ふじもと的・ROCK IN JAPAN FES 2016で見たいミュージシャン10選
8月になりました。暑いですね。クソほど暑い。もしも願いが叶うなら四季を春と秋だけの二季にしてもらいたいくらいだ。
夏真っ盛りということはつまり、夏フェスシーズン真っ盛りということ。今や音楽ファンだけでなく、国民にとっての一大レジャーとなった夏フェス。巷はフェスを意識したCMで溢れ、トーク番組では「夏フェス芸人」なるものが放送されていた。挙句の果てには31日に行われた東京都知事選挙で小池百合子氏の演説の際に、支持者がイメージカラーのサイリウムを振っていたのを見たテレビアナウンサーが「まるでフェスのようです!」なんて言ってて、お前フェス見たことあるんかボケと思わずニュースを見ながらツッコみたくなったり。
続きを読む【ライブレビュー】indigo la Endワンマンツアー「インディゴミュージック」名古屋公演、見てきました!【ネタバレ含】
見てきました!indigo la Endのライブははじめて。ゲスの極み乙女。も見たことないので川谷絵音が率いるバンドのライブ自体はじめてということになります。
で、内容なのですが...素晴らしいライブでした!indigo la Endが歌い続けてる「哀しみ」を直にぶち当てられてる感覚。音、つまり聴覚、そして自らの目・視点、つまり視覚の両方から「哀しみ」を体感出来る。そんなライブでした。圧倒的な「藍色」さ加減。盛り上がる曲だろうが、バラード曲だろうが、根底には「青」や「蒼」、そして「藍」みたいな色彩がそこには確かにあった。哀しみから来る青い色調。
続きを読む【CDレビュー】indigo la End、命を歌う。【indigo la End「藍色ミュージック」】
メジャー1stアルバム「幸せが溢れたら」から約1年半、indigo la Endが新作「藍色ミュージック」をリリースした。
前作と今作の間で大きく変わったことといえばドラマー・佐藤栄太郎の正式加入だ。彼のテクニックによってギター先行の音作りから、佐藤とBa.後藤の両者のリズム隊が織りなす「繊細だけど、タイトでファンク」なリズム中心の音作りに変わった様に思う。そんなリズム隊に乗っかる長田の雨音のようなギター。テクニカルな演奏と、Vo.川谷絵音のセンチメンタルな歌声とメロディ。そしてドラマティックでどこまでも切ない、細かい描写で感情の洪水みたいな歌詞。これらが合わさった時に、時にファンク、時にジャジーだったりダンスミュージックだってこなしてしまう、indigo la Endだけが出来る「インディゴミュージック」が生み出されるのだ。
「悲しくなる前に」「夏夜のマジック」「雫に恋して」「忘れて花束」そして「心雨」。先に発売されたシングルの時点で彼らの進化は顕著だった。一見するとどれも全く違った音楽性ながら、テクニック面の大きな進化を見せつけつつも、その本質は「ポップス」であり、歌詞面では「失恋に伴う悲しみ」を歌い上げている。
「悲しくなる前に あなたを忘れちゃわないと 無理なの分かってるの と夜更けに向かって走った」
「今日だけは夏の夜のマジックで 今日だけのマジックで 歌わせて 今なら君のことがわかるような気がする」
「止められないの 溢れてしょうがないから 意味もなく声も出すんだ よそいきの服を濡らして夜が明ける」
「止まらない感情の諦めあいない渦の中で あなたを見つめ続けた」
「土砂降りの雨に打たれて 消えてく炎 私は一人泣く」
ポップスとは何も「喜び」「うれしさ」みたいなポジティブに溢れかえったものではない。「悲しみ」「憎しみ」もすべて包み込んでしまう、海のような存在がポップスだ。彼らの紡ぎだす音楽は失恋の悲しみをすべて包容するようなモノだった。しかし、このアルバムはそれに留まらない。
「僕らは命を取っ替えた 瞬間銃声が聞こえた それが昨日見た夢の内容だったんです」(インディゴラブストーリー)
「まだ足りない まだ足りないから 命の音 震えさせて 足りないから 足りないから 居場所を叫べよ」(ココロネ)
常に「失恋における悲哀」について歌ってきた彼らだったが、「その先」へとステージを変えたようだ。「命」の最後には「死」が訪れる。どんな生き物・どんな人にも平等に訪れる「死」。誰もが体験する悲しみが「死」である。今作ではそんな「平等で、でも究極の悲しみ」である「死」すらも彼らはポップスで包み込もうとしているのだ。
「死のついたメロディー 奏できるまで 多分途切れない悲しい連鎖が 産声を上げたあの子を巻く」 (ココロネ)
