【映画レビュー】「ちはやふる 上の句」の「青春×スポ根×文化」の融合

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見てきました!以下ネタばれありです。

 

 

 

最初に断わっておくと僕は基本的に所謂スポ根モノが苦手です。根性論とか努力は全て報われる的な方向性も、超人的な技やルールもへったくれも無いような世界観無視ものもとても苦手だしもっと言ってしまえば嫌いです。その上で、今回の「ちはやふる」。かるた競技の世界はテレビ番組等でたま~に見ていたので、「競技かるたの漫画」と聞いて全く読む気になれませんでした。「結局要は少女マンガ版スポ根ものでしょ~」みたいに思っていたのでコミックスも全く読んでいませんでした。

で、今回の実写化。Perfumeが主題歌を担当すると聞いてその世界観の一致してなさ、ある種のハズシっぷりに少し驚きました。それが今回鑑賞に至ったキッカケと言ってもいいでしょう。

で、肝心の本編ですが…とっても良かったです!!

「スポ根」は嫌いだけど「青春」「学校」みたいな描写はとても好きなので、出だしの日常風景みたいなものにはとても惹かれました。屋上のシーンとか青春っぽくて堪らなかった。部員を集めたり、部室を作ったりしてるシーンもめちゃ青春っぽい。自分の青春時代にコンプレックスを抱えてるからこそ、映画でも音楽でもいいけどこういう「作品」内の青春描写が好きなのかなって思ったり。電車で千早と太一が2人で帰るシーン、ロングシートに二人並んで千早が寝ちゃう、みたいなのとか寝てるヒロインをおんぶして帰る、みたいなのベッタベタだけど好きですよやっぱり。ベタだからこその魅力というか。笑いもしっかり要所要所で起こってたしね。

部員も個性がしっかり立ってるなぁと思いました。正直メインの3人や肉まんくんは割とステレオタイプな感じがしてありがちな学校モノな設定かなって思ったけど、後追いの2人の部員、特に「大江奏ちゃん」がめちゃくちゃイイキャラしてんなーって思いました。広瀬すず演じる「綾瀬千早」ほどルックスがかわいいわけじゃないんだけど、あのオタクっぷりが可愛らしく見えてくる感じ。後半なんか広瀬すずより可愛く見えた。ホントに。尚且つあのキャラがいることで競技かるたの「文化的な側面」にも大きく触れる事が出来て、そこが他の「スポ根モノ」との大きな差別化に繋がってるんだと思う。いまどきのサッカー漫画、バスケ漫画、野球漫画って多分「その競技の成り立ち」とか「その競技の文化的背景」みたいなものを大きくフューチャーすることってそうそう無いと思うんだよね。それはみんな当然その競技に小さいころから慣れ親しんでいるからだと思うんだけど。今回の「競技かるた」、当然だけど文化的な部分もめちゃくちゃ沢山持ってる競技、というかそもそも百人一首って1000年前に詠まれた和歌な訳で。ホントは競技以上に文化的な側面の大きいものなんだよね当然なんだけど。その「文化的な側面」と「スポーツ的な競技性」が上手く融合したモノが「競技かるた」なんだなと。だからこそこの作品では、スポーツ的なモノだけじゃなくてその歌に込められた意図や想い、みたいなものもしっかり教えてくれる。それがとても画になってるし、この「大江奏」というキャラがいる事でそれがより一層分かりやすくなってるんじゃないかなと思ったり。

物語的には「結成」→「練習」→「挫折」→「努力」→「試合」→「結晶直前に仲間割れ」→「結束」→「勝利!!」っていうめちゃくちゃ王道な作り。他の、たとえばメイン3人の関係性とかもありがちな設定だなと思った。でもこれ言い返せば「スポ根・バトル」的なモノが好きな人でも、「幼馴染的恋愛モノ」が好きな人でも食いつけるような構成にキチンとなってるってことなんだよね。上記した通り、別にベタだから悪、だなんてことは決してないと思うし。しっかり全方向にしっかり向いた作品作りが出来ているというか。ただ試合、特に決勝のシーンでスローモーション多用しすぎだなーって思ってしまった。競技が競技なだけに使いやすいし一瞬一瞬なモノだから意図も分からんでもないけど、いくらなんでも勝利後に千早が太一と抱き合うとこまでスローモーションにしなくても良くね?

あとやっぱり広瀬すずは可愛いね。ロングヘアーも似合ってたし制服姿が画になる。決勝の時に目元のアップになるところがあるんだけどあの画にスゴイハッとさせられた。あとはつくえクンが部室から出てっちゃった時に追いかけて叫ぶとことか、登山の時につくえくんに手を差し伸べるとことか。すっごい画になってたと思う。キャラもああいう「〇〇馬鹿」(千早の場合はかるた馬鹿)みたいなの実際いるもんねホント。

Perfumeの主題歌もしっかり馴染んでましたよ。ただねぇ歌が始まったのが一通り「和」っぽい特別なエンドロールが終わった後のエンドロールからだったのがちょっと不満かなぁ。というかエンドロール全編あの和っぽい感じでやれよ!何めんどくさがってんだよ!って思ってしまった。あとこれ映画には関係ないけど、エンドロールの時に席立ったりケータイいじる人はちょっともうほんと映画来るなよって思ってしまった。貴方が楽しく映画を見た2時間はそのエンドロールに刻まれた幾多のスタッフの努力や企業の協力無くしては見れなかったんだぞと。まじまじ見なくてもいいからせめて客電がつくまではおとなしくしてろよってスゲーイライラした。なんだかなぁもう。

 

結論としては「競技かるたという『スポ根的側面と文化的な側面』が上手く融合した競技を題材にしたからこそできた今まで一度も見たことが無いような作品!設定はかなりベタだし青春描写もベッタベタだったけどそこもまた良い!千早もいいけど奏ちゃんが好きです!ただ競技シーンはどうかなぁ」ってところでしょうか。決して期待値MAXで見たわけじゃなかったけど、結構満足でした!「下の句」も見に行かなきゃな~。