絶対に推していきたいクリープハイプの名曲10選!
今回はクリープハイプの名曲10選です。
現在、3年ぶりとなるホールツアーを開催中、そして5月にはベスト的な選曲が予想される4年ぶりの日本武道館公演を控えているクリープハイプ。今回はそんなクリープハイプの「温かさ」を感じる名曲10曲をご紹介。社会や音楽シーンへの憎しみがなにかとフューチャーされる彼らだけど、その裏に隠されている彼らのあたたかさが僕は大好きで。クリープハイプを知っているあなたも、クリープハイプを知らない君も、ぜひクリープハイプを本記事を通して堪能してもらえたらと思います。
憂、燦々

クリープハイプの出世作。そして筆者である僕が一番クリープハイプで好きな曲がこの「憂、燦々」。「愛しさ」も「嬉しさ」も「優しさ」も全部人が好き合うためには必要な要素だけど、同時にそれだけでは上手くいかなくて。かといって「憎しみ」も「悲しさ」も「厳しさ」もそれだけでは空しくなるだけで。憂いがまるで陽の光のように燦々と降り注いでいるのではないかと思ってしまうほどに、人を好きになるのはどうしてこうも切ないのだろう。そんな気持ちが込められたこの曲は、何度聴いても僕の心をあたたかく、でも締め付けるよう。
この記事にもチラッと書いたけど、当時気になっていた女の子との思い出の曲でもあるんですよ。結局そういう曲のほうが心に突き刺さった棘になってしまうというか、どれだけ曲としてクオリティが高かろうが、世間的にヒットした曲だろうが、そんなことは関係なくて、なにかしらの強い思い入れがある曲こそが、他のなによりもその人にとってかけがえの無い1曲になるのだ。
寝癖

クリープハイプのビクターベスト盤騒動後初めてユニバーサルからリリースされた4th シングル。だが、そんなことは関係なくこの曲は名曲だと自信を持って言いたい。自分や相手の気持ちを髪の毛に喩えて、はねたり、真っ直ぐだったり、曲がったり、老いて白くなったり。そんな自分のなりたいもの・行きたい気持ちとは裏腹になってしまう気持ちだけど、あなたにはずっと傍にいてほしいと願う歌詞のあたたかさ。
エロ

夏らしい爽快なロックナンバー。性的な描写が印象的ではあるものの、それがこの曲の本質ではない。この曲は応援歌というか、人を鼓舞するために作られた曲だろう。彼ら自身、前述した通り「ベスト盤」「移籍」を経ている。この曲がリリースされたのもまさしく騒動の余波が消えていない頃だった。
だってだってだってだってそれなら
どうせ最後はそうなるんだから
すぐ出来ることをしよう
もうアレしかないし
人を鼓舞するために、と書いたが、本当は「自分を鼓舞するため」だろう。どうしたって「逆境」に立たされた自分達を本当の意味で「鼓舞」できるのは自分しかいない。或いは、逆境に立たされた自分たちこそが人を応援出来る。そういう意味がこの歌には込められているのではないだろうか。
5%
アルコールの比喩が可愛らしい、アルバム「世界観」収録の名曲。5%でも構わないから信じてもらいたい、というのは切実な願いのようで、その彼らならではの人間らしさがあたたかく僕の心に注ぎ込まれるようでもあり。
おばけでいいからはやくきて
現在絶賛放送中のNHK「みんなのうた」で放送中のクリープハイプの新曲。AC部の映像が話題だけど、歌詞もなかなか攻めてるなぁと。母親とはぐれてしまった子供の不安な感情を描いているんだけれど、たとえば付き合っていた男女の歌にも聞こえてくるし、友人同士の歌とも解釈出来て。結局、人間関係に胡坐をかいて、別れなんて訪れないと考えているような人が世の中にはきっと沢山いて、僕自身そういう人たちを沢山見てきたんだけど、そういう人っていざ急に自分の前から人が居なくなるとおろおろと、それこそ母親を見失った子供のようになってしまう。「人間関係をサボるな」という、クリープハイプから我々へのメッセージ。
ボーイズENDガールズ
インディーズ時代の名曲が「関ジャム」でも話題の名プロデューサー蔦屋好位置のプロデュースによって再レコーディングされた3rdアルバム収録曲。クリープハイプの楽曲の中でも特に「純粋度合」が高い楽曲というか、喩えるならば檸檬味の炭酸飲料のような、甘酸っぱくてパチパチするような気持ちになる曲。
シャンプーの匂いが消えないうちに
早く会いに風が吹いても大丈夫だよ
おんなじ空を見ていたい
今日もおんなじ空を見上げたい
あなたとあなたとあなたとあなたとあなたと
少しでも良い状態で「君」に会いたい、同じ時間や同じ景色を共有したいという、人が恋している時の純粋な恋心がそのまま描かれている。男性も女性も、誰もが共感できて、ちょっぴり切ない。そんな1作なのではないだろうか。
ウワノソラ

