ポルノグラフィティ16th LIVE CIRCUIT「UNFADED」セミファイナル公演を三重サンアリーナで見た!
「初めてライブに行った日のこと」をあなたは覚えているだろうか。
僕の「初めてのライブ」は10年前、ポルノグラフィティの10th ライヴサーキット「ロイヤルストレートフラッシュ」の三重県営サンアリーナ公演だった。今でもハッキリと、昨日の事のように覚えている。当時の僕は中学2年生で、父親から「定期試験で学年80番以内に入ったらポルノのライブに連れてってやる」という条件を提示された僕はそれなりに勉強を重ね、見事79位というギリギリの順位を獲得した。2009年3月7日、あの日の三重県営サンアリーナはとてつもなく広く感じたし、ライブの乗り方も全く分からなかった。けど、1曲1曲を噛み締めるように聞き、自分のその時の境遇と曲を重ね合わせてはちょっと感傷的になり、スタンドの最上段からポルノの2人の姿を必死に見つめていた。
あれから丁度10年が経った。
この10年で、僕はそれなりに色んな経験をしたし、あの頃に比べたらより色んな音楽を好きになったし、ライブにも少なくとも両手じゃ数え切れない程度に参加してきた。その反面で、ポルノから離れていた時期もあった。むしろ離れていた時期の方が長かった。理由は単純で、自分の音楽の趣味の変化とポルノグラフィティの音楽性が上手く重ならなかったからだ。彼らのライブをもうかれこれ6年は見てないし、ワンマンは8年も見ていない。それでも元々それなりにファンだったから、新曲やアルバムはちゃんと追ってはいたのだけど、彼らの新曲を上手く受け入れられないことも多かった。
その機運が変わったのが2017年中盤から2018年頭にかけて。「Montage」「MICROWAVE」「カメレオン・レンズ」「Zombies are standing out」と、僕がカッケー!!と心の底から思える曲をポルノは連発してくれた。タダのポップスでは無い、2018年という時勢にも乗っかりつつ、ちゃんと自らを最新型にアップデートしたポルノグラフィティが創り出す圧倒的に攻めた音がそこにはあった。ポルノの新曲にこんなにワクワクしたのは久しぶりだった。
そして彼らが20周年を記念したツアーをすること、更にその会場のひとつに、僕が初めて彼らの、そして音楽ライブそのものを見た三重県営サンアリーナがあること、そして開催のタイミングがその時から丁度丸10年という事に、なにか運命めいた因果を感じ、実に6年振りにポルノのライブを見る事を僕は決意した。
2019年3月16日。10年振りに来たサンアリーナには、もうどうしようもなくめちゃくちゃカッコ良い"今の"ポルノグラフィティが居た。
オペラ調のコーラスから爆発と共に幕が下りて始まった「オレ、天使」、ポップ・ロックな「A New Day」、多幸感がうねりとなって押し寄せる「幸せについて本気出して考えてみた」というライブ序盤の3曲が既に示すように、今回のライブは全体的にポルノグラフィティのロック面にに比重を置いた選曲が多いように感じた。特に「ビタースイート」「DON'T CALL ME CRAZY」「Zombies are standing out」とハードロックな楽曲が続くコーナーには痺れまくった。その姿は、ポルノグラフィティはロックバンドであるということを僕ら観客に見せつけ、そして彼ら自身が自らのロック魂のようなものを振り起こしているようにも見えた。
サブスクリプション解禁に伴うツアーということで、シングル楽曲もアルバム曲もカップリング曲と平等に選曲する、というのが今回のツアーの大きな主題であり、そんな主題があるこのツアーだからこそのサプライズ的な選曲が多くあった。前述した「ビタースイート」はまさにそんな1曲だし、他にも「見つめている」や、アンコールに披露された「タネウマライダー」も本人達ですらもう披露するのは最後かも、と洩らす程ライブで歌うことがレアな楽曲だった。また披露自体に驚きはないものの、ライブのこの位置でこれを歌うか!という意味でめちゃくちゃ驚かされたのが「ジレンマ」。普段はアンコールの披露が定番となっている「ジレンマ」だが、本編後半戦始まってスグのタイミングに演奏が始まった時は思わず僕も驚きの声を上げてしまった。
ボーカル岡野昭仁、ギター新藤晴一の2人にフォーカスを絞る場面も多かった。昭仁の柔らかな弾き語りで歌われた「見つめている」「夕陽と星空と僕」、そして晴一の歪んだギターサウンドに否応なく体が熱くなる「didgedilli」が立て続けに演奏されたシーンは、バンドという集合体ではどうしても見えにくくなってしまうメンバー個々の魅力を改めて感じることの出来る瞬間だった。
