吉澤嘉代子「お茶会ツアー 2019」ファイナル 岐阜Club-G公演を見た!
吉澤嘉代子が定期的に開催している「お茶会ツアー」。
普段は演劇を交えた構成のライブを行っている吉澤嘉代子が、お客さんと近い距離で触れ合うことをテーマとして行われるこのツアーが2年振りに開催され、僕は三重、岐阜の2公演に参加した。
上記のnote記事を読んでいただければ分かっていただけると思うが、元々ツアーの中盤で開催される予定だった岐阜公演は台風19号の影響で延期となり、実質的なファイナル公演となった。この記事ではそんな岐阜公演をレポートしたいと思う。
今回のお茶会ツアーは伊澤一葉によるピアノと吉澤嘉代子のみというシンプルな編成。故にステージはこザッパりとしている。古めかしい椅子や、吉澤愛用のカバン、テーブルライトなど、吉澤嘉代子のライブならではな小物も並べられている。舞台頭上に吊り下げられた電球が儚げな雰囲気を醸し出す。定刻を5分程過ぎた頃、客電が落ちると共に吉澤と伊澤が揃ってステージに上がる。いよいよお茶会ツアーファイナル公演の幕開けだ。
ピアノの軽やかな音色から始まったのは「月曜日戦争」。音源ではキラキラとしたシンセの音や、アップテンポのイメージが強いこの曲も、今回は落ち着いた「聞かせる」楽曲として変化して届けられる。
「こんばんは!吉澤嘉代子です」。彼女お決まりの挨拶とファイナル公演への意気込みを語るMCを挟んで届けられたのは「綺麗」。そして続けざまに「手品」と、吉澤嘉代子の「王道キラキラソング」が立て続けに歌われる。「綺麗」と「手品」の合間、本来ならばMCが挟まれない箇所だったのが、彼女もファイナルで熱が入っているのか思わず話し出してしまうシーンも。
「手品」が終わると突如として「アメリカ横断ウルトラクイズ」のBGMと共に「吉澤嘉代子検定!何級?」と題したクイズ大会が始まる。吉澤嘉代子に纏わる3択の挙手制クイズで、正解すれば「ルマンド」がプレゼントされるというもの。クイズは全5問、「地元・川口の行きつけのお店はどこ?」という問題から「吉澤嘉代子のマイナンバーの下一桁は何?」に至るまで、実にバラエティの富んだ内容だ。ライブというよりはさながらファンと歌い手の交流会、ファンクラブツアーのような形や雰囲気でワイワイとおおらかでなごやかな時間が流れる。全5問のクイズが終わると更にそのクイズに正解した人の対抗で「吉澤嘉代子ゲーム」が始まる。「せんだみつおゲーム」を吉澤嘉代子に置き換えただけというシンプルなゲームだが、この日はかなりハイレベルな戦いが繰り広げられ、全く決着がつかない展開となり、最終的にはじゃんけん大会となったのもこの日ならでは。
「吉澤嘉代子ゲーム」が終わると「私が楽曲提供した曲を2曲歌います」と話す吉澤。まずはYUKIの「魔法はまだ」。吉澤の作曲した曲にYUKIの詞が乗るこの歌、原曲はベースのリズムに怪しげな音色やコーラスに透明なYUKIの歌声が乗っかる怪しい雰囲気なのだが、今回吉澤が歌ったアレンジでは陽の光のような暖かさを感じるオリジナルアレンジだったことが印象深い。
続けざまに演奏されるのは私立恵比寿中学に提供された「曇天」。こちらは原曲を歌うエビ中がかなり吉澤に寄せた歌唱をしていることもあり、かなり原曲に近い印象で歌われていた。ヒリヒリとした詞世界は嘉代子ワールドの真骨頂。会場中が彼女の歌を見つめている。
「どちらまで?」「岐阜 Club-G前まで行ってもらえるかしら?」「かしこまりました。岐阜の“地獄”前までですね。安全運転で参ります。出発進行。」
「スナック嘉代子」のコーナーがひと段落すると、「夏から秋への曲を」と言って歌われたのは「よるの向日葵」。そして名曲「残ってる」へ。
「残ってる」は、シングル盤に収録された「残ってる(ピアノと歌)」のアレンジに近いモノになっていたことが印象的。この曲はどんなアレンジでも儚く、切なげで、それはこの曲が持つ求心力であり、吉澤の歌唱があってこそのことだろう。
MC。改めて伊澤一葉というミュージシャンと各地の土地を回れたことに感謝する吉澤。そしてこれからも歌い続けたいと話すと会場からは大きな拍手が鳴る。吉澤嘉代子のような歌い手が、日本の音楽シーンを支え続けてくれたら、きっとそれはシーンにとって大きな大きな糧になることだろう。なにより、僕にとって特別な存在の吉澤嘉代子という歌手がこうしてこれから先も歌い続けることを宣言したことが、僕はどこまでも嬉しかった。
吉澤が「残り2曲。特別な曲を歌います」と語り、始まったのは「movie」。
大切な者を送りだすために制作されたこの曲は、このライブが終わると、それぞれ元の「日常」に戻っていく僕たち観客への愛を込めた光のように鳴っていた。
そして本編最後に鳴らされるのは「一角獣」。
儚くもうつくしい余韻を残しながら、ライブ本編はゆっくりと幕を閉じた。
会場に鳴り響くアンコールの手拍子。吉澤と伊澤が再び舞台に上がる。
お茶会ツアーでは定番となった入場時に配られる「冊子」。今回の冊子にはその中の1ページに「美少女」の歌詞が記載されている。「『美少女』をみんなで歌いたい」という吉澤の願いでこの歌詞が冊子に掲載されたとのことで、アンコール1曲目は「美少女」。
そして未発表の新曲としてカントリー調の「抱きしめたいの」をプレイ。自分を信じられるのは、自分を肯定できるのは自分自身だと歌うこの曲は、今を必死に生きているすべての人に響くうつくしい歌。彼女にとってもきっと大切な歌になることだろう。
一度ステージを降りたものの、2度目のアンコールとして三度ステージに上がった吉澤。ダブルアンコールは他の会場ではあまり行われなかったようで、これもファイナルならではのことなのだろう。「何歌う?何がいいですか?」と観客と伊澤に問いかける吉澤。伊澤が出てくることは予定していなかったのか、伊澤がコードをその場で確認する珍しいシーンも。そんな相談の上で演奏されたのは「ミューズ」。