「死のついたメロディー」とは人生の暗喩であろう。「死」が訪れるまでの過程・つまり人生が終わるまでに人は沢山の「悲しみの連鎖」を体験する。今まさに生まれた赤ん坊にもその鎖が巻きつく。メロディーが止まるまでその鎖から解放されることはない。「人生における悲しみのすべて」をここまで歌いきる絵音の歌詞は凄みに満ち満ちている。
つまり、今作でindigo la Endは「失恋における悲哀」を歌うバンドから「命を歌う」ことによって「悲しみすべてを背負う」バンドへと進化したように思う。途轍もない覚悟だ。是非、彼らの覚悟を聞いてみてほしい。
【ライブレビュー】『Perfume 6th Tour 2016 「COSMIC EXPLORER」』静岡エコパアリーナ初日公演を見てきました!!(ネタバレ含)【Perfume】
MC①
【お願い】 Perfume 6th Tour 2016 「COSMIC EXPLORER」は本日アリーナ公演が終了となりましたが、「COSMIC EXPLORER」ツアーはまだまだ続きますので、ライブに関するネタバレはWEB上に掲載しないよう、ご協力お願いいたします。#prfm
— Perfume_Staff (@Perfume_Staff) 2016年7月3日
Perfumeサイドのこのツイートを受けまして、記事タイトルを変更しました。記事内でも書いている通り、Perfumeスタッフによるネタバレ箝口令は僕としては快く思っているし、他のミュージシャンも積極的に取り入れるべき事柄だと考えております。特に彼女達のライブの独特な演出はネタバレを見てしまった段階で意味の無いモノになってしまうので、めちゃくちゃ正しい姿だと考えてます。しかし、今回のツアーは国内アリーナ編・アメリカ編・追加公演ドーム編の3つに分類され、そのどれも規模の違うモノであり、それに伴い演出も大きく変わることが予想されます。また、セットリストもアリーナ千秋楽の際に「このセットリストは今日が最後」という発言をメンバー自ら行っています。じゃあ一体このネタバレ箝口令は誰のためのものなんでしょうか。仮にドーム追加公演が終了するまでネタバレ禁止だとして、5月のアリーナ公演に参加された方が、演出やセットリストに触れた感想を語るには実に半年もの時間が経ってしまう。ライブに対する熱量も記憶も無くなってしまうことは明らかです。正直このスタッフの措置には甚だに疑問しかありません。
今回私が記事にした「ブログ」というモノの特性は、SNS、特にTwitter等と違って「見に来る」「見に行く」物であります。なので記事の削除等は現時点では行いません。しかし、ネタバレ箝口令は継続していますので記事タイトルに(ネタバレ有)を記載しましたことを追記とさせていただきます。
ついに「桑田流ポップス」はここまで来た!新Sg「ヨシ子さん」【桑田佳祐】
桑田佳祐のニューシングル「ヨシ子さん」。ソロとしては3年振りの作品だが、発売前から巷の話題を掻っ攫っていた表題曲「ヨシ子さん」だけではなく、収録曲全てが流石のクオリティだった。「え、これミニアルバムですよね?」と思わず言いたくなるような大ボリューム&ハイクオリティ。早速収録曲に迫っていきたい。
①ヨシ子さん
「チキドン」という歌詞のリフレイン、「フンガ」「上鴨そば」というポップスでは聞き慣れない単語のオンパレード、クラクラするような打ち込みサウンド、インド音楽やダブなどの多種多様な音楽ジャンル、それも意図的に無国籍に近いモノになるようなジャンルを混ぜ合わせたメロディ、不穏な女性コーラス。これらの要素を全てごちゃまぜにして煮込んで出来上がったのがこの「ヨシ子さん」だ。まさに混沌。でも、絶妙なバランス。サザンオールスターズとして「葡萄」という、「意味」を非常に大切にした作品を作った桑田佳祐が、今度はソロとして「無意味」「ナンセンス」な作品を作り出したのだ。「葡萄」を作った桑田佳祐・サザンオールスターズに限らず、今の邦楽は歌詞をかなり重視する傾向にあるように思う。だからこそ彼自身も「葡萄」で意味を大切にした作品を作ったのだろうが、その上で「無意味」な作品を提示し、その作品でMステのトリを務める。邦楽業界にとっても意味合いはかなり深いのではないだろうか。それも、ただ無意味なのではなく、時勢を踏まえたり、自らのルーツを歌に散りばめる「流行歌手・桑田佳祐」としての心意気もしっかりと感じさせる。「EDMたぁなんだよ 親友(Dear Friends)?」「"いざ"言う時に勃たないヤツかい?」「"サブスクリプション"まるで分かんねぇ」「"ナガオカ針"しか記憶にねぇよ」EDMやサブスクリプション、まさに今の日本音楽業界には欠かせないワードだ。日本音楽界のトップに君臨し続ける桑田佳祐だからこそ今の業界を俯瞰して見た上で彼なりのやり方で風刺するような形で歌詞に盛り込んでいるのだろう。一方で、ボブ・ディランやデビット・ボウイという桑田が憧れたスター達の名前も出てくる。「流行」と「歌い手自らのルーツ」という相反する事象が混在する歌詞も、意味があるようで無いような。つまり「ヨシ子さん」とは「意味」が無い、という「意味」のための楽曲なのではないだろうか。と、思っていたところロッキング・オンが運営する音楽ニュースサイト、RO69でもこういったレビューが書かれていた。よければこちらも併せて読んでみて欲しい。
