Base Ball Bear、17才。~17才から17年やってますツアー、振替公演を名古屋DIAMOND HALLで見た~

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17年。生まれたての赤ん坊が青春真っ盛りの青年になる程の時間。そんな長い長い時間をBase Ball Bearのメンバー3人はロックバンドとして過ごしてきた。

彼らが今年の2月から開催していたツアー「17歳から17年やってますツアー」は四国・高松でファイナルを迎えた。そしてその翌週、4月19日、本来であれば3月に開催予定だった名古屋の振替公演が名古屋DIAMOND HALLにて開催された。本記事ではそんな名古屋振替公演をレポートする。

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 本来であればツアーの中盤戦に配置されていた名古屋公演だが、結果としてツアーの最終地となった。一種の「おあずけ」を喰らっていた名古屋のファンは、開演を告げる出囃子の段階でかなりヒートアップ。Base Ball Bearのライブの始まりを告げる定番曲、XTC「Making Plans for Nigel」に合わせて起こるのは大音量のハンドクラップ。Base Ball Bearの音を待ちくたびれたファンが今や遅しと彼らの1音目を待っている。

4カウント、そして突き抜けるような蒼々としたギターのストロークから始まるのは「17才」

 

Base Ball Bearにとってかけがえのない数字となった「17」。だからこそ、今回のツアーはこの「結成17周年」という他のバンドであれば節目になりえないタイミングで開催された訳で、そのライブの始まりがこの曲であることは必然だったと言えるだろう。そしてこの曲の披露によって本ツアーが「17周年」を祝うだけでなく、彼らの2ndアルバムであり、Base Ball Bearが青春を歌うバンドだという世間的なイメージを決定づけた「十七才」を改めて今ライブを通して表現するツアーであることが示唆される。

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一転して怪しくうねるベースラインから始まるのは「試される」

最新EP「ポラリス」収録の、作曲にベースの関根史織がクレジットされた初めての曲。うねりのようなベース音とキャッチーなギターリフ、サスペンス調の詞がライブハウス全体を一層高揚させる。本ツアーが「十七才」の一種の再現ライブでありながら、最新EP「ポラリス」のリリースツアーでもあるのだ。

2曲終わってMC。名古屋のBase Ball Bearのライブは異常な程盛り上がり、その度にボーカルの小出はその異様さに思わず笑ったり、頭がおかしいとジェスチャーしてみたりする。この公演が振替公演となってしまった経緯もあり、小出の口から詫びの言葉が出るのだろう、と僕自身予測していたのだが、いつも以上の途轍もない盛り上がりに思わず小出が「本当は謝ろうと思ってたけど、これを見るともう謝らなくて良い気がする」と冗談めかして話すと会場から特大の歓声が響く。

1回目のMCが終わると始まったのは「ヘヴンズドアー・ガールズ」

青春時代特有の「生や死」への願望、或いは逆に拒否感という不安定な心情を小説のワンフレーズのような情感のある詞で表現する世界観に、オーディエンスは否応なく引き飲まれる。

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原曲より一層ソリッドに、でもポップさはそのままな「抱きしめたい」を経て、本日2回目の新曲「Flame」へ。こちらも新曲にも関わらず、原曲とは少し違ったアレンジというか、ギターを一層歪ませた重厚感のある曲調に既に生まれ変わっていたのが印象深い。

「Flame」が終わると、小出がおもむろに牧歌的な行進曲のようなリズムをギターで弾きだす。その間に関根はベースを下ろし、"あの楽器"へと持ち替える。チャップマンスティック関根史織が愛して止まないこの楽器は、今や彼女の、そしてBase Ball Bearにとって欠かせない存在となった。スティック独特の浮遊感のある音から始まったのは「Transfer Girl」

夏の終わり、夜の学校のプール。そんな蒼々と、キラキラした空気がダイアモンドホールを包み込む。

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MC。ここまで十数公演を演じてきたメンバーだが、各所ここのMCでは「17」をテーマに離してきたそう。中盤はネタが尽き、「17」を倍にした「34」をテーマに話したりしていたそう。今回はツアーもラストということで振り返りをすることに。「何か印象に残ったことは?」と小出がメンバーに話を振ると堀之内が「印象に残ったのは完全にここ」と話す。確かに元々名古屋公演が予定されていた3月10日の公演が中止、振替となった事はBase Ball Bearとしては一大事だった。「2曲目の『試される』が歌えなかった」とここぞとばかりに秘話を話す小出も楽しそう。当時こそ大変だったし、バンド史上でもベストクラスの大きな壁だったはずだが、それすらも笑い話に出来るくらい、今のBase Ball Bearは強い。

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話題はツアー中にあった人間ドックの話へ。関根の肺年齢が18歳(!)だったことを彼女が自慢げに話す一方で、堀之内の検査結果(主に肝臓)が芳しくなかったことに少し凹んでいる様子。次に名古屋に来る時はスリムに健康になることを誓っていた。

次曲について話す小出。「十七才」というアルバムは、青春や思春期特有の感情を描いたアルバムである一方で、少し背伸びした、大人びた曲も多い。あの作品をリリースしてから時間も経験も重ねてきて、今だからこそ上手く鳴らせる歌える曲をやります。小出がそんなことを言って始まったのは「FUTATSU NO SEKAI」

大人の情事、秘密の恋路、してはならないはずの恋の行方をを歌ったこの曲は、原曲よりも歪んだサウンドで鳴らされ、一層アダルティなムードがホール一体に醸し出される。

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一転して視界が明るく、そして広がるようなギターリフが鳴り響いたのは「初恋」 

