【速報】Base Ball Bear小出祐介の新プロジェクト!マテリアルクラブ「00文法」を聞いた!!
それは、何の前触れもなく、突然のことだった。
2018年9月4日放送分TBSラジオ「アフターシックスジャンクション」へのBase Ball Bear小出祐介の電話での出演が放送直前になって告知(それも番組側が行う告知のみ)されて、番組内で音源が初解禁されたと思ったら、その数時間後の9月5日0時には各配信サイトで配信がスタート、その12時間後に改めてこのプロジェクトの開始が各ニュースサイトを発表されたものの、未だにそのプロジェクトの全容は見えてこない。
現段階でこのプロジェクトに僕たちが能動的に動けることがあるとするならば、配信開始された音源「00文法」を聞くことである。
というわけで、マテリアルクラブ「00文法」さっそくDLしました。今回はこの「00文法」を解き明かしていこうと思います。
小出、DTM使うってよ
Base Ball Bearの音楽性のひとつに「打ち込みを使わない」という決まりがあった。16年の湯浅将平脱退以降もシンセや管楽器を使った楽曲はリリースされていたものの、打ち込みだけは使わなかった。
また、ソロ活動といっても彼の場合はソロでラジオに出てほん呪かBoys Be...の話をするか、じゃなかったらプロデュースや作詞作曲などの裏方をするだけで、バンド外部で歌を歌ったりということはあまり無かったように思う。
一方で、小出が作詞作曲したアイドルネッサンス「交感ノート」や岡村靖幸w小出祐介名義でリリースされた「愛はおしゃれじゃない」など、彼が作り手として携わったプロジェクトの中には打ち込みのエッセンスが織り込まれた楽曲も多く存在した。だが、彼が主導で行うようなプロジェクトでは(そもそもそういう機会も多かったわけではないが)DTMは活用されていなかった。
今年の6月、チャットモンチーがリリースしたアナログ盤「たったさっきから3000年までの話」のカップリングに収録された「恋の煙(同期ver.)」でチャットモンチーと久々の、そして音源制作としては最後になるであろうコラボが行われた。本来であればバンドサウンドが特徴的な「恋の煙」が宇宙空間を彷徨っているかのような近未来感溢れる打ち込みサウンドに変貌を遂げていたのである。チャットモンチーの当時のモードであった「打ち込み」を小出祐介も織り交ざることで新鮮な楽曲に仕上がっていた。打ち込みサウンド、それもここまで打ち込みに振り切った楽曲に小出祐介の声が乗っかる。それだけで斬新に感じてしまう曲だった。
そして、今回の「00文法」はDTMで作られた楽曲だと発表された。また、制作パートナーにチャットモンチー改めチャットモンチー済のあっここと福岡晃子を迎えている。このあたりからも「恋の煙(同期ver,)」から「00文法」に繋がっていることが分かると思うし、これが小出祐介史実の中でも異質なプロジェクトであることは想像に容易いだろう。
ただし、「00文法」は「恋の煙(同期ver)」のような宇宙空間を飛び回るようなキラキラ打ち込みではない。決してダークな作風ではなく、むしろポップにいくらでも昇華しそうな雰囲気がずっとあるのに、良い意味でそのまま終わってしまうようなサウンドというか。今までどこかで聞いたことがあるようで、全然無いようなサウンドだ。途中2:05あたりで差し込まれるギターの音は岡村靖幸の「家庭教師」のイントロのオマージュだろうか。
小出、ラップするってよ
「元々ラッパーになりたかったけど声質が向いていないから諦めた」という旨の発言も過去にしていたり、RHYMESTERとのコラボにはしゃぎまくってたり、そもそもBase Ball Bearの楽曲も「これもはやラップ並みじゃん」ってくらい言葉が詰め込まれた楽曲(新呼吸の2番とかこの傾向が顕著)もあったりして、元々ラップ・ヒップホップは彼の音楽性に影響を与えまくっているジャンルのひとつだった。
2016年に開催された「Base Ball Bear Tour バンドBのすべて 2016-2017」では前述したRHYMESTERとのコラボ曲「The Cut」を小出ひとりで歌い切ったことがファンの間でも話題になった。
そして、今年の春から開催された「Base Ball Bear Tour LIVE IN LIVE」でも「ひとりThe Cut」は披露された。小出自身、このあたりからもヒップホップというジャンルに再燃していたのかもしれない。
そして今回の「00文法」でついに小出自身がラップをするオリジナル楽曲が誕生した。無論、これまでだってそういうニュアンスを感じる曲はあったけど、ここまで明確に「ラップをする」曲は無かった。このあたりに今までの活動がちゃんと今に繋がっていることを感じさせる。