大好きと大嫌いの間でのたうち回ってる
という歌詞が印象的なインディーズ時代の名曲。「好き」も「嫌い」も紙一重というか、簡単なことで人は人を嫌いになるし、好きになる。その紙一重の「間」でそれぞれがもがくからこそ、人間関係は奥が深く、面白くて、面倒臭い。
尾崎世界観の声を「煩い」「癇に障る」みたいな評価をしている人を結構見かけるけど、彼の作り出す世界観はあの声だからこそ成り立っているというか、例えば同じハイトーンボイスの[Alexsandros]の川上洋平がこの歌を歌っても、余りに彼の歌声は真っすぐ過ぎるというか。尾崎世界観のハイトーンボイスは彼の人生が反映されているような、ハイトーンの中に憂いや悲しみ、憎しみ、その先にある自己顕示欲というか、認められたくて仕方ない気持ちがありありと声に込められている。彼にしか歌えない、彼にしか出せない声。
社会の窓

クリープハイプの代名詞的な1曲。「オリコン7位」のくだりとか「余計なお世話だよ」のくだりなんかが良く取り立てられてがちなんだけど、この曲ってフィクショナルだなぁと歌詞を読むと改めて思ったりもする訳で。
感情の波を掻き分けて愛憎の海を泳いでる
凄く大好きだったのにあのバンドのメジャーデビューシングルが
オリコン初登場7位その瞬間にあのバンドは終わった
だってあたしのこの気持ちは絶対シングルカット出来ないし
誰にでも出来る昼の仕事と誰にも言えない夜の事
どこにも行かない悲しみとどこにも行けないあたしの事は
アルバムの7曲目位で歌われる位がちょうど良い
だからあたしのこの気持ちは絶対シングルカットさせないし
「クリープハイプが好きな”普通”のOL」の気持ちを物語に落とし込んだこの曲、シングルカット出来ない”普通”の悲しみとか虚しさが止まらない。”普通”な我々が聞けば聞くほど、心を締め付けられてしまう。
二十九、三十

「エロ」と両A面でリリースされた、こちらも応援歌的な側面が大きな1曲。
いつかはきっと報われる
いつでもないいつかを待った
もういつでもいいから決めてよ
そうだよなだから「いつか」だ
前述した通り、当時の彼らはまさに逆境の中でもがいていた。勝手に自分たちのベスト盤をリリースされて、世間であることないこと騒がれて。「メジャーデビューすれば今までの音楽活動も報われる」と思ってたのに、報われるどころか信じた大人に裏切られて。勿論、あの騒動を踏まえずにこの曲を評価することは出来るけど、やはりリアルタイムであの騒動を経験してこの曲を聴いた僕にとっては、どうしたって重ね合わせて聞いてしまうし、重ね合わせてしまうからこそよりこの曲の重みが伝わってくる。
イト

ホーンセクションが鳴り響く、クリープハイプの新機軸。今までだって弾き語りや、キーボードのサウンドなど、バンドの音以外も巧みに使ってきた彼らだけど、ホーンセクションは今までになかった要素。そのせいもあってクリープハイプ史上最もポップな作品になった。でも歌詞のキレは相変わらずで。自分たち(公式としては映画のタイアップなので「映画の登場人物」ということなのだが)を「操り人形」に喩えて、誰かの「意図」によって動かされる自分たちの人生を嘆きつつも、それでもいつか「意図」ではな「運命」だと心から言えるように全身し続ける様を描いている。こんなポップな曲を作ってもなおこんな歌詞を書いてしまうあたり、どこまでいってもクリープハイプはひねくれていて、でもその様がどうにもこうにも僕は好きなのだなぁと。
過激で、下品で、怖くて。でもあたたかくて、やさしくて、抱きしめられているような。そんなDV彼氏みたいな音楽を鳴らし続けてるクリープハイプ。不器用だなぁと思うし、めんどくさいバンドだとも思うけど、それが人間らしいし、それでいいとも思ってる僕も又、めんどくさい人間で、だからこそ彼らに惹かれたのだと思う。
武道館、僕は行けないけど、成功しますように。