#ベストコミック2017 書店員が選ぶ今年の”個人的”マンガ大賞
あけましておめでとうございます!!おせぇ!!年始恒例! #ベストソング2017 に引き続き、#ベストコミック2017 です!
私、5年間書店で働いてまして。特にマンガをよく読むのです。そんな書店員の視点から2017年のベストコミックをご紹介。
審査基準は初刊が2017年内に刊行されたもの。それだけ。
15作品+スポットライト(初刊がギリギリで昨年のものなのですが、めちゃくちゃ推したい作品)をチョイスしてみました。
それでは15位から!どうぞ!!
15.よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話
よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話 (KCデラックス ヤングマガジン)
- 作者: いしいさや
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/12/20
- メディア: コミック
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とある宗教の二世信者として育った、「さやちゃん」という女の子の「普通」が「普通」じゃなかったころのお話。学校の応援合戦も、中学生ならではの小さな恋心も、「宗教」を理由に赦されない「さやちゃん」の幼少期を描く。「親」という(良くも悪くも)絶対的な存在によって、自分の意思を捻じ曲げられる、あるいはそもそも意思なんて存在しないから上手くコントロールされてしまう、それが正しいのか正しくないのかの判断すらつかない。故に起こる悲劇。普段知ることの出来ない「宗教」の裏側を見ることが出来る。正しさや心の拠り所は人によって全く違うのだと改めて痛感させられる作品。全1巻。
14.犯人の犯沢さん
名探偵コナン 犯人の犯沢さん 1 (少年サンデーコミックス)
- 作者: かんばまゆこ,青山剛昌
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/12/18
- メディア: コミック
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黒の組織のボスの正体が発覚し、同時に長期休載が決定した名探偵コナン。連載開始から23年(僕と同い年)を迎えて、いろいろな意味で節目を迎えつつある同作品だが、これまでスピンオフ作品が作られてこなかった。23年目にして初めて作られたスピンオフ作品は、名探偵コナンにおける「犯人」をフォーカスし「犯罪都市・米花町」という視点で描かれる。...なんて描くとコナンファンから「おい馬鹿にしてんのか」と怒られそう(原作者の青山先生も最初は「おま...フッザ!!」と思ったとかなんとか)だけど、これを描いてる人は多分本当にコナンファン。大筋のストーリーやギャグもバカバカしくて面白いけど、小ネタがめちゃくちゃ楽しい。原作6巻収録の「骨董品コレクター殺人事件」のアレとか、同じく6巻の「消えた死体殺人事件」のあの人とか...。原作を知っていれば「うはwww懐かしいwww」ってなる小ネタが満載。ギャグも俊逸。黒タイツの人間が人を殺すために上京して、生活していくために努力してる姿のバカバカしいこと。コナンファンにこそ読んでほしい1作。既刊1巻。
13.川柳少女
マガジンで連載中の青春日常系4コマ漫画。なんでも五・七・五で言いたいことを伝えてしまう雪白七々子は、元不良少年の毒島エイジや先輩の片桐アマネと3人で文芸部に所属。やさしくて楽しい日常を過ごす。本当にホッコリする1作。七々子とエイジと焦れったい関係性もキュンキュンするんだけど、3人を中心に広がっていく人間の輪が本当に高校生活の日常らしくて暖かい気持ちになる。主人公が五七五でしか喋らないというある種めちゃめちゃ邪道な作品の筈なのに、この作品が日常系コミックとしてド王道を突き進めているのは、喋りだけじゃなくて主人公が様々な顔、リアクション、その他視覚によって様々な感情表現をするという、極めて漫画的な手法をストーリーに組み込んでいるからだろうか。「日常系4コママンガ」ではトップクラスにオススメしたい作品。既刊3巻。
12.透明人間の骨
感情的で暴力を振るう父、無関心な兄、耐え忍ぶ母。崩壊しきっている家庭の中で、ある日透明になれる術(すべ)を身に付けた来宮花。花は、その術を利用して父親を殺害する。家庭に「普通」が取り戻された一方で、花は「殺人者」という十字架を背負い続けることになる。事件がバンバン起きる訳じゃないけど、主人公が自分の犯した罪に苛まれるのと同じように、読んでいくうちにどんどん真綿で首を締め付けられていくような気持ちに、作中の主人公も、そして読み手もなっていくのがこの作品の魅力。「普通」に生きていくことの難しさ、十字架を背負いながら生きることの辛さを考えさせる佳作。既刊2巻。
