【ライブレポ】Base Ball Bear、7回目の野音は3人組×3の最高のスリーピースバンドが揃う!!音楽が音楽を繋げたその瞬間。【日比谷ノンフィクションⅦ】
10月21日に日比谷野外大音楽堂にてBase Ball Bearのツアー「Tour LIVE IN LIVE ~I HUB YOU~」の一環として開催された「日比谷ノンフィクションⅦ」に参加してきました!3回目のベボベ日比谷野音。今回はこのライブの模様をレポートしていきます。
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今回のツアーは春に開催された「Tour LIVE IN LIVE」のコンセプトだった「3人だけでのツアー」を継承しつつ、対バン形式で行われている。「I HUB YOU」という副題は、Base Ball Bearが「HUB」となって観客が新しい音楽体験やミュージシャンと出会う、「I」と「YOU」を繋げる役目をBase Ball Bearが担う、そんな意味が込められている。
そして彼らの数少ないシリーズライブとなっている「日比谷ノンフィクション」。日比谷野音という、他には無い特別な雰囲気を持つ会場での開催と、「ノンフィクション」な彼らの演奏を体験できる、遠方から駆け付けるファンも少なくない、特別な公演だ。今回の対バンには盟友であるペトロールズ、そしてRHYMESTERが駆け付ける。この2組が揃うのは、まさにBase Ball Bearならではと言えるだろう。
会場入場口には花束も。昨年の日比谷ノンフィクションではベボベのサポートをしていたSANABAGUN.、小出と親交の深いバカリズム、堀之内おススメのまぜそば屋さんの「ajito ism」などから。この前の週に大阪・なんばhatchで対バンをしたキュウソネコカミからも花束が来ていたが、なぜか「ツアーファイナル」となっていたのが面白かった。11月に名古屋も控えていますw
10月も半ばということで、開演の17時半頃には辺りは薄暗く、月も露わに野音を照らし出す。この日の野音は秋晴れ。快晴。入場BGMには3人時代のチャットモンチーの名曲「ハナノユメ」やGO!GO!7188の「ロック」、安室奈美恵の「NEW LOOK」の元ネタのシュープリームズ「Baby Love」と、3人グループの名曲が新旧問わず流れていた。
定刻になると、ペトロールズの3人が姿を現す。3人が思い思いに楽器を鳴らしながら徐々に曲になだれ込んで始まったのは「ホロウェイ」。僕はペトロールズを見るのは初めてだったが、音を極限まで削ることで生まれるアダルティでファンクネス、それでいてジャジーさすら感じる演奏に、一気に引きこまれてしまう。攻撃的なギターリフから一転してグッと音数が減るその緩急にも舌を巻く。「C2」や「光源」期のBase Ball Bearを彷彿させたりもして、彼らの音楽活動がBase Ball Bearにも影響を与えているのだろうか、と思いを馳せてみたり。
小気味良いベースから始まったのは「闖入者」!不穏な曲調に思わず息を飲みつつも、体を揺らさずにはいられないビートに体を持っていかれてしまう。この薄暗くなった野音の雰囲気に彼らの音楽はベストマッチ。Base Ball Bearとはまた違ったベクトルで、彼らの音楽と日比谷野音の雰囲気が重なる。
その後もロックでアダルティでファンクネスでジャジーな彼ららしい音楽を展開していくペトロールズ。印象的だったのが「fuel」で「ヘイ!」というコーラスがサビで入る時に、ボーカルギターの長岡亮介(浮雲、元東京事変、星野源のサポートも務める)が観客に「ヘイって言ってもらっていいですか」と投げかけると、ここまで彼らの音楽を見入ってたオーディエンスだったが、一斉に声を上げる。それに対して長岡が「あ~!!いいですね!!」と笑顔。魅せて聴かせる音楽をやっている彼らだと思っていたが、こういうところもあるんだな!と意外な気持ちにもなる。
最後の曲として演奏された「ASB」では「野音」や「LIVE IN LIVE」をもじった歌詞も飛び出す。今日ならではのニクい演出に、ベボベファンも嬉しい声をあげる。
殆どMCを挟まず、じっくりと曲を聴かせつつも、今日ならではのニクい演出で会場を沸かせたペトロールズ。大きな拍手の中、ステージを笑顔で降りていった。
ペトロールズ セットリスト
1.ホロウェイ
2.闖入者
3.コメカミ
4.KAMOME
5.Fuel
6.ASB引用:主にロックバンドのライブのセトリや全体の空気感をなるべく早くアップするブログ
ここで転換。「RHYMESTER」と大きく掲げられたDJテーブルが舞台中心に据えられる。15分程の時間を経て、DJ JINが音を出すと舞台袖からMummy-Dと宇多丸の2人が颯爽と駆け込んでくる。そして始まったのは「マイクの細道」!!しかしこれはショートバージョン。最後のカウントの部分を繰り返し