メンバー自身がこの20年に対してどう感じているのかが垣間見える瞬間も沢山あった。「見つめている」を演奏するときに昭仁が「色んな曲を作ってきたけど、この曲は今聞くと何を考えて(当時)作ったのか分からない」と半ば自嘲的に話すシーンもあれば、晴一が「タネウマライダー」を演奏した後に作った本人自ら「人でなしの曲だ」と笑いながら話しているところもあって、どれもふたりが様々なことを感じ、悩み、それが曲になり、それを繰り返し続けた20年だったことの表れに見えた。
なによりも、他に演奏されたどの曲よりも最新楽曲群が圧倒的にカッコよく、そんなポルノグラフィティがめちゃくちゃカッコよかった。「カメレオン・レンズ」「前夜」「Zombies are standing out」「海月」「フラワー」。どの曲も改めてライブで聞くと、2019年という時世に見事にハマりつつも、ポルノグラフィティのアイデンティティも担保された曲になっている。過去曲のチョイスも現在のモードを踏まえた選曲になっていたところも含め、お世辞なんかじゃなくて純然たる意味で「今が全盛期」じゃないかと本気で思わされるほど、”今”のポルノグラフィティは輝いていた。
本編最後の曲の前「忘れられないことも、忘れちゃいけないこともある」と昭仁が語った上で演奏された「∠RECEIVER」は、僕が最後に彼らのワンマンに参加した「つま恋ロマンスポルノ ~ポルノ丸~」を思い出さずにはいられなかった。自然に対する人間の圧倒的な無力さと、それでも前を向いて歩み続ける人々の尊さを直接的に描いたこの曲を、彼らは東日本大震災から半年後、つま恋の地で真っ先に東北に届かんばかりの熱量で歌っていた。あれから8年が経った今もなお、自然の驚異は僕たちを襲い続けている。それはポルノの二人とて例外ではなく、昨年の夏に開催予定だった広島での災害復興野外ライブの二日目は台風によって中止となった。彼等は自然の驚異を思い知った、紛れもない当事者だった。その上で改めて人間は無力かもしれないけれど、それでも逃げちゃいけない、前を向いて歩まなくてはいけないのだと、魂を焦がすほどの熱量で歌う昭仁と、ここまでで弾いたどの曲よりも轟音が響いたギターを弾く晴一を、僕は10年前と同じように必死に見つめていた。
アンコールの最後に演奏されたのは「ライラ」。
歩き疲れたら帰っておいで
懐かしい歌など唄いましょう
前述した通り僕は、ポルノから離れていた時期も、なんならちょっと嫌いにすらなっていた時期もあった。でもやっぱり僕にとってポルノグラフィティは自分の音楽人生の原点のひとつで、それこそ10年前にCDケースがボロボロになるまで聞いていた”懐かしい歌”に思いを馳せまくった後に聞いたこのフレーズは、なんだかポルノの二人にこれまでの10年を真っすぐに肯定されているような気持ちになった。
10年前と比べたら、昭仁さんも晴一さんもちょっと老けたなって思ったし、僕自身も中学2年だったのが社会人2年目だし、あの頃ポルノのライブに僕を連れて行ってくれていた父親とはもう絶縁状態だ。10年という時間はそれなりに長くて、人間もその時間に合わせてどんどん変わっていく。でも、時間を経たからこそ、自分自身が変わったからこそ気付けたことも沢山あって。サンアリーナは実はそんなに広くないし、ライブはノリ方が分からなくても自分なりに盛り上がればいいし、やっぱりポルノは今を歩み続ける最高にカッコよいロックバンドだった。ポルノグラフィティの2人にに感謝を。
ポルノグラフィティ 16th LIVE CIRCUIT「UNFADED」三重県営サンアリーナ公演初日 セットリスト
1.オレ、天使
2.A New Day
3.幸せについて本気出して考えてみた
4.東京ランドスケープ
5.ジョバイロ
6.ヴィンテージ
7.前夜
8.ビタースイート
9.DON'T CALL ME CRAZY
10.Zombies are standing out
11.見つめている(弾き語り)
12.夕陽と星空と僕(弾き語り)
13.didgedilli
14.カメレオン・レンズ
15.海月
16.フラワー
17.オー!リバル
18.ジレンマ
19.パレット
20.サウダージ
21.ハネウマライダー
22.∠RECEIVER
Enc.
1.タネウマライダー
2.ライラ