11.からかい上手の元高木さん
からかい上手の(元)高木さん 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
- 作者: 稲葉光史,山本崇一朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/12/12
- メディア: コミック
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アニメもはじまり、一大ブームメントと言っても過言ではない「からかい上手の高木さん」。本編も読むたびにムズキュンというか、はじまりそうではじまらない恋愛、それも中学生のあの感じが絶妙で。今一番続きが気になるコミックのひとつなのだけど、こちらはそれから何年も経過した、遠い未来のおはなし。高木さんは"元"高木さんになり、高木さんのからかいイズムを継承しつつも、もうひとりの「あの人」のからかわれ上手っぷりも受けついている娘・ちーちゃんを加えて、さらに賑やかでたのしいホームコメディ。ちーちゃんの可愛さ、大人になって美しくなった高木さんも魅力的。「からかい上手の高木さん」と合わせて読めばムズキュン必至!!!既刊1巻。
10.花部長(52)と心乃ちゃん(17)
花部長(52)と心乃ちゃん(17) (1) (角川コミックス・エース)
- 作者: 吟華
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/04/10
- メディア: Kindle版
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趣味無し・バツイチ・持病持ち。そんな人生暗黒面のフォースを抱えたサラリーマン、花誠之介(名前の癖がスゴイ)は、ある日ゲーセンで不思議な少女・心乃ちゃんに出会う。エキセントリック、だけど一瞬見せる彼女のあたたかい笑顔や花ちゃんを包み込む大きな心にグッとくる。世代の差があるからこそ現れるコミュニケーションの面白みが存分に発揮された一作。既刊2巻。
9.ロッタレイン
仕事・恋人・母親…全てを失った一(はじめ)の前に現れたのは、14年前 自分と母を捨てた父と、初めて会った血のつながらない義妹・初穂。初穂の母と弟とともに長岡で一緒に暮らすことになるが、家族を乱されることを恐れる初穂は一に敵意を剥き出しに。複雑な関係ながら〈家族〉になろうと歩み寄る一だが、少女と女性の間を行き来する美しい初穂に心奪われ……衝動と愛情が交錯する、ひと夏の儚い恋の物語。
血の繋がらない妹との禁断の恋を、大ベテラン・松本剛独特のタッチで描く。長岡ならではのゆったりとした情景と、一の心の機微が繊細に描かれる。地味だけど、ゆったりと心に深く溶け込んでいくような感覚のある1作。全3巻。
8.ROUTE END
ROUTE END 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 中川海二
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/06/02
- メディア: Kindle版
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特殊清掃。それは人の死が日常となる職業。一人の特殊清掃業者の青年が、「END事件」と呼ばれる連続猟奇殺人事件に足を踏み入れ…?生と死の在り方を問うサイコ・サスペンス!
連続猟奇殺人と、それを追う刑事と、特殊清掃業を営む青年の話。絵は決して上手くないのだけれど、続きが気になって仕方なくなるストーリー展開に思わずのめり込んでしまう。特殊清掃業という職業が持つ異様性、死とはなんなのか、生きるとはどういう事なのかを深く考えさせられる作品。既刊3巻。
7.青のフラッグ
高校3年生…将来の進路に悩む時期に、出会った3人の男女。彼らを待つ、甘く、苦しく、切ない日々。青春漫画の名手が贈る"純"愛物語、開幕!!
Twitterでもトレンド入りするなど、話題になったこの作品。最初こそ、「ああ、よくある三角関係か」といった話が続くのだけど、ある話を境に事態は思わぬ方向に。思わず読んでいる僕達が「あー!!そういうことだったのか...!!」と唸ってしまうような。伏線もバッチリ効いている。2017年ならではの、今までには無かった新しい形の、でも絶対に今の日本に必要な恋愛漫画。何が起きるのかは貴方の目で確認してみて下さい...!!既刊3巻。
6.モブ子の恋
目立たず、出しゃばらず、慎ましく。そうやって世界の脇役(モブ)として暮らしてきた田中信子は、同じバイト先で働く入江くんに密かに思いを馳せている。主役になれない脇役系女子の、ささやかな恋の行く末は...?
