【ライブレビュー】クリープハイプ「熱闘世界観」を見て思ったこと【ネタバレ含】
クリープハイプは温かみと憎しみで生き続けているバンドである。
前作「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」はクリープハイプの「温かみ」を存分に発揮した作風だった。故に、フェスなどで彼らを支持しているようなファン層=「激しいクリープハイプを求めているファン層」にはイマイチ届かなかったのではないかと思う。
そして今作「世界観」は「温かみ」「憎しみ」の二つが共存する「クリープハイプの根幹」を改めて再定義し、またアップデートした作品であることを現在も開催中のツアー「熱闘世界観」を以って体感することができた。
具体的なセットリストは伏せるが、「HE IS MINE」「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「社会の窓」「寝癖」などの既存の楽曲は勿論今まで通りの切れ味、今まで通りの温かみを宿している。そこに今作「世界観」の収録曲が入ってくるとより洗練された温かみや憎しみ・激しさを感じることができる。具体的に挙げるとするならば「僕は君の答えになりたいな」「5%」のような暖かい曲たち、そして「テレビサイズ」「けだものだもの」のような激しさを纏った曲たちに明らかな成長を如実に感じることが出来た。
勿論これは「祐介」という小説を執筆した尾崎世界観そのものの成長であると同時に、バンドそのものの態勢の変化の賜物でもあるだろう。今までの彼らはあくまでもバンドのギター2本、ベース、ドラムという形を守ってきた。しかし今回のツアーでは尾崎がギターを置きハンドマイクで歌ったり、カオナシがベースを置きキーボードを演奏したりと多種多様な形態で演奏をしていた。曲に合わせて色々な形態で演奏が出来るということは曲の制作の幅もより広がるだろう。そういったバンドそのものの成長を感じてから聞く「バンド」は途轍もなく心に響く。究極の自分語りをしたこの曲はまさに楽曲版「祐介」そのものだ。
誰かに頭を下げてまで 自分の価値を上げるなよ
「バンド」クリープハイプ
言葉は悪いが温かみと憎しみを交互にブチ当ててくる彼らの音楽性にはまるでDV男みたいな感覚がある。泣きたくなるくらい辛くなるような歌も、抱きしめられてるみたいなあたたかい歌も。全部全部彼らの愛の歪さの証左だ。今回のアルバム、そしてライブはその歪な愛がこれからももっと成長し続けるであろう予感に溢れていた。次のアルバムが楽しみで仕方がない。僕たちファンを「あのオレンジの先へ」いつまでも連れて行ってほしい。