並のミュージシャンならこんなに攻めた楽曲は作れないし、ましてシングルA面でリリースしようなんて思わないだろう。桑田佳祐だからこそ出来た作品であり、彼の経験値があったからこそA面として発売し得たのだと思う。また話題をかっさらっていけるバイタリティも密かに、でも確実にこの曲には存在している。賛否両論巻き起こるような作風なのは事実だし、初聴だと殆どみんな「うっわドギツイな」と思うだろう。僕自身も、そしてTwitterのフォロワーのみなさまも概ねそんな反応だった。だが時間が経つに連れて誰も彼もが「チキドン」「フンガ」の虜になっていった。それこそがこの曲の持つ「秘めたパワー」なのではないだろうか。
「デジタル歌謡ロック」な1曲。サスペンスらしい緊張感のあるピアノとシンセサイザーの旋律に打ち込みの4つ打ちが混ざり合うイントロは圧巻の一言。昨年の「葡萄」は歌謡曲を前面に押し出したアルバムになっていたが、この「大河の一滴」もまた歌謡曲のテイストを盛り込んだ作風だ。「歌謡曲」と一口に言っても色々なパターン、色々なジャンルに分けられる。「葡萄」も「大河の一滴」も歌謡曲テイストなのは共通した点ではあるが、それぞれで全く趣の違った作風になっている。歌謡曲というジャンルのすべてを網羅せんとばかりの振り幅の広さにただただ脱帽だ。歌詞も2010年代以降の、「愛しい人に捧ぐ歌」「栄光の男」あたりに代表される「大人の哀愁」「大人の切なさ」を踏まえて「大人の深み」、さもすれば「諦め」にも近い変化を感じさせる、それこそ「熟成」からこの曲のテーマでもある「円熟」への遷移をそのまま言葉にしてしまったような歌詞が特に強烈だ。
「時の流れは冷酷だよね 男は自惚れ(エゴイスト) 女は自由人(ボヘミアン) 」
歳を重ねれば重ねる程に男性は自らのエゴを他人に押し付けるようになり、女性はそれこそ勝手と言いたくなる程に自由になる。それは死が着実に近付くなかで、自分の最期を少しでも良いものにしたいが故にそうなってしまうのだが、時としてそれは残酷な程に己の首を絞める事となってしまう。
「身を削りながら生きることも 忘れ去られながら老いてゆくのも 優しい素振りや醜しい癖も 世間にとっちゃナンの意味もない」
自分という存在は世間にとっては1mmの価値も無いという事を突き付けられている気に(桑田佳祐が「世間にとっちゃナンの意味もない」ってことは正直あんまり無いよなぁと思うけど)なるのだ。桑田自身が還暦を迎えたからこそこういう本質、つまり真理に(この楽曲が使われているUCCのCMのテーマは"本質の追求"だそうだ)たどり着いたのかもしれない。男女の違いも、世間に対して自分という存在のギャップも「本質」なのだと。そんな「本質」をまざまざと突き付けられても、「夢よもう1度」「渇いた心に命与えて」と歌う諦めきれなさも切ない。
「人波に押され溺れながら 子供らはどんな未来描くの?黒い瞳の見つめる先に 何が待ち受けているのでしょう?」
この歌詞にもグッとくる。少子高齢化が進み、若者より(桑田自身を含めた)高齢者の意見が通るようになりつつある、という時勢を踏まえると尚のこと感じるものがあるのではないだろうか。ボブ・ディラン曲の邦題が詞に散りばめられた2番Aメロも押さえておきたいポイントだ。こんなにシリアスな、現実月付けっぱなしの歌でも彼なりのお遊びを含めた歌詞にリスペクトの念を感じずにはいられない。
③愛のプレリュード
プレリュードとは「前触れ・前兆」という意味だ。その名の通り「愛のプレリュード」は「自分の恋心に気付く瞬間」を描いた歌である。60歳を過ぎてもなお、ここまでキュンとくる、高校生の恋愛みたいな歌詞を書けるのかと関心する。それどころか45~50歳あたり(多分「キラーストリート」のあたり)の頃のラブソングに比べて確実に若返っているように思う。勿論、こういう作品が出てくる頻度はかなり下がったように思うが、「幸せのラストダンス」「彼氏になりたくて」あたりの高校生から20代後半くらいの恋愛観に近い詞が未だに書けるのって相当凄いことと思う。これはひとえに桑田佳祐の「童貞的妄想力」の高さが故の事ではないだろうか。