マンガの主役ってどうしたって「主役」な人達ばかりで、本質的に共感出来ない部分がある漫画も沢山あるんだけど、このマンガは本当に「モブ」っぽい人が主役で。だからこそ共感できる瞬間がたくさんある作品。既刊1巻。
5.お惣菜屋とOL
お惣菜屋とOL 1 (リラクトコミックス Hugピクシブシリーズ)
- 作者: 吾平
- 出版社/メーカー: フロンティアワークス
- 発売日: 2017/01/14
- メディア: コミック
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お惣菜屋とOLの世代差恋愛。平凡なOL、楪(ゆずりは)の毎日の楽しみは、近所の美味しいお惣菜屋さんでランチを買うこと、それから、店主の田島さんに会うこと。大好きな彼の気持ちを知りたい、そんな楪の気持ちは日々募るばかり。少しずつ進展していくじれったい恋に胸キュンな一作。
世代差恋愛はなかなか上手くいかないのが世の常で、だからこそじれったい関係にドギマギムズキュンしてしまう。既刊2巻。
4.来世は他人がいい
極道の家で生まれ育った女子高生・染井吉乃と、その婚約者・深山霧島を描く物語。関西最大の指定暴力団直系の染井組と関東最大の指定暴力団直系の深山一家が兄弟盃を結んだことから、染井組の組長の孫娘である吉乃は、深山一家総長の孫・深山霧島と婚約することに。深山一家で暮らすことになった吉乃だが、霧島はかなり危険な男で……。
正直、設定自体はよくあるものはあるものの、そこは「春の呪い」などの傑作を世に送り出してきた小西明日翔なだけあり、見せ方をだけでどんどん読ませてしまう。ギャグっぽさもありながら、ヤクザ的な抗争によるシリアスさも兼ね備える、他にはない1作ではないだあろうか。既刊1巻ながらおススメしたい作品。
スポットライト.スローモーションをもう一度
1巻が昨年の11月に発売されているのですが、その時点で僕はまだこの作品に触れておらず。本当に今年一番ハマったマンガのひとつなので触れない訳にもいかず。「スローモーションをもう一度」。80年代の音楽、文化にフューチャーを当てつつも、それを介して大滝くんと薬師丸ちゃん、2人の純愛が本当に「ムズキュン」で最高。「カルチャー」の意義を証明する、唯一無二の作品。音楽ファン、カルチャーファンにこそ読んでいただきたい1作。既刊5巻。
3.恋はネタ作りのあとで
- 作者: 寺岡さこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/06/19
- メディア: コミック
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今年はキング・オブ・コントで「にゃんこスター」が一躍有名になった。彼らの特徴は男女コンビでかつ、カップルであるという所だけど、この「恋はネタ作りのあとで」はまさしく「リアルにゃんこスター」。それまではピン芸人だった築山かおるはあるきっかけでその後の運命を変える相方である晴巳と出会い、漫才を始めることとなり...といったストーリー。お笑い芸人モノの漫画、というのもなかなか他には見たことがないが、劇中のネタもしっかり練られていて思わずクスリとしてしまう・仕事と恋の狭間でもがく両者にも注目。全2巻。
2.血の轍
「惡の華」や「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「スイートプールサイド」など、人間の心のドロドロを抽出したような傑作を世に放ち続ける鬼才、押見修造の最新作は「母」がテーマの1作。中学2年生の長部静一は普通の母親だと思っていた母・静子の「狂気」を目にしてしまう。母親への疑念と愛情の狭間で狂瀾の奈落へ堕ちていく。
サスペンス調かつ、人の心の機微を巧みに描く様は流石押見修造といった感覚。2巻がつい先日発売されたが、思わず「うわぁ…」と声に出てしまうような展開だった。2018年最注目作品。既刊2巻。
1.零落
僕の #ベストコミック2017 は浅野いにおの「零落」。とある漫画家の日々を追うこの作品は、浅野いにおの代表作である「ソラニン」「おやすみプンプン」、あるいは連載中の「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」、いずれとも全く違う、浅野いにおの心象風景がそのままマンガになったような1作。ストーリーに大きな起伏がある訳でも無い、淡々と過ぎていく漫画家の日々を描きながらも、その「日常」の中にある確かな違和感、不満感、自己承認欲求。そんなものが絡み合った先にある「絶望」と「希望」。淡々と日常が描かれているのに、地獄の底みたいに重くのしかかる感覚。いや、文章では伝えきれない魅力がたしかにこの作品にはあるのです。絶対に読んでほしい作品。全1巻。
と、言うわけで、以下のようなランキングとなりました!
1.零落 浅野いにお
2.血の轍 押見修造
3.恋はネタ作りのあとで 寺岡さこ
スポットライト:スローモーションをもう一度 加納梨衣
4.来世は他人がいい 小西明日翔
5.お惣菜屋とOL 吾平
6.モブ子の恋 田村茜
7.青のフラッグ KAITO
8.ROUTE END 中川海二
9.ロッタレイン 松本剛
10.花部長(52) と心乃ちゃん(17)吟華
11.からかい上手の元高木さん 稲葉光史
12.透明人間の骨 荻野純
14.犯人の犯沢さん かんばまゆこ
15.よく宗教団体の勧誘に来る人の家に生まれた子の話 いしいさや
2017年も良いコミックに沢山出会えました!2018年も既に注目作品が沢山発行されています!是非書店に足をお運びくださいねー!!