熱狂まであと5秒 4 3 2 1
と、これまで以上の熱狂の予感を感じさせるカウントダウンが終わると「時刻は18:25。というわけでこんな曲を!!」と、あのTBSラジオ番組を彷彿とさせる一言で始まったのは「After 6」!!ご存知「アフターシックスジャンクション」のテーマソングにして、まさに宇多丸の言う通り、この時間に歌わない手はない曲だ。
サヨナラSunshine こっからが僕らのFun time
ユウウツにBye bye 騒ごうぜ とっておきのPrime time
この日比谷ノンフィクションがここから更に盛り上がりまくる予感に満ちたフレーズと、どこまでもキャッチーなメロディとリリックがすっかり闇夜の様相となった野音を明るく照らし出す。無論、オーディエンスの我々もテンションが上がらないわけがない。
横ノリが心地よい「ゆれろ」でオーディエンスが一体となって声を上げるとMCへ。
「ペトロールズの後はやりずらい」「こいちゃんもそんなことを言っていた」「ペトロールズは喋らないけど俺たちは俗っぽくしゃべり倒す、これも武器だ」「今日は寒いから曲の時間はそのままに転換とかは巻きでやるよ」「この後Base Ball Bearが伝説を作る」「今夜は伝説になる」と、彼らの言う「俗っぽさ」を爆発させながら会場の笑いを掻っ攫う宇多丸とMummy-D。Base Ball Bearのライブへのハードルも無駄に底上げするなど、2組のここまでのコラボで出来上がった強靭な関係性がMCからも透けて見えてくるよう。
「今日は3組のスリーピースバンドが揃いましたね。我々もマイク2本とDJのスリーピースバンド」と話し、この会場の大半を占めるであろうベボベファンにはあまり馴染みのないDJテーブル、そしてDJ JINの紹介から流れ込んだ「ライムスターインザハウス」。ベボベとRHYMESTERは幾度となくコラボしているし、ベボベファンも彼らがどういうグループなのかは当然分かっているのだが、この曲はRHYMESTER本人たちが改めてRHYMESTERというグループはどういうグループなのかを自己紹介・再定義するような1曲だった。
しっとりと聞かせつつも、コール&レスポンスでバッチリと野音を温めた「ちょうどいい」が終わると、いよいよライブも終盤戦。「Back&Forth」では
まだ Partyは Just begun(まだ始まったばかり)
や
今宵のホストは(誰だ?)
などと、この後出てくるBase Ball Bearへの期待値を高めるようなリリックでオーディエンスを沸かせると、「いまから歌うこの曲はこいちゃんがいつも言っていることの代弁」「『宇多丸草www』とか『こいちゃんwww』なんて俺たちはいつも草を生やされている」「綺麗な日本語で絆を歌う曲」という幾多もの前フリから最後に歌われたのは「余計なお世話だバカヤロウ」!!「バカヤロウ!!」の応酬に会場の盛り上がりもピークに。次に出てくるBase Ball Bearを前に、秋風の吹く肌寒い野音を完全に温めきってRHYMESTERのアクトは終了した。
RHYMESTER セットリスト
1.マイクの細道 (カウントダウンのみ)
2.After 6
3.ゆれろ
4.ライムスターイズインザハウス
5.ちょうどいい
6.Back&Forth
7.余計なお世話だバカヤロウ引用:主にロックバンドのライブのセトリや全体の空気感をなるべく早くアップするブログ
そして15分程度の転換を挟み、いよいよBase Ball Bear。いつも通りXTC「Making Plans for Nigel」で3人が舞台に出揃う。堀之内の4カウントから始まったのはなんと「The Cut」!!!つい先ほど舞台袖に捌けたばかりのRHYMESTERの3人がすぐさま舞台に出てくる。勿論、今回の対バン相手にRHYMESTERが選ばれた時からこの曲が演奏されるであろうことは自明だったわけだけどそれでも1曲目から演奏されるとは思いもしていなかった。嬉しいサプライズだ。「Tour バンドBのゆくえ」「Tour LIVE IN LIVE」そしてこの夏の各フェスでは「ひとりThe Cut」で小出がラップまで担当して披露されていたこの曲だが、原曲通りRHYMESTERが参加して(なおかつベボベのホームで)披露されるのは14年の日比谷野音以来だろうか。宇多丸とMummy-Dの切れ味鋭いフロウと、ここ数年でさらに上達した小出のギター(ちなみに彼のギター、この1年程使用していた白のものではなく、サンバースト色のストラトとテレキャスを足して2で割ったような見たことのないものを新しく使っていた)がうねるよう。
