確なテーマがあったんだなと改めてこの曲を含め、ここまでの沢山の収録曲で感じることができる。

アルバム「葡萄」を締めくくった、平和を願うバラード。サザン史における反戦ソングの集大成ともいえる曲だろう。映画「永遠の0」主題歌であることからも、戦死した兵士を彷彿とさせる描写があったり、戦争が終わった「夏」(その夏は、普段のサザンが描いていた「夏」とは全く趣の異なったものである)を彷彿とさせる歌詞になっている。

夢溢る 世の中であれと 祈り

誰かが傷つき、傷つける世の中ではなく、夢や希望に溢れる世の中に僕たちがしていかなくてはならない。

闘う戦士たちへ愛を込めて<新曲>

 今作初収録の新曲その2。映画「空飛ぶタイヤ」主題歌。「栄光の男」をさらにエグく、重く、「私の世紀末カルテ」をより分かり易くキャッチーにしたような1曲。まさに「壮年期」サザンがテーマにしてきた楽曲の集大成といえるような、このアルバムに収録されることが相応しい楽曲といえるだろう。

特にこの曲に関しては #ベストソング2018上半期編の記事でも書いているのでそちらも参考にしてほしい。

 また、この曲のMVがサザン史の中でも1,2を争うほどの傑作だった。サラリーマンの悲哀、競争社会、蹴落とし蹴落とされの人生をこれほどまでにエグ味タップリに映像にしてしまうとは思ってもみなかった。MVはそのミュージシャンやバンドのファンでない人が楽曲に触れることのできるキッカケになれる場所である。そしてこれからの音楽業界は今まで以上にクオリティの高い作品が求められることになるだろう。そういう意味でも今回のような作品を今後もサザンには作り続けて欲しいモノである。

壮年JUMP<新曲>

今作初収録の新曲その3。「壮年期」を駆け抜けたサザンオールスターズがその節目に世の中に放った楽曲は、まさにサザンなシュワシュワポップスサウンド。これに「海」「夏」「夕陽」みたいな歌詞が乗ればデビュー当時の「青年期サザン」な趣なんだろうが、そこは40周年のサザン。芸能界を共に駆け抜けてきた「好敵手」で在り続けた「アイドル」に捧げるような、レクイエムとも後押しともとれるような歌詞が歌われる。

いろんな歌 ありがとう ステージで

君が踊る虹色のスポットライト

誰にだって夢トキメキの

アイドル アイドル(アイドル)

夢とロマンのスーパー・ヒーローは

未来のドア開けて去ってったう

近年の芸能界は大小問わずアイドルの解散・脱退・引退・そして逝去が目立ったように思う。最近なら安室奈美恵の引退、関ジャニ∞渋谷すばるの脱退、西城秀樹の逝去(僕は桑田佳祐は彼の死をきっかけにこの曲を作ったと思ってたが、rockin'on JAPAN 2018年9月号にてそれが否定されていて驚いた)、そしてSMAPの解散。勿論これは有名な方たちに限った話だけど、今年頭のアイドルネッサンスの解散は僕にとっては衝撃で悲しいニュースだったし、この曲を聴いて真っ先に思い浮かんだのは実は「アイドルネッサンス」の名前だったりする。もっと言えば「アイドル」だけに限った話ではなく、チャットモンチーAqua Timez黒猫チェルシーらバンド勢の解散も今年は目立った。それぞれの心の中に、それぞれのアイドルがいて、この曲はそれをどんな人でも当てはめることのできる作りになっているところがどうしようもなく泣けるし、サザンが国民的で在り続ける理由がここからもよくわかるし、サザンのファンじゃない人がこの曲を聴いてどうしようもなく泣いてしまう(安室奈美恵ファンの小学校の同級生がTwitterで「壮年JUMPは泣ける」と呟いていた)のが、なによりも楽曲として美しい。

芸能界(ショービジネス)の一寸先は

ジャングル ジャングル(ジャングル)

40年芸能界の第一線でバンド活動してきた彼らがそう言うのだから、本当に芸能界って明日が分からない商売なんだなと思わされるし、同時にその中で日々闘い続けるアイドルやミュージシャンはどんな人でも美しいなと思うのだ。SMAPはまさしく芸能界の黒い部分で解散を余儀なくされたグループだし、そうじゃなくても日の目を見なきゃ解散や引退を迫られ、有名になればなるほど日本が世界一危険な国になるのが彼ら芸能人という職で、芸能界という世界なのである。

以前の記事にも書いたが、40年前、デビュー当時のサザンは「明星」あたりに松田聖子や榊原郁恵などの当時を彩ったアイドル達と共に表紙を飾っていた。そして2018年のサザンはAKBや乃木坂なんかと音楽特番に出演して肩を並べている。デビューから一貫してサザンはアイドルと戦い続けてきた。同時に励まされていた部分も沢山あっただろう。それこそ西城秀樹は一度サザンのライブにゲストとして出演した経緯もあった。そんな彼らが「アイドル」に捧げる歌を歌うことがスゴク清いなと思わされるのだ。ジャンルに縛られるよりも、ジャンルの垣根を超える音楽が僕は美しいと思うし、この曲はまさしくジャンルの垣根を超える曲だ。

「壮年期」サザンの締めくくりに相応しい、より沢山の人が共感できる1曲。

[Bonus Track] 弥蜜塌菜のしらべ(※完全生産限定盤のみ収録)

サザン初期、それも多分デビューアルバムを彷彿とさせるような、いい意味で肩の力が抜けた、まるで大学の軽音楽部の片隅でできたような軽やかな1曲。ファンとしてはサザン名義でここまで軽やかな1曲が聞けるとは(どうしてもサザンとしての曲はカロリーの高いモノが多い)思わなかった。歌詞はもう1から10まで三ツ矢サイダーの宣伝なのだが、三ツ矢サイダーとサザンの関係性を知るファンとしてはこれもまた原点回帰な印象がして良いなぁと思ってしまう。この曲がDisc 2の最後に収録されるということは、「壮年」を締めくくったサザンの「老年期」の路線はこういう感じなのだろうか、などと妄想も捗るものだ。今後のサザンオールスターズの活動を大いに期待させながら、2枚にも及ぶ「海のOh,Yeah!!」の世界は幕を閉じるのだ。

まとめ

2枚の収録曲をじっくりと追ってきて、やはり前期サザンと後期サザンには明確な違いがあることに改めて気付かされた。それも、作り手である桑田佳祐の意識の明確な変化、年齢を重ねることを自然に受け入れ、年齢を音楽に昇華している桑田佳祐の音楽家としての真っ当さを強く感じさせるアルバムだ。どの曲もサザンらしさに溢れている名曲やヒット曲の連打は勿論このアルバムの魅力だが、それ以上にこの20年で桑田佳祐が目指したものを改めて証明するアルバムがこの「海のOh,Yeah!!」なのだ。「国民的バンド」という評価に立ち向かい、世間からの評価と(休みながらも)戦い続けたサザンオールスターズがもっともっと好きになった。

このアルバムがこれから先の20年も聞かれ続けると思うとワクワクする。本作がこの国にとって欠かせないアルバムになることを祈って。

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