Base Ball Bear「Guitar!Drum!Bass!Tour『日比谷ノンフィクションⅧ』」を見て

9月15日に日比谷野外大音楽堂にて開催されたBase Ball Bearの「日比谷ノンフィクションⅧ」。新ツアー「Guitar!Drum!Bass!Tour」の初日であり、Bass Ball Bearの数少ないシリーズライブ「日比谷ノンフィクション」の8回目となった今回のライブに参加してきました。

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以前は毎年初夏の風物詩だった日比谷ノンフィクションだが、今やすっかり秋の風物詩。秋風がそよぎ、鈴虫が鳴く日比谷公園にはBase Ball Bearのメンバー3人だけの姿があった。

思えば、日比谷ノンフィクションはBase Ball Bearにとっても他にはないスペシャルなステージとなることが多い。

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ギターの湯浅将平脱退直後の開催となったⅤでは「ギタリスト祭」の如くフルカワユタカやthe telephones石毛輝POLYSICSハヤシにナンバーガール田渕ひさ子と、当時の片腕を失ったベボベの義腕となるギターの名手が顔を揃えた。

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Ⅵでは長らくツアーを共にした弓木英梨乃に加え、キーボードのRyu Matsuyama、そしてホーンにSANABAGUNからトランペット高橋紘一、サックス谷本大河、更にはラッパーの呂布に、当時はまだチャットモンチーとして活動していた福岡晃子が顔を揃える、Base Ball Bear史上最も大きな編成でのライブとなった。

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Ⅶでは2以来の「対バン形式」を採用。Ⅳに続きライムスターを、更にペトロールズを招き、Ⅵとは一転して本格的にスリーピース編成でのライブを始めつつあったBase Ball Bearのモードを象徴する「スリーピース祭」となっていた。

ここまで振り返って分かるように、ⅤからⅦに至るまで、彼らは誰かの後ろ盾を持って野音に挑んでいた。その後ろ盾の意味は様々で、片腕を失った3人が立ち上がるための義腕、バンドの可能性を限界まで広げるための試金石、そこから改めて3人だけの音に立ち返るため、そして誰かと誰かを繋げるハブになるための対バン。そのすべてに共通するのは、彼らがこれまでバンドメンバー以外の外部の音楽家を招いて野音でライブを開催していたのには明確な理由があったということだった。

今回のⅧは、前述した通りバンドメンバーのみ、3人だけで野音の舞台に立った。そこには彼らがもう何の後ろ盾もなく、紛れもないバンドメンバーの音だけでライブができるようになったという「理由」がある。3年半前、バンドの根幹が揺らぎ、それでも立ち上がり、バンドの可能性を限界まで広げ、その可能性の中から見つけ出した「メンバーの音だけで紡ぐロック」というバンドの原点。バンドの今後の可能性という広大な夜空から見つけだした、北極星のようなたったひとつの答えに向かうため、それまでとは一転してサポートを迎えることなくBase Ball Bearはライブを重ねてきた。

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紆余曲折、幾度とないバンドの危機や変化という山を、まるで水たまりを避けるように軽やかに飛び越えながら、Base Ball Bearは名実共にスリーピースロックバンドになった。今回のツアータイトル「Guitar!Drum!Bass!」は、そんな今の彼らの「バンド、楽しい!」モードが端的に表れている。ギターとドラムとベースが織りなすBase Ball Bearの音。ロックバンドのツアータイトルにしてはあまりにもシンプルで、それ故に究極の題目だ。そんなツアータイトルに負けじと演奏するメンバーに密やかな闘志を感じる、そんなライブだった。

全編通して爆音でロックンロールする彼らに、自分の身体が勝手に踊り狂ってしまう。熱く燃えるような曲も、淡いラヴソングも、全て一貫しているのはソリッドで余計な音が無い、どうしようもなくポップなロックサウンドであるということ。デビュー時、いやもしかするとそれ以上に、今のBase Ball Bearは若々しく、瑞々しく、キラキラしている。

ネタバレになるので具体的な曲名には言及しないが、今回のアンコールで披露されたある曲を見て、彼らが3人体制になってからこれまでの時間がフラッシュバックするような思いに駆られた。そしてその直後には、堀之内の結婚・出産という超サプライズな発表もあった。2時間近くの公演の全てが、この先の見えない、でも確実にそこに在るバンドの未来という道を示していた。

アンコールが終わり、去り際に小出祐介はこんな言葉を残してステージを降りた。

いやー、ロックバンドって本当にいいものですね 

これからも、バンドBは止まることなく続いていく。

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