あいみょんの持つ大衆性とサブカル性の話。

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2018年ももう残り2か月と半月。そろそろ今年の総まとめに入りだす時期だろうか。

今年最もブレイクしたミュージシャンは誰だろう、と考えると真っ先に浮かぶのがあいみょんだろう。彼女の今年の躍進っぷりは、去年のSuchmosとか、一昨年の欅坂とか、それに似た勢いを感じさせる。

彼女の作る楽曲は若手の中でも抜きんでたポップさと、その逆を行くような彼女ならではのサブカルな要素の2つの面を持っている。今回は何曲か彼女の楽曲をピックアップしつつ、その2面に迫りたいと思う。

今年の夏を彩ったマリーゴールド。とある二人の夏の恋路を色鮮やかに描いたポップチューン。気だるげさとか儚さを内包したあいみょんのハスキーな歌声は、夏のうだるような暑さと、いつだったかの自分の恋愛を思い出してしまうようなノスタルジーに塗れている。まさしく王道ポップスなこの曲のリリースによって、今年さらに彼女はひとつ上のステージに登ったのではないだろうか。

彼女のブレイクのキッカケのひとつになった「君はロックを聴かない」。音楽好きなら一度は経験したのではないかと思う「僕の音楽の趣味は、あなたの趣味とは違うけど、僕の好きな歌を知ってほしい」なんて恋愛模様。きっとすっごくあるあるで、だからこそこの曲は幾多の音楽リスナーの心に突き刺さった。90年代のJ-POPを彷彿させるようなアレンジも含め、まさしく彼女の「ポップセンス」の面が光ったナンバーだろう。「マリーゴールド」「君はロックを聴かない」、いずれもあいみょんのポップシンガーたる所以が存分に発揮された曲であり、彼女のブレイクはこういう曲によって起こるべくして起こったと考える。 じゃあ、それがあいみょんの全てなのか?と言えば、それは違う。

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メンヘラもびっくりの歌詞である。サブカルも通り越えてアングラに近いような、思わずゾッとしてしまいつつも痛快な歌詞。「マリーゴールド」「君はロックを聴かない」とは大きくかけ離れた歌詞のようで、メロディはどこまでもキャッチーだったりする。

「自殺」という重たいテーマを背負った「生きていたんだよな」。曲の多くの部分を語りが占める構成は普遍性とは言い難いし、キャッチーさとはかけ離れている、寧ろサブカル寄りな楽曲だ。でもそれはこの曲のテーマを真っすぐ表現するのにはバッチリな構成だ。彼女が感じたヒリヒリとしたありのままを、嘘偽りなく表現することが出来ている。
そして「愛を伝えたいだとか」。打ち込み中心のサウンドで作られたそこはかとない気だるさが印象的なこの曲は、決してキャッチーさや大衆ウケするようなナンバーではないし、歌詞も全体が比喩で纏められているために、一見すると分かりにくさを感じる。でもその歌詞は恋心を忠実に描いていて。恋心は他のどんなテーマよりも「共感」を得る。「分かりにくい!けどなんだか共感してしまう」がこの曲には詰まっている。「共感」されるという意味でこの曲は「キャッチー」だ。そんなキャッチーさとサブカル性のバランス感覚こそ、彼女の持ち味なのだ。
僕が思うあいみょんの魅力は「大衆性」サブカル性」の両方を兼ね備えているところだ。

ポップス性、或いは大衆性とも言い換えることができるが、彼女の持ち味はそこだ。だがそれ以上にサブカルっぽさも彼女の持ち味なのも否定のしようがない事実だろう。その2つの要素のバランス感こそがあいみょんというシンガーの本当の意味での魅力だ。これが今後どう転んでも面白いと思ってしまうし、どう転んでも名曲が生まれる予感しかしない。今後も彼女が生み出す楽曲を楽しみにしている。

マリーゴールド

マリーゴールド