学生のする初めての恋ではなく、酸いも甘いも全て知り尽くした大人だからこそ出来る「終わらない最初の恋」。「FUTATSU NO SEKAI」、そして「初恋」と、ここは「十七才」から17年を経たBase Ball Bearならではの大人な曲ゾーン、といった感慨だ。

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「初恋」が終わると堀之内の2カウント。ベースとドラムが絡み合うイントロが印象的な「PARK」だ。

 小出の放つ鋭い視点のリリックが矢継ぎ早にダイアモンドホールに木霊する。ギターのサウンドを限界まで削り、リズム隊の音が中心に進む構成はBase Ball Bearというバンドが誰かのワンマンバンドではなく、3人が等しく努力し、音楽を愛してる事の表れと言えるのではないだろうか。

MC。今回のツアー中にバンドのマネージャーが変わった事を報告する小出。彼らのマネージャーはファンの間でもよく知られていたこともあり、フロアのオーディエンスも驚きを隠せない。「マネージャーを含めたチームでBase Ball Bearだと思っていたが、結局本当に最後までBase Ball Bearなのはこの3人だけなんだ、3人で頑張らなくてはならないんだなと思った」と話す小出と、それを見守る関根と堀之内の表情は決意に満ちていた。

いつだって人は決断や決意を迫られながら日々を過ごさなければならない。Base Ball Bearが17年間そうしてきたように、僕が彼らの曲やライブをキッカケにそうしてきたように。そんな決意や決断の積み重ねが青春なのだろう。そんなことを彼らを見ながら思ったりしてしまった。

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「そんな決意表明の曲を」と始まったのはポラリス

3人でこれからもバンドを続けていくこと、曲を作る事、そしてその曲で誰かのハートを掴み続けることを歌詞だけでなくその構造も込みで宣言しまうこの歌に、きっと会場にいた、そしてこのツアーに参加したすべての人がハートを掴まれたことだろう。

ライブは終盤戦。「ポラリス」に続いて演奏されたのは「星がほしい」

ポラリス」のテーマである「星」繋がりの選曲だろうか、思わぬレア曲に会場のボルテージも高まる。

そしてライブはクライマックス。畳みかけるように「青い春.虚無」そして「LOVE MATHEMATICS」とライブ鉄板の盛り上がり曲を連発するBase Ball Bear

そして、数年前までは極々限られた場所でしか演奏されていなかったのに、今やライブのド鉄板曲として定着した「The Cut」でライブの盛り上がりは最高潮に。

バンド音楽という枠組みを押し広げ続ける彼らにとって、この曲をRHYMETER無しで演じれるようになったことで得たものや出来たものはきっと沢山あって、改めてライブで成長するバンドなのだと思わされる。

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「The Cut」が終わると、美しいアルペジオダイアモンドホールを包む。「バンド音楽が」という小出の口上と、アルペジオを引き継いでサビから始まった「ドラマチック」

 バンド音楽を愛し、憎み、それでも愛し続けているからこその「バンド音楽がドラマチック」というフレーズに、Base Ball Bearの神髄を見た気がした。

アンコール。まずは発表。2nd EPのリリース、そして日比谷野音を皮切りに秋から冬にかけて全20公演の全国ツアーの開催。昨年春の「Tour LIVE IN LIVE」、秋の「Tour LIVE IN LIVE ~I HUB YOU~」、そして今回と、ここ数回は必ず次の活動に関する発表を名古屋の地でやってくれるBase Ball Bear。無論、今回は振替ということもあり、本来ならば恐らく名古屋で発表する予定はなかったのだろうが、やはり愛知に住む僕としてはこの地で発表してくれるのは素直に嬉しい。

関根に意気込みを振ったところから、彼女の天然が炸裂したエピソードを挟み演奏されたのは、関根がボーカルを務めるWINK SNIPER

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この曲もまた、「十七歳」に収録された曲のひとつだ。「十七歳」当時と異なり、関根は人妻になったし当時のロングヘアーはショートヘアーになったけど、ベースを楽しそうに弾き歌う彼女の姿は当時よりも一層キュートだ。お立ち台に立ち、曲をジャンプで締めると思ったら飛ばないお茶目なところも含めて可愛らしい。

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オーディエンスによる「愛はおしゃれじゃない」の合唱で始まったWアンコール。堀之内の「愛してるぜ名古屋」の叫びと共に始まった「夕方ジェネレーション」

17才。それは切なげなメロディが似合う世代。今のBase Ball Bearにも「夕方ジェネレーション」の切なげなメロディが似合う。そんなことを感じた5分間だった。堀之内にもう一度ちゃんと曲を締めろとお立ち台に立たされた関根だったが、またも飛ばない関根。

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これじゃライブが締まらない、とばかりにすぐさま始まったトリプルアンコールは「祭りのあと」

最後の最後に今日一番の盛り上がりを見せ、最後には関根だけでなく小出もお立ち台に立ち、全員の大ジャンプでバッチリと締めると、この日のライブは幕を閉じた。

17年。青春真っ盛りの青年がオッサンになる程の時間。そんな長い長い時間をBase Ball Bearのメンバー3人はロックバンドとして過ごしてきた。詰襟を着て、文化祭の舞台でバンドを結成した彼らは、オッサンや人妻になった今もバンドを続け、キャリアの中でも今が1番楽しそうにライブを演じている。17年間で酸いも甘いも山も谷も超えてきたBase Ball Bearは、バンドそのものが17才になり、今が青春真っ只中。次の時代も、彼らのドラマチックで永遠に続きそうなバンドストーリーは、止められそうにない。

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ポラリス

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十七歳

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