思えば桑田佳祐という人はデビュー当時からずっとエロスについて歌ってきたけど、そこにどうも現実味があまりないというか。妄想とか、ある種の中二的な精神で歌詞書いてるんだろうなと思ってる。そのデビュー当時から鍛えられた妄想力がここに来て「爽やかポップス」に転換されてるのではないだろうか。無論、エロスとは違ってラブソングに関しては彼自身の経験もある程度は加味されてると思うけど、60歳を超えた、ハッキリ言って「おじいちゃん」の範疇に足を踏み入れた人がここまで爽やかで「キュン」という形容詞が似合う歌詞が書けるという事はホントに素晴らしいなと。桑田佳祐にはいつまでもこう在り続けて欲しいものである。
サウンドと構成はかなり特異なモノになっている。前奏や間奏は桑田佳祐の愛するザ・ピーナッツの「恋のバカンス」にも近い、まさに歌謡曲のド真ん中を行くような管楽器っぽい打ち込みサウンド。それ以外の部分はウクレレやギターの音が心地よい極めて簡素な、「減らしていくサウンド」。この対照的なサウンドが混在しているのが面白い。夏らしい爽やかな、桑田佳祐の十八番という感じ。下手をすると「手癖」と言われかねないような(言われてるのか...?)曲ではあるが、コンスタントにこういう曲が出てくるのはファンとしては嬉しい。彼の作るこういう爽やかなポップスが好きで僕は桑田佳祐のファンになったのだもの。
④百万本の赤い薔薇
桑田佳祐作品史上No.1に「イントロの開放感がスゴイ」1曲。この圧倒的な抜け感。何でかなと思ってクレジット見てみると編曲に原由子の文字。あとは「ユアタイム」でテーマソングだけじゃなくてSEとしても使ってるのも理由かな。5秒で惹き付ける事の出来る音。なるほどと膝を叩いてしまった。スッゴイ好きな感じ。今までも抜けのいい開放感のあるイントロは沢山あった。波乗りジョニーなんかはまさにその代表例だろう。でもそれらを遥かに凌駕している。もう桑田作品史上No.1のイントロと言っても過言じゃない気がする。勿論イントロだけじゃなくて全編に渡ってポップスの極地みたいな、この喩えが正しいかは分からないけど「聖歌」みたいな尊さすら感じるアレンジ。流石は日本ポップス界のトップに君臨する桑田佳祐。歌詞は...嫌いじゃない。全体を見渡せばスゴク好き。
「愛の言葉をひとつ 君にあげるとしたら 恥ずかしそうな笑顔に いついつも恋してる」「命ある限りに 君の幸せ祈って」「おやすみする前君は 決まって僕を見つめて 優しい微笑みくれる」
という歌詞は結婚式なんかに超似合いそうだし
「「愛と平和」なんてのは 遠い昔の夢か」
にハッとさせられ
「強くあれと言う前に 己の弱さを知れ」
という歌詞に自分の不甲斐なさに打ちひしがれてしまう。
だけど「紗椰」がやっぱり気になってしまう。市川紗椰さん。サザンファンで鉄ヲタで美人。正直めっちゃ好み。でも曲中に出て来るっつーのは...。現在進行形の番組に出てる人だからかなぁ。時が経てば気にならなくなるのかもしれないけど、少なくともリリース直後の今はかなり気になってしまう。今後次第かな。とにかく王道ポップスとしては桑田佳祐作品史上でもトップクラスなのは間違い無い。最高の一言。
⑤大河の一滴(TV Edit)
2曲目の「大河の一滴」では間奏に男女の(男性は桑田本人)セリフがインサートされる。のだけど、個人的にはここいらねぇなぁと思ってて。女性のセリフの話し方がスゴク演技臭いのがめちゃくちゃ気になるのだ。どーしても。なのだが、このTV Editはセリフの無いバージョン。間奏のシリアスなピアノとオルガンの掛け合いをより楽しめる。
ここからは初回限定版のみに収録されたボーナストラックについて記す。
⑥東京(TOKYO Big Band Session)
2002年リリースの「東京」。その前までの作風とは一転したシリアスな歌詞とアレンジに、1音を伸ばして歌う異様なメロディ。リリース当時のファンが騒然となったであろうことは想像に容易い。それから14年経った2016年。WOWOWの特別番組「偉大なる歌謡曲に感謝 〜東京の唄〜」の中でこの「東京」がアレンジを改めて披露された。これはその音源を収録したものなのだが、コレがもう素晴らしいのなんの。タダでさえシリアスさ、さもすれば狂気さえ宿っている「東京」にストリングスとホーンセクションをこれでもかとぶち込み、原曲の良さはそのままに、曲に秘められたシリアスさ・狂気っぷりをより増幅させんとばかりにストリングスとホーンセクションが鳴りまくっている。明るさなんて微塵も感じさせない、まるでドス黒い深淵の様だ。楽器が泣き叫んでいるような錯覚を覚える。特にラストサビの前の一瞬は鳥肌モノだ。是非今後ライブで「東京」を披露される際はこのアレンジでお願いしたいものである。