小出は本来バンドのボーカリストであり、ラッパーではない。なのに「00文法」ではちゃんとラップがラップになっているのである。幼少期に目指していたり、今年になってから何度も「The Cut」を演奏していたのも理由だろうか。息を吐きだすような気だるげなフロウはDAOKOを彷彿とさせる。後ろでコーラスしているのはあっこなのだろうか。
小出、歌詞もキレッキレだってよ
やはり小出祐介の持ち味と言えば歌詞である。だが、未だに「00文法」の歌詞は公式に公開されていない。そこで今回は僕なりに歌詞を聞き取ってみた。合ってる合ってないは全く保証しない。それでどうぞ。
そのまま動くな
言の葉揺れるのを感じな
我慢出来なかったら それは本当のライブだ
猿人にも先人や先進がいて
また先人の以前にも名人がいたりして
いわば枝葉 影響は斑
書き出していく ユクドラシル
走る青ペンが 描く言葉の風景画
世界変わり人もいないし文明もない
荒れた校庭に投げ出された机の上に彫られたフレーズ
それを俺の手で 浮かぶかつての東京
と想像 実現しうる記述と信じて
やってきたこの型だから 型じゃない
カタログでスタイルを選ばない
そのまま動くな
音の波に抗いな
我慢出来なかったら それが本当のダンスだ
そのまま動くな
言の葉揺れるのを感じな
我慢出来なかったら それは本当のライブだ
様相して(?)ループしてる共通の意味よ
2000年の下北沢から変わらない
流通してループしてるその共通の意味よ
2018○○○○でも変わらない
ひらがな カタカナ 音に乗せるのが
なかなかムズイのが僕らの言語だ
ただまだやめるかは売箱に詰めるんだ
まがいものこそが新たな風穴
例えば抱えてる心情吐露 重ねる街並みと心の模様が
踊ろ(?)高く乗ろう 体系試すような見つめ惑う
歪なカメラに見えるだろう 醜いロックの子に見えるだろうが
作り出すNew辞書 水平思考 次の時代の文法と信じて
やっていくこれからも さぁ
型じゃない 分厚いルーズリーフに学びな Oh
そのまま動くな
音の波に抗いな
我慢出来なかったら それが本当のダンスだ
そのまま動くな
言の葉揺れるのを感じな
我慢出来なかったら それは本当のライブだ
(?)が付いている部分は聞き取りに自信が無い部分である。
そのまま動くな
言の葉揺れるのを感じな
我慢出来なかったら それは本当のライブだ
サビから始まるこの曲のド頭から歌詞は「ライブ」に言及していく。一昨年からずっとライブをし続けてきたBase Ball Bear、そして小出祐介の近年の生き方(つまり「LIVE」)がこの歌詞に集約されている。
走る青ペンが 描く言葉の風景画
世界変わり人もいないし文明もない
荒れた校庭に投げ出された机の上に彫られたフレーズ
それを俺の手で 浮かぶかつての東京
と想像 実現しうる記述と信じて
以前、小出がこんなことを呟いていた。
200年後くらいのディスクガイドに自分のバンドのアルバムが1枚紹介されてたら嬉しいし、2000年後くらいに文明が滅んだとして、人もいなけりゃ音楽なんかもう無いんだけど、棄てられた都市の学校の校庭に積み上げられた机に既に作者不明な自分の歌詞がワンフレーズ彫られてたら嬉しいですね。
— Base Ball Bear 小出祐介 (@Base_Ball_Bear_) January 25, 2017
ミュージシャンが自分の作り出した音楽を聴かれるなら、瞬間的に聞かれるよりも長く長く聞かれ続けたいと思うだろう。そういう意味でこの小出のツイートはスゴク夢があるなぁと思って当時読んでいたんだけど、それがそのまま歌詞になるのは驚いたし、同時になるほど小出祐介らしいなとも思った。この設定そのものが歌世界的で夢がある。
カタログでスタイルを選ばない
そして僕が一番この歌詞で良いなと思わされたのがこのフレーズ。決められた型、今あるモノではなく、自分で自分を選ぶことこそが「ライブ(=生きること)」だというメッセージは普遍性を持って沢山の人間に突きささるはずだ。
マテリアルクラブ、アルバム出すってよ
歌詞を含め、まだまだ謎が多いマテリアルクラブの活動。しかし、既に11月7日にマテリアルクラブとしてのアルバムがリリースされることが発表されている。
マテリアルクラブとしてのライブはあるのか?そしてこのプロジェクトは小出と福岡だけで行われていくのか?「ソロでもバンドでもユニットでもない」とはどういう意味なのか?まだまだその全貌は明らかになっていないマテリアルクラブ。アルバムがリリースされるころには今よりもっとマテリアルクラブの全容が明らかになることだろう。続報を待て!!