RHYMESTERを盛大な拍手で送り出すと、続いて演奏されたのは「LOVE MATHEMATICS」!本来であればアンコールで演奏されてもおかしくないような2曲が立て続けに演奏されるセットリストからBase Ball Bearがこのライブに懸ける本気が伝わってくる。ライブのホストとして、ゲストに負けないという気概が音に乗って響いてる。出身ライブハウスの盟友であるペトロールズ、それこそ野音で行われた伝説のヒップホップイベント「さんピンCAMP」での彼らの勇姿を見た小出が一時はラッパーを目指したというエピソードもあるRHYMESTER。いずれもBase Ball Bearとは所縁の深いグループであり、そんな2組をゲストに迎えることに彼らも緊張感を持って挑んでいるのだろうか。
いつもなら5分程話す1回目のMCも、ペトロールズを意識しているのか一言だけ「日比谷ノンフィクションⅦ、楽しいんで行ってください」という至ってシンプルな物。しかし、この一言に込められた思いはきっと途轍もなく重いものだったのだろう。そしてこのMCの間に関根が構え直した楽器はベースではなく、彼女の、そしてBase Ball Bearのこの春からの新しい武器である「チャップマンスティック」。ギターとベースの両方の特性を兼ね備えた、まさに今のBase Ball Bearに必要な楽器だろう。関根はこの夏、Base Ball Bearの活動だけでなく、チャップマンスティック奏者としてソロで活動を行っていた。ソロ活動で得たものがこのツアーに、Base Ball Bearの活動に還元されるであろうことは想像していたが、ここでもうチャップマンスティックか!と驚いていると、おどろおどろしいインストが闇夜の野音を包み込む。まるですっかりあたり一面暗くなった野音を丸ごと闇に引きずりこむような、そんなインストを経て3曲目に演奏されたのは「君はノンフィクション」!!岡村靖幸プロデュースで、当時の彼らが不文律として守り続けていた「生音だけで音源を作る」を唯一破って制作され、それ故に披露されるタイミングが少なかった楽曲が、3人だけで、そして新しい楽器を導入して演奏された。初恋の相手が、たまたま見たアダルトビデオに出演していて、その映像をなすすべもなく見ている男、というストーリーと、その感情を表現する言葉に思わず鳥肌が立つ。ミュージシャンとしての小出祐介も勿論僕の憧れの対象だが、言葉を操る者としても、彼は一流の才能を持っている。その才能の片鱗が爆発している1曲だ。
そしてMC。まずは野音恒例の(?)雨降らなかったね話。7回8公演目の野音だが、1度たりとも雨が降ったことがない。「晴れ男、或いは晴れバンドですみませんw」と嬉しそうに語る小出。そして話は今回のツアータイトルでもある「I HUB YOU」へ。「パソコンを繋ぐHUBのように、例えばお客さんとRHYMESTER、例えばお客さんとペトロールズ、もしくはお客さんとこの会場を繋げるHUBになりたい」と語る小出。音楽はコミュニケーションツールでもあって、勿論そればかりじゃつまらないけれど、1つの音楽がキッカケに木の根のように沢山の方向へ繋がっていけるのも音楽の魅力だ。僕だって、これまでにもう彼らをキッカケに岡村靖幸やら赤い公園やらフルカワユタカやら、沢山の、それまで開いていなかった新しい音楽への扉を開き続けてきた。なんなら「ロック」というジャンルそのものに強く惹かれるようになったのも彼らがキッカケと言えるかもしれない。そして今日もまた、今までは見たこともなかった景色を見せてくれている。ずっとずっと彼らは「HUB」で、それが何より僕が彼らの音楽を追い続けてしまう理由かもしれない、と小出の話を聞きながら思いを馳せていたら「まぁ僕が中学一年生の時にハブられてた、っていうのもあるんですけど...。でも同じ言葉でこんなに真逆の意味なのもすごくないですか?」という話には思わず笑ってしまった。
そんなMCを挟んで歌われるのは「SHINE」。「青春の全能感」と「その消失」を歌うナンバーだが、生き生きとこの曲を歌う彼らを見ていると、青春の喪失なんてないんだなとつくづく思わされる。「普通」にも「困難」にも抗って、「現在」の青春を心から楽しむ彼らを見て、ああなりたいと強く願ってしまう。
ライブはいよいよ佳境。「Tabibito In The Dark」~「yoakemae」と、アルバム「新呼吸」の楽曲が立て続けに並ぶ。演奏にも熱が入り、小出のギターソロが野音に鳴り響く。「yoakemae」なんかは、4人時代ですらこのバンド編成で演じきってしまうのかと驚くべき曲だったのに、3人になっても全く遜色なく演じてしまうあたり、彼らにもう演奏できない曲はないのではないかと舌を巻く。きっと3人ともそこには並々ならぬ努力があったのだろうと思うとそれだけでなんだか嬉しくなる。
