実写版「銀魂」は「実写化問題」への解答である

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実写版「銀魂」見てきました。

今、何かと「漫画・アニメの実写化」って話題であり問題になっているじゃないですか。今回の「銀魂」実写化もその例に漏れず、公開前から不安視する意見が散見されていました。そもそも「漫画・アニメの実写化」はハードルが高いはずなんですよ。物語の推進力になる脚本も目新しさがどうしても無くなってしまうし、原作ファンは原作通りのモノを求めるし。漫画やアニメにして映える服装を実写に置き換えるのは、下手をするとただのコスプレ映画に成り下がりかねないにも関わらず、原作ファンはディティールに拘る。こういう雁字搦めの中で制作しなければならない。「じゃあ作らなきゃいいじゃん」と言われれば、その通りな気もするんだけど。

今回の「銀魂」、徹底して原作ファンが見ることを前提に作られています。服装は勿論、台詞からなにまで徹底的に原作に忠実。銀魂が他の作品と比べて違うところは、漫画原作をアニメが喰ってしまっているところで、実写版の今作ではそのアニメの「雰囲気」すらも実写化しています。

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これらの画像は今回の実写版でも扱われた「紅桜篇」「カブト狩り編」のアニメ画像なんですけど、本当にこのまんまです。動きから体勢からカメラワークから、すべてまんまです。

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この画像もう一回貼るけど、普通にしてたら違和感まみれじゃないですか。日本人の顔に銀やらオレンジやらの髪だったり、やけにカチコチに見える服だったり、本来なら実写化に絶対に向いてないようなディティールのはずで、並の監督だったらここをもう少し改変してしまいそうなもんなんだけど、ここを一切改変せずに見た目も徹底的に原作通りに作り上げていて。

これはひとえに監督である福田雄一の手腕によるものでしょう。彼の代表作「勇者ヨシヒコ」シリーズなんかにも言えることだけど、最早コントの世界なんですよ。で、そのコントっぷりと「銀魂」の世界観は見事に一致してしまう。あとはメタ的なことも風刺っぽいことも徹底してやり続けてきた銀魂だからこそ、実写でも好き勝手できる。アニメも何度となく終わる終わる詐欺を続け、蓮〇に本当に怒られてDVDの収録が飛んだり。そういうのにももうファンは馴れっこなんですよ。だから小栗旬菅田将暉と橋本環奈使って実写版撮って大コケしたとしても「またいいネタになったねwww」くらいのもんで。ファンが映画を受け入れる体制が結果として出来ていたのも大きい。だから何してもいい状態で福田さんは制作に取り掛かることが出来た。

逆に上手く変えてきたな~と思ったのは、ギャグの入れ込み方。どうしても原作通りにやるとシリアスなモードが続くんですよ。でもそれじゃあ映画「銀魂」として「銀魂」しなくなってしまう。だから原作には無かったようなネタを盛り込むんだけど、その新しく作られたネタも完全に「銀魂」してるんですよ。過去の名作や関係のない他局の番組(今作はテレ東主導で作られたみたいです)を徹底的にイジるスタンス。これこそが銀魂!!ということを徹底的にやる。あとは武市変平太役の佐藤二郎と平賀源外役のムロツヨシに関しては全く役を演じる気が無い、彼ら自身のそのまままのテンションで出てくるんだけど、これがものすごく作品世界と合っているんですよね。これも2人を徹底的に理解して動かしている福田監督ならではというか。

ここまで長ったらしく語ってきましたけど、要は「作品を隅から隅まで理解した上で、雰囲気すらをも映像化してしまう」ということに徹底することこそが漫画・アニメを実写化した時に炎上しないための最大の武器になる、ということでしょうか。勿論、何を目掛けて制作するかにもよるのでしょうが、原作ファンを取り込みたいなら間違いなくこの作り方は強いですよね。

逆に言えばこの作品、銀魂の世界観や趣旨、今までの過程を理解して見ないと全く楽しめない気がします。一見さん完全お断りシステムというか。「銀魂」という一大プロジェクト...というかもはや一大ギャグの一部としての実写映画ということを踏まえてみることを前提に作られている。そういう意味では「映画」としてはもしかすると最悪の部類なのかもしれません。

原作も一通り通ってきた僕には、この作品は期待値を余裕で上回る傑作でした。是非劇場でご覧ください。