最近観た映画の感想

最近観た映画の感想を書きます。以下取り上げる映画一覧。ネタバレ注意。

 

 

 

哀愁しんでれら 

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「パラサイト」と「告白」を足して2で割ったような狂気エンターテインメント。序盤のベタな不孝連鎖展開と甘ったるいラブコメ展開の連鎖はティーン向け映画感が強くて見ててキツかったけど、その中にも若干の違和感は散りばめられていたし、その後物語が展開してシリアスさを増すとどんどん序盤のベタ展開がジャブのように効いてくるからよかった。

ただ、特に大オチに向かう中でハッキリ脚本に難があるな〜と思う点もあったりした。たとえば大オチのあの展開、その前にあんな騒動起こしたあの夫婦にそのまま任せるか?とか。もう明らかに「ハイ、この2人は狂ってしまいました」的な描写のスグ後に一見まともそうな「普通の人」っぽいことを話して、更に「普通の人」っぽい反応までするのはなぜ?とか。どっかで狂気に振り切らないというか。あとあの娘がお弁当をどうしていたのか分かる描写って結局あったっけ。その辺りが個人的には惜しいな~って映画ではあった。

とはいえ人がどこまで狂えるのかを見て楽しむ「狂人エンタメ映画」(勝手に名付けました)としてはかなり優秀。「パラサイト」も「告白」もこういうジャンルだよね。そしてこのジャンルは大体人を狂わすのもまた人、ということを伝えてくれるし、この映画も例に漏れずそうで、それが良かった。

銀魂 THE FINAL

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今回取り上げる映画で唯一頭からっぽにして見れた映画。原作のラストも読んじゃってたし、その原作すらあまりにも風呂敷広げすぎてよく分からん...ってなってたから映画、映像であれば多少分かりやすくなるのかな?と思ったら本当に多少の分かりやすさUpで終わってしまった…。初期から少しずつ伏線張ってたとかならともかく、明らかに終わりが見えてから大量の伏線張り巡らせて、無理無理回収するのは個人的には物語として不細工かなー、と。まあ、そもそも銀魂ってストーリーそのものを楽しむアニメじゃなくてキャラ間の友情とギャグを楽しむ漫画でありアニメなんだけど、だったらそういう構造にしてくれよ、と思うし。頭からっぽにして見れた映画、とは書いたものの、思ったよりもからに出来なかったのもまた事実かなぁ。バトル漫画特有のキャラパワーのインフレとキャラ造形がどう見てもキャプ翼みたいになってたのもスゴく気になった。

でもやっぱり小学生の頃から常に追ってきて散々終わる終わる詐欺してきた銀魂がマジで終わるんだなーと思うとそれだけでウルウルもして。多分第1回の放送から見てるし。この映画と原作でちゃんとキレイに終わらせれたと作者の空知さん自身が思っているのであればそれが「銀魂」という作品にとっても1番良かったと思うし。僕は本編前のあらすじが1番笑ったし、本編後のいくつかのオマケ映像が1番なんだかうるうるしたかな~。

ファーストラヴ

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性犯罪、買春、リストカットモラハラ育児放棄、それらが複雑に絡み合って起きた殺人事件の顛末とそれを追う公認心理師の物語。

今回見た中で一番語るのが難しい映画だった。特にクリエイトの中で起こるモラハラは、ライターとして僅かながらもお金を頂いている自分自身にとっても他人事ではなかった。性犯罪も、家庭環境も、簡単に人の価値観や人生を歪めるという真実をこの映画は描いている。人の一生を変えてしまう罪に対するこの国の軽視について、そしてその先にあるジェンダーという、考えても考えても答えの出ないテーマについてもっと真摯に考えなければと思った。

花束みたいな恋をした

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今回1番喰らった映画。常々「気の合う相手」との恋愛に憧れてきた自分の価値観が根底から覆されたような気分。

