この世界で一度でも失恋を経験した全ての人にポルノグラフィティ「ライン」を聞いてほしい

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先月、ポルノグラフィティが全曲サブスクリプション配信を解禁した。

サブスクリプションに後ろ向きな姿勢だったアミューズだったけど、これをきっかけにサザンやPerfume福山雅治あたりがサブスクリプション解禁を徐々にしていくと思うと胸が熱くなるし、その最初の風穴をぶち抜く役目がサブスクの利用層である若年層から中年層まで幅広いポルノなのは良い人選だと思うし、時代の流れに彼らが乗っかって本当に良かったと思う。

サブスクリプション解禁が発表されて、巷では改めてポルノを聞こう!というムーブメントのような何かが起こっている気がする。

www.kansou-blog.jp

音楽ファンならネットで一度は目にしたことであろう音楽ジャンルを得意とする書き手のふたりが共に「初心者向けポルノグラフィティガイドライン」的な記事を書かれていた。「ポルノ知らないけどこれをきっかけに聞きたい」って人はこの2つの記事を読んでもらえれば良いなと思う。

僕はもう少し極端な、だけどポルノグラフィティを深く知らない人にも聞いてほしいある1曲について、この機会に記事にしてみる。

その曲は「ライン」。

ライン

ライン

  • provided courtesy of iTunes

通話アプリじゃねぇぞ。

2006年リリースの「m-CABI」に収録された1曲。リリース当時は小学生だった僕はそれから2年後、とあるキッカケで強烈にこの曲を聴いて打ちのめされて以来、この曲は節目節目に聞いてしまうし、ポルノグラフィティの中でも1番好きと言えるような曲。

この曲に関しては、以前も別の記事でチョロっとだけ書いているものの、それを引用・改変しつつ、改めて1曲として記事に纏めてみる。

fujimon-sas.hatenadiary.jp

 「ライン」の歌詞で描かれるのはそれはもう痛い程失恋をした「僕」の内面世界である。

どうせ叶わない恋ならなおさら

上手な愛し方  他にあるのに

もう歌の出だしから「僕」はこの恋を諦めている。「どうせ叶わない恋」だと認めてしまっているのだ。そしてこの曲のテーマは「失恋」だということがこのフレーズによって明確に提示される。

窓に置いた 本がはらり

風に貢(ページ)めくられ

月にあらわ晒されてる

救いのない最後の場面

 恋の終わりがここで「本」という隠喩を通して描かれる。「最後の場面」ではなく「"救いのない" 最後の場面」であることが、「僕」とその相手である「君」の関係性やお互いの立場、そしてこの恋路の行き着いた結末を表している。

いつでも優しい君に会いたい

気の合う友達 君が言うならそれで

無邪気に惹かれ騒ぐ僕の

心を憎めばいいんだろう?

 きっと「君」は別に「僕」のことを嫌っているわけではなく、むしろ好いている。ただし、その「好き」はあくまでも「気の合う友達」止まりなのである。死ぬほど嫌われるでも、ましてや心からの愛を享受するでもなく、ただただ「友達」としか見られていない。一番恋愛において辛い、でも多くの人が経験するであろう恋愛の形だ。相手に気があるからとか、相手が自分を好いているから自分も相手を好きになるわけじゃなくて、でもそれがたまらなく恋をつらいものにしている。

好きになりたくなかった 

 「好きにならなければよかった」ではなく「好きになりたくなかった」。「好きの度合」が高ければ高いほど起こりえる「無意識に惹かれる」心。だからこその「好きになりたくなかった」というフレーズ。この少しの違いがよりこの曲の主人公である「僕」の恋愛に対する向き合い方をより鮮明に写し出す。

暗い部屋の隅 ぼんやり光る

液晶に浮かぶ 君のアドレス

夜更け過ぎに話すほどの特別な話題など

昨日までも今日からも僕には思いつけないで

きっと「君」からのメールは別れ話で、この曲の主人公はもうそれを悟っている。でも「今日からも僕には思いつけない」振りをしているのだろう。

泣きたくなれば君を想う

君を想ったらまた泣けてしまうから

この「僕」にとって「君」は別れても好きな人で、「君」のことを想えば想う程切なく、苦しくなる。

切ない記憶ひとつひとつ

白くて冷たい吐息に消して

なにも最初からなかった

何も最初からなかった”こと‟ にしてしまえば、 切なさも消えてく。そう思って自分の中から「君」の記憶を消そうとすればするど、きっと「僕」の中で気持ちは募るばかりだろう。

誰もが君の笑顔見つめ

僕だけうつむき君のスニーカー見つめる

それでも傍にいられるなら微妙な距離さえ愛おしくて

きっとこの2人はそもそも釣り合いがとれてる関係じゃなくて、気持ちの強弱も、周りからの評価、端的に言えば「人気者かそうでないか」みたいな部分もきっと差があって、それでも「君」は「僕」と一緒に居てくれて、「僕」はそんな所に惹かれているんだけど、やっぱりどうしたってその差に気付いてしまう瞬間とかそれが距離として如実に出てきてしまう瞬間があって、それでもイイからと「君」を想ってたんだろうな、とこの歌詞から「僕」の直接的には描かれていない深い部分の気持ちを汲み取ってしまう。

いつでも優しい君に会いたい

気の合う友達 君が言うならそれで

無邪気に惹かれ騒ぐ僕の

心を憎めばいいんだろう?

好きになりたくなかった

友達の頃はきっと優しい「君」だったけど、関係が深まれば深まるほどにそういう訳にはいかなくなって、「無邪気に惹かれ騒ぐ」「好きになってしまった」自分が憎くなる。本当は人を好きになることなんて全く悪いことじゃないはずなのに、関係を壊したくない「僕」の心がそれを邪魔している。

ちょっと過剰なくらい歌詞の世界を解読してみた。改めてこの歌詞の徹底した失恋っぷりに僕自身舌を巻いた。誰かを「好きになる」というのは自分の意思で出来ることじゃなくて「気付いたら」好きになっていることのほうが多い。「友達」である「君」を好きになってしまって、でも「僕」の中にある感情には「君」との大きな隔たりがあって。僕たちは当然のように「好きになりたくなかった」と無意識のうちに心のどこかで感じでしまう。「好き」を伝える曲も、「振られて悲しい」を嘆く曲も沢山あるけれど「好きになりたくなかった」と、本当の意味でありのままに書いてしまう曲って多分そんなに無くて。「好きになりたくなかった」と「好きにならなければよかった」はまた少しニュアンスが違う。僕がこの曲が途方も無く好きで、泣くほど共感してしまうのは「好きになりたくなかった」をここまでストレートに、かつ“そもそも歌にしてくれた”ことが理由だ。これからも、泣きたくなればこの曲を聴くだろう。

中学生の時に意中の女子にフラれた僕は、この曲(と、もう2曲)を聞いて自分でも驚く程に打ちのめされ、泣いてしまった。

fujimon-sas.hatenadiary.jp

その辺りの話はこの記事に書いてるので是非読んでいただければと。程度の差はあれど、きっと誰しもフラれた時にこの曲を聞けば思わず涙してしまうのがこの「ライン」という曲だと勝手に思っている。フラれた時の処方箋として、僕は自身と歌詞の中の「僕」を重ね合わせることで、悲しみを涙として洗い流せるこの曲をオススメします。

m-CABI (通常盤)

m-CABI (通常盤)

 
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