⑦風の詩を聞かせて(Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
⑧明日へのマーチ(Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
⑨明日晴れるかな(Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
3月末に閉局となった「女川さいがいFM」を労うために宮城県は女川町で行われたシークレット・サプライズライブ。このライブの模様の一部は桑田のラジオ番組「やさしい夜遊び」でも流されたのだが、ボーナストラックとして音源化された。正直言って楽曲としての目新しさは特に無い。前述した「東京」の様な激しいリアレンジという訳ではなく、あくまでもアコースティック編成でのゆったりとしたライブだ。とはいえ、東日本大震災直後から積極的な被災地支援を行い続けた桑田。震災から5年が経ち、完全な復興はなし得ないのに震災の事実が風化していく中で、未だにこうした支援活動を行う桑田佳祐は尊いなと思わされる。選曲も未来を感じさせるような、被災地支援にピッタリな3曲だ。「風の詩を聞かせて」は被害に遭って亡くなられた方々への鎮魂、「明日へのマーチ」「明日晴れるかな」は言わずもがな、今なお被災地で震災と戦い続ける皆様への労いのための音楽。東日本大震災、そして今年発生した熊本地震。何があっても挫けずに、負けないで欲しいなんて他人事のようだけど。この3曲を聞いて改めて強く思ってしまった。
シングルでこの大ボリューム。新曲4曲、それも全曲A面クラスの出来ってだけでも充分なほどお腹いっぱいなのに、既存曲の新音源も充実。配信やサブスクリプション市場が本格的に盛り上がってきたからこそ、「CDシングル」としてのクオリティはしっかり担保してある。特に新曲群はどれも繰り返し繰り返し聞きたくなるような曲ばかりだ。前述したWOWOW特番ではこのシングルには収録されなかった新曲も披露されたとのことで、アルバムへの期待がグングンと高まっている。楽しみで仕方ない。
かなりヤバイよ、「ヤバイTシャツ屋さん」!!
ヤバイTシャツ屋さん、というバンドをご存じだろうか。「また変な名前のバンドが出てきたな~」なんて思う人も多いだろう。安心してほしい。変なのはバンド名だけじゃない。この人たち大体変だ。
まずは彼らの公式HPをご覧いただこう。
公式HPからしてこのユルさである。ツッコみだしたらキリが無いほどボケ倒している。他バンドの名前とかガンガン出てくる。嘘もつき放題だ。公式HPとしてバンドに関する情報を発信しようなんて全く思っていないだろこれ。そもそも見辛いことこの上ない。
ユルいのはHPだけじゃない。彼らの公式Twitterアカウントを見てみよう。
クソワロタ共和国 pic.twitter.com/NomvZm4Lfs
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) 2016年6月22日
いや、まじで新録音源一曲だけやのにどんだけみんな買ってくれるねん。本当にありがたい。これでもし今後全部新録の13曲入りアルバムとか出すことになったらどんだけ売れるねん。13倍ぐらい売れるんちゃうん。すごいな。ドリカムやん。おれらドリカムぐらい売れるんちゃうん。
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) 2016年6月22日
ついにヤバイTシャツ屋さんも、吉幾三先輩と名前が並ぶようになったか・・・ https://t.co/Ri6dPPeule
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) 2016年6月17日
昨日はメンバー3人並んで凛として時雨さんのライブを見ました。終始、「メンバー編成いっしょやのに。なんで???なんで??メンバー編成いっしょやのに?どうなってんの??俺らもこれ出来なあかんのちゃうん?メンバー編成いっしょやし。」って言ってました。メンバー編成いっしょやのに。。。
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) 2016年5月29日
ユルい。他バンドの名前はHP以上にガンガン出てくるし、自分たちのCDがおもっくそ転売されてるのを見て「クソワロタ共和国」だ。これ、メンバーのアカウントじゃなくてあくまでもバンドのアカウントだからね。ユルすぎる。