本編最後に演奏されたのは「ドラマチック」!!肌寒かったはずの野音が、一瞬にして夏模様に。彼らの演奏が、彼らのこれまでの道のりこそが紛れもない「ドラマチック」。なにより、
あぁ、熱くなれるだけ 熱くなりたい
のフレーズに、こみあげるものがあった。
そしてアンコール。黒のグッズに身を包んで登場した小出は、なぜか一人でハンドマイクを持って舞台に上がる。いつもとは違うアンコールの予感にザワザワとするオーディエンス。ゲストとして呼ばれたのはペトロールズから長岡亮介!舞台袖から白のロンTを着ながら出てきたお茶目な彼の姿に、会場から笑いが漏れる。
「真夏の条件」のMVで小出が使用したギターをふたりで御茶ノ水に買いに行ったり、共通の友人の結婚式の披露宴で長岡のギターに合わせて小出が手紙を読んだり(曰く、ポエトリーリーディング)した思い出を話し、「公の場所でこうやってふたりで何かするのは初めて」とした上で演奏したのは「どうしよう」!!!C2に収録された原曲はグルービィでファンクネスなブラックミュージックサウンドに乗せて「2度目の青春」を歌ったナンバーだが、長岡のギター1本と小出のボーカルだけで表現されるこの曲は、原曲とは全く違った魅力がある。例えるならば広瀬すずが出演している青春ドラマの挿入歌のような、そんな純で清い、青い空の下で一筋の風が吹いているような1曲になっていた。製品化希望です...!!
このマッシュアップを思い出したりも。
長岡と入れ替わりでBase Ball Bearのメンバー、そしてRHYMESTERが登場。改めて小出の口から「さんピンCAMP」の話が出ると、「いやいや、僕たちもう友達じゃんか」と宇多丸。これってスゴイことだよなぁ、と。憧れの先輩とその人所縁の憧れの土地で共にライブをして、コラボまでして、「もう友達じゃない」と言われる、って、自分に置き換えて考えたらこの上なく幸せだろうな、と。中学1年の時の小出少年は、友達が0人になり、それがひとつのキッカケになって音楽を始めた。それが今や音楽をキッカケに幾多もの友達が出来、憧れの先輩と共演し、その先輩とも友達になるという、まさしく彼は青春を音楽によって取り戻しているんだなとここでも泣きそうになってしまった。
そんな二組のここだけのコラボレーションはBase Ball Bear「スクランブル」とRHYMESTER「人間交差点」の生スペシャルマッシュアップ!!同じテーマを共有する2曲が、ここで改めて交差する。思えば「Tour LIVE IN LIVE」で「愛してる」を演奏した時に、様々な音楽ジャンルを「愛してる」とコール&レスポンスする場面があったが、「ギターロック」というジャンルの幅を広げつつ、ジャンルの垣根を越えるBase Ball BearのBase Ball Bearらしさが炸裂したスペシャルコラボレーションで、このライブの幕は閉じた。
...と思っていたら、まさかまさかのWアンコール!!「みんなが巻きで色々やってくれたからもう1曲やる時間が出来たよ~」と、RHYMESTERのMCで語っていた「転換を巻きで」という伏線(?)がここで回収される展開に。
最後はBase Ball Bear3人で「祭りのあと」!!!最後の最後は爆発的な盛り上がりを見せて、音楽が音楽を繋げたこのライブは幕を閉じた。
Base Ball Bear セットリスト
1.The Cut feat,RHYMESTER
2.LOVE MATHEMATICS
3.君はノンフィクション
4.SHINE
5.Tabibito In The Dark
6.yoakemae
7.ドラマチック
Enc.
2.スクランブル×人間交差点 生スペシャルマッシュアップ feat.RHYMESTER
W Enc.
1.祭りのあと
引用:Live Fans
Wアンコールが終わり、メンバーが袖に捌けるとき、小出と関根が堀之内を出口で送り出すという小ボケを見せていた。その時の3人の笑顔がとても印象に残っている。思えば一昨年のⅤでは、とてもじゃないが笑顔が見えるような状態ではなかったし、Ⅵは今までにない体制でのライブということもあり、Ⅴとは違った緊張感があった。勿論、今回もゲストを招くホストという役割に緊張を感じさせるシーンもあったが、3人が今までの野音と比べてもどのシーンを切り取っても楽しそうにしていたのが彼らの活動を追っている人間としては何より嬉しかった。ミュージシャンにはいつだって楽しそうにしていてほしい。「80歳まで活動します」という言葉も今回のライブ中に飛び出したが、これからもBase Ball Bearがいつまでも楽しく音楽活動を続けてくれることを祈ってこのレポートを締めさせていただく。
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