King Gnuの勝ち。Mステの負け。
カルチャーに明確な勝ち負けは存在しない。それが僕の考えるカルチャー最大の魅力である。
その上で、本日2019年2月22日に放送となったMUSIC STATIONに出演したKing Gnuは、僕の感覚では圧倒的に「勝ち」だった。
2018年、じわじわと頭角を現し、ネクストブレイク間違いなしと各メディアの話題を攫うと共に、今年に入りアルバム「Sympa」をリリース。音楽フリーク達が絶賛する中、アルバムレコ発ツアーは即完。そして今日のMステ出演。19年を既に駆け抜けまくっているKing Gnuのこのタイミングの出演はやはり圧巻のパフォーマンスだった。
Mステ恒例の階段下りからその個性をいかんなく発揮するKing Gnu。NHKの教育番組風の、でも良く見ると少しおどろおどろしさがあるパペットのアップから曲が始まる。拡声器を手にしたVo.常田の顔を直接カメラでは抜かず、傍に置いたディスプレイに表示されるという演出は既に不穏な雰囲気を漂わせる。歪んだ拡声器の歌声は、この曲に潜む激しさを匂わす。サビに入れば三白眼を通り越して白目を剥きながらキーボードを叩き、舌を出しながら歌う井口の衝撃的な演奏に目を引かれる。
2番に入れば、その混沌は一層強烈なものになる。井口の周りでパペット達は歌いだすし、着ぐるみも踊りだす。相変わらず井口が白目を剥いているし、常田の拡声器は心なしか一層歪みだす。
その混沌の中で紡がれる歌詞に思わずハッとする。嫌な部分から目を瞑ったTVを含めたメディア、そして僕たち、この国の民たちをシニカルに皮肉り、目を覚ませ、目を凝らせと叫ぶ。彼らを含めたロックンローラーですら、真実は教えてくれない。己自身で目を凝らし、真実を見極めろとMステの舞台を駆けまわりながら彼らは警鐘を鳴らしていた。
「Slumberland」のMVの世界観をベースに、ゴールデンタイムのあの時間帯にああいうパフォーマンスをしたKing Gnuは圧倒的にカッコよかったし、小綺麗な演出ばかりの音楽番組に強烈な一撃、大きすぎる風穴を開けたのではないだろうか。最高の「勝っている」パフォーマンスだった。
カルチャーに明確な勝ち負けは存在しない。それが僕の考えるカルチャー最大の魅力である。
その上で、King Gnuは勝ったなと思うし、彼らをこのタイミングでブッキングし、あの世界観・演出をセットやカメラワークで支えたMUSIC STATIONも勝ちかもしれない。最近のMステは正直に言ってしまえば、あまり積極的に見たい番組とは思えないのだけど、良質な音楽をミュージシャンに寄り添ってこれからもお茶の間に流し続けてほしい。