「こんなふざけたバンドのことだから、どうせ音源もふざけてるんだろ」と思ったそこのあなた。音源を聞いてから判断してほしい。
うん。どう判断されるかは各々の自由だが、おそらく大多数の人が「ふざけてる」と思うだろう。僕もそう思う。そりゃあな。「ネコ飼いたい」しか言ってないもん。そりゃあな。
でも、彼らの「ふざけてる」の前には「いい意味で」という枕詞が付くと思う。ここまで突き抜けた「ふざけ」は魅力になってしまう。この「ネコ飼いたい」、1度聞いたら絶対に忘れられない曲だと思う。歌詞は基本的に「ネコ飼いたい」だけ、メロディも2パターンのみ。極端に緩急のあるサウンド。敢えてここまで分かりやすく印象に残りやすい構成にしてしまうことで1度聞いただけなのに口ずさめてしまう曲になっているのだ。
他の楽曲も聞いていただこう。
批評的な視点を持った切れ味鋭い歌詞。それも社会を批判するようなものではなく、あくまでも「あるあるwww」とおもわず言いたくなるような、自分たちの半径3m以内のモノをテーマにしている。実に人間味に溢れた歌詞だ。みんな思ってて、でもなかなか口には出せないようなことを彼らは堂々と歌にしている。それこそが彼らの魅力だ。
実際、彼らを評価する音楽関係者は多い。
「こいつら売れる気ないやろ!でも、これから来ると思いますね!!」
ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)- 2015年5月17日 FM802 "MUSIC FREAKS" より
「惚れた。モラトリアム感爆発のギミックバンドと笑うなかれ。オレは泣いたよ。」
大谷ノブ彦(ダイノジ) - 2015年8月"出れんの!?サマソニ"選考員コメントより
「くやしいんですけど、ハマりました。」
鹿野淳(音楽ジャーナリスト) - 2015年11月10日 InterFM "ONGAKU NOMAD"より
「ヤバイTシャツ屋さん、天才だと思った。」
ピエール中野(凛として時雨) - 2016年4月某日、直接言われた。
「最高に笑った、その上にめっちゃカッコ良かった。最高だなあいつらはw早くまた見たい♪」TAKUMA(10-FEET) - 2016年5月29日 Twitter より
「ヤバイTシャツ屋さんあるある、早く言いたい。PV、スタジオで撮りがち。」
レイザーラモンRG - 2016年6月10日 "DRF 2016"より
「ヤバイTシャツ屋さん、大好きなんです。」
松井玲奈 - 2016年6月13日 日本テレビ「PON!」より
上記したコメントは公式サイトからコピペしたものである。レイザーラモンRGは別に評価してるわけじゃないなこれ。ともかく、彼らの活動が大きなうねりとなっていることは確かだろう。
歌詞の内容は「キュウソネコカミ」なんかと似ているし、彼ら自身その自覚はあるのだろうが、個人的にはキュウソとヤバTでは意図するものが違うのではないかと思う。キュウソに比べてヤバTのほうがより共感できる、「あるある」な歌詞なのだ。だからここまで人気になったのだ。
今年の各地夏フェスに出まくり(本人曰く「一時の[Alexandros]バリ」だそうだ)な彼ら。ビクターロック祭り、COMIN'KOBE、VIVA LA ROCK、百万石音楽祭、DRF、やついフェス、FREEDOM NAGOYA、京都大作戦、見放題、UCHU FES 、ピエールフェス 、ROCK IN JAPAN、山人音楽祭。既に終わってしまったものもあるが、いずれかのフェスに参戦されるかたはぜひチェックしていただきたい。CDもタワレコ限定シングルが発売中&3rdシングルの発売がすでに決定している。ここまで大きく活動を展開しておいて未だにインディーズなのだから驚きだ。
彼らの1stシングルのタイトルは「そこまでヤバくない」だったが、十二分なほどに「ヤバい」彼らの活動から目が離せない。
#2016年ベストソング上半期編
恒例の。今年は新作をあまり聞けてないので付け焼刃感が凄いのですが…。曲だけだとなんなので、アルバムやライブについても書きます~。
まずは上半期ベストソングから。
アルバム「COSMIC EXPLORER」のリード曲…なのだが、アルバム本編に収録されたのはアルバム用にリミックスされたバージョンだった。本来のバージョン(ちはやふるの主題歌として使われ、音楽番組でも披露されていたもの)はアルバムの初回盤特典として収録されていた。その是非はともかく、このシングルバージョンが傑作だった。映画「ちはやふる」とのリンクを散りばめながらも、3度のワールドツアーを経て「COSMIC EXPLORER」という大傑作を創り出したPerfumeの「らしさ」が詰まった楽曲といえるのではないのだろうか。ダンスナブルで、まさに「王道Perfume」なメロディとアレンジ。競技かるたを髣髴とさせるようで、Perfumeのライブもイメージできるような歌詞が俊逸。ダブルミーニング。