麦くんの夢を捨て、社会に迎合していく様は自分の未来のようにも思えて悲しくなってしまったし、その対比として絹ちゃんのあまりにも楽観的な思考とさして努力を重ねない様もううむと思った(まあ、正しくは一緒に見ていた友人の指摘で絹ちゃんについては気付いたのだが)し。それだって例えば、麦くんは仕事が落ち着けば趣味にまた戻っていく可能性もあるだろうし、絹ちゃんだって子どもが生まれれば趣味どころじゃなくなるかもしれない。僕自身の母は僕を生んだっきりそれまで好きだったドラマや映画を見れなくなったと語っていた。家族や仕事に対する責任と趣味や夢への追求は両立できないのだろうかと、僕自身鑑賞中に思わず頭を抱えてしまった。恋愛映画だと思ってたら、最終的に夢を追うと生活が成り立たなくなる社会、やりがいを搾取しながら回る社会についてまで考えてしまう作品構造はこれまで見た事のないそれだった。麦くんがパズトラしかできなくなるあのシーンとか、ラストのファミレスで「”普通”の家庭の幸福」を一緒に目指そう、と絹ちゃんに話すところとか、ちょっと本当に見ていてしんどかった。

映画「モテキ」さながらに物語の至る場所に配置されたカルチャーへの目配せにはニヤニヤしてしまったし、そこがこの映画の大きな間口になっているものの、それはあくまでも記号でしかなく、「ファーストラヴ」同様、この映画も男女間、もっと言えば人同士の価値観の相違をまざまざと見せつける映画。そこがこの映画の一番語られるべき点だとも思う。「究極的に言えば、人はみな孤独」というか、星野源的に言えば「気が合うと見せかけて、重なり合っているだけ」というか。恋人と一緒に居ること自体を幸福とする男性と、恋人と一緒にしていることに幸福を感じる女性。男性と女性、田舎育ちと都会生まれ、父の職業、いやもっと言えばすべての人と人の間にある明確な価値観や思考から生まれる「隔たり」とその差から生じるズレについて、考えれば考えるほど答えが分からなくな作品だった。もう二度と見たくないという思いと、何度だって見たいという相反する思いが今も渦巻いている映画。

REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に

www.youtube.com ※この予告は今年公開予定の新劇場版最終作のもの

1997年3月15日公開の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』と1997年7月19日公開の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Airまごころを、君に』、その両作を組み合わせて1998年3月7日に再公開された、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』本来の形ともいえる本作品。本来であれば1月23日から公開されるはずだった「シン・エヴァ」を盛り上げる一種のイベント的にリバイバル上映されていたので鑑賞。

アニメ版の総集編(それも時系列はバラバラ)の「DEATH (TRUE)2 」そして公開当時から賛否両論巻き起こったと聞いている「Air / まごころを、君に」、大筋の流れは知っていたものの、やはり改めて一通り見たらその凄みは相当なものだった。

Air」における有名なシンジの自慰シーンとか、アスカの戦闘時の表情がおおよそヒロインのそれでは全く無い点だとか、「まごころ~」におけるL.C.Cに還元されていく人々、そしてラストの首絞め→気持ち悪い、に至るまで、いわゆる"普通"のアニメの価値観で考えればここまで列挙した要素だけで相当狂っているのだが、やはり「まごころ~」の人類補完計画発動後の心理描写と実写パートには驚かされた。サブリミナルのように素早いコマ割り、映画を見ている自分自身を鏡のように映し出す実写描写。すべてシンジの心理に根ざしたものであり、簡単に理解できるものではなく、エヴァがこれまでずっと考察されてきた理由がわかる。

新世紀エヴァンゲリオン」のタイトルの通り、この映画は世紀末の空気感の中で見たほうが面白いのだろうな、とも思った。混沌を極め、世界の終わりが迫っている(かもしれなかった)緊張感の中、文字通り「世界の終焉とはじまり」を描いたこの映画は、世紀末に公開されるべくして公開された映画だと思う。「新劇場版」との対比して見ても面白かった。僕が新劇場版からエヴァにハマったクチというのもあるのだろうけど。「序」「破」はもちろん、あんなにみんなに忌み嫌われている「Q」も、これに比べたら極上のエンターテインメント映画だと思う。少なくとも「Air/まごころを、君に」は、エンタメ映画とは言えない極めて内省的で実験的な作品。これが大ヒットした当時の社会の空気を体感したかった。あと2時間34分はなげぇよ…って思ってたら「シン・エヴァ」も2時間34分だとか。意図的に同じにしたのだろうけど、なげぇよ…。

 

エヴァ以外は全てイオンシネマの1Dayパスで見ました。1日4本は結構しんどいけど、楽しかったし充実感も凄かった。また機会があればやりたいな。今年は見たい映画たくさんある(ヤクザと家族、シンエヴァ、コナン劇場版、ゾッキ、騙し絵の牙、シンウルトラマンなどなど...)ので楽しみ。