乃木坂46からはじまった「坂道シリーズ」第二弾として結成された欅坂46のファーストシングル。「皆がみんな同じことをしている」という、「同調圧力」について歌うという、アイドルグループの、それもファーストシングルとは思えないようなメッセージ性のある歌詞が素晴らしい。
欅坂46「サイレントマジョリティー」凄いな。「普通」という「同調圧力」に支配されたこの国を憂う歌詞。秋元康流石だわ。乃木坂の流れを汲んでるんだろうけど、キャピキャピ王道アイドルじゃないこの路線めっちゃ好き。人間らしさがよく出てる。借りてこよー。
— ふじもと (@fujimon_music) 2016年6月10日
アイドル戦国時代なだけあって、最近のアイドルソングは今までだったら絶対無かった視点がガンガン出てきててスッゲー面白い。アイドルソング舐めちゃダメだなとほんとに思う。引きこもりとかいじめられっ子とか。アイドルだからって馬鹿にできない。
— ふじもと (@fujimon_music) 2016年6月10日
「個性」があるから人なのに、個性は必要のない物だと教育され、また排除されるというのは絶対に間違っていると思ってる。秋元康はこの曲を通じて日本社会への警鐘を鳴らしているのではないだろうか。欅坂、これから期待大。アイドルらしからぬ作品を生み出し続けてほしい。
③心雨 indigo la End
昨年は怒涛とも言えるほどに名曲をリリースし続けたindigo la End。昨年末に記事にしたベストソング2015でも3曲も選ばせていただいた。
今年最初のリリースとなった「心雨」。ジャジーでスローテンポ、まさに「心地よい」音像だ。勢いだけで持っていくような曲作りではなく「聞かせる」ことを念頭に置いて作られたことが窺える。(記事作成時点で発売しているもののまだ聞けていない)アルバムも楽しみである。
④破花 クリープハイプ
ソリッドに研ぎ澄まされまくったクリープハイプ渾身の1曲。自らを鉛筆になぞらえて、尾崎がここ数年抱えていた「自らへの怒り」がテーマになっている。「先が尖ってる芯が少しずつ丸くなる 真っ白な気持ちは書いた分だけ黒くなる」というのはつまり、「インディーズ時代の作品に比べて明らかに『怒り』がモチーフの作品を書かなくなった」ことに由来するのではないだろうか。インディーズ時代の彼の歌詞は売れないことに対する自虐的な自らへの怒りをテーマにしていた。が、ブレイク以降はそういった歌詞が明らかに減った。そりゃあ「売れた」のだから当然なのだが。ファンは勝手だからそういう歌詞を求める。求められる度に自らの気持ちは黒く淀んでいく。序盤のこの歌詞でここまで解釈させられるのは素直にスゴイなと感じる。「動き出した君の歴史 いつも今日に答えがあるから」自分が信じているモノは過去にも未来にもなく、現在に存在するのだと宣言する歌詞に痺れる。
インディーズロックバンド、バックドロップシンデレラがリリースしたカバーアルバム「いろんな曲でウンザウンザを踊ってみた」収録の1曲。国民的童謡である「だんご3兄弟」を自らが提唱する「ウンザウンザ」というバンドサウンドへと見事なリアレンジ。バイオリンがここまでロック的な聞こえ方をするのかと驚き。そこに絡みつくようなギターがたまらん。「踊るやつがエラいのだ」という彼らのスタンス通り、「踊れるだんご3兄弟」になっている。
⑥MUSIC VIDEO 岡崎体育
上半期一番バズったミュージシャンは間違いなく岡崎体育だし、上半期一番バズったMVは間違いなくこの「MUSIC VIDEO」だろう。批評的な視点から自らの半径3m以内のモノを徹底的に「コケに」する姿勢。めちゃくちゃだけど、スゴク納得できる。これからの活躍に期待大。
「王道」に向かわないことで自らの魅力を最大限に発揮している乃木坂46。今回のシングルもまったく王道ソングではないが、確かな魅力と他では感じえない独特の感覚のある作品になっている。欅坂の出現もあり、今後はどういう作品になるのか。注目したい。
宇多田ヒカル活動再開の狼煙のような1曲。休止中に彼女に起きた『色々なこと』を踏まえた上で書かれた、人間味の溢れた歌詞が素晴らしい。16歳から日本の音楽シーンの先頭にずっと立ち続けた重圧から解き放たれ、人間味のある生活を送った彼女が書く歌詞は今までのそれとは一味もふた味も違った「泣ける」ものだった。是非CD化に期待したい。
⑨両成敗でいいじゃない ゲスの極み乙女。
アルバム「両成敗」のリードトラック。イントロのうねるギターとベースが絡み合うようなブラックな音像に、サビの切ないメロディー。川谷絵音の才能は底知れないなと思わされる。個人的にはindigo推しだけど、ゲスの新曲も楽しみにしております。
⑩さらば涙 ケツメイシ
これだけ先に言いたい。鈴木ちなみ可愛いよね。
ケツメイシのキャリアを総括するかのようで、その重さを感じさせない普遍的な応援ソング。「胸に咲いた花びら」は「さくら」を連想させるし、「いい波が音もなく~」は「また君に逢える」を連想してしまう。ガッツリファンというわけじゃないからそこまでの知識があるわけではないけど、めちゃくちゃ良いです。素晴らしいです。
というわけで改めてランキング。
③心雨 indigo la End
④破花 クリープハイプ
⑥MUSIC VIDEO 岡崎体育
⑨両成敗でいいじゃない ゲスの極み乙女。
⑩さらば涙 ケツメイシ
続いてアルバム編。
①幸福 岡村靖幸
岡村靖幸12年ぶりのオリジナルアルバム。岡村靖幸特有の変態的ブラックミュージックはやや鳴りを潜め、全編に渡って幸せの塊みたいなキラキラしたポップスが展開される。つまりこれこそが「幸福」だという証。色々な事を経験してきた岡村ちゃんが最後に見つけた「幸せ」がこのアルバムなのだ。「岡村ちゃん流 ポップスのすべて」がここに詰まっている。
「世界レベル」のスケールで描かれる前半と、「大人の女性」へと足を踏み入れたPerfumeを大人らしく描いた後半の流れ。真逆の流れながら、どちらも「Perfumeの今までとこれから」を感じさせる。非常にコンセプチュアルなアルバムながら、全く重さを感じさせない、寧ろあっという間に聞けてしまう。Perfume史の中でも(いい意味で)異端なアルバムであり、新機軸。
③いろんな曲でウンザウンザを踊ってみた バックドロップシンデレラ
ロックとは似ても似つかない楽曲を完全に自らの領域へと連れ込み、全く別の姿に変えてしまうアルバム。勿論原曲の良さはそのままに、バクシンらしさはありったけ込めて。正しいカバーアルバムのカタチだ。どの楽曲も俊逸だが、個人的には「だんご3兄弟」「シュラバ★ラ★バンバ」を推したい。カバーアルバムなのでとっつきやすく、またはじめてバクシンサウンドを体験するにはもってこいなアルバムだ。
というわけでアルバム編ランキング。
①幸福 岡村靖幸
③いろんな曲でウンザウンザを踊ってみた バックドロップシンデレラ
続いてライブ編
①日比谷ノンフィクションⅤ~LIVE BY THE C2~ @日比谷野外大音楽堂 Base Ball Bear
メンバーの脱退というバンド史上最大のピンチを、「音楽に真剣に向き合う」という圧倒的な正しさで乗り切る彼らをまざまざと見せつけられたライブだった。ここでしか見れなかったであろう豪華なギタリストとの共演も、ラストを飾った3人だけでの演奏も。彼らの「決意」をビリビリと感じさせるライブだった。
②Perfume 6th Tour 2016 COSMIC EXPLORER @静岡エコパアリーナ初日 Perfume
ツアー開催中なので詳しいことは割愛するが、「COSMIC EXPLORER」という非常にコンセプチュアルなアルバムをライブ用に再構築し、さらに沢山の要素を盛り込んだうえで、Perfumeらしさは存分に閉じ込めた素晴らしいライブだった。Perfumeのライブは本当に幸福というか、多幸感を感じるライブを毎回してくれる。
③Base Ball Bear Tour LIVE BY THE C2 @名古屋DIAMOND HALL Base Ball Bear
「日比谷ノンフィクションⅤ」はサポートギタリストの参加もあり、余り「C2」の世界観を感じさせるような構成ではなかったが、地方公演であるツアー本編はサポートギタリストも一人に絞り、あくまでしっかりと「C2」というアルバムを感じさせるライブだった。「美しいのさ」が泣けた。
ライブ編はこんな感じ。
①日比谷ノンフィクションⅤ~LIVE BY THE C2~ @日比谷野外大音楽堂 Base Ball Bear
②Perfume 6th Tour 2016 COSMIC EXPLORER @静岡エコパアリーナ初日 Perfume
③Base Ball Bear Tour LIVE BY THE C2 @名古屋DIAMOND HALL Base Ball Bear
あまりにも聞き込めてなかった&ライブ参戦も少な目だったので全体的に偏りまくりなランキングとなってしまったが、年末までにはもう少し聞き込んでからランク付けしたいと思う。とはいえどの作品も素晴らしいものばかりなので、ぜひ聞いてほしい。