サカナクション「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」に見た、コロナ時代の音楽×映像×リアルタイム表現

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8月16日にサカナクションが開催したオンラインライブ「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」。昨年6年振りとなるオリジナルアルバム「834.194」のリリース。さらに昨年8月のあいちトリエンナーレにて行われた「暗闇 -KURAYAMI-」を経たサカナクションが放つ新たなる音楽表現は、見る者を圧巻させた。コロナ時代の新たなる音楽×映像×リアルタイム表現。本稿ではその模様と革新性について記していこうと思う。

ボーカルギターの山口一郎が同じ配信を見ている場面から、スモークの満ちた幻想的なステージが設置された建物に入っていく。そんな映像から始まる「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」。山口がステージに立ち、サカナクションのメンバー5人が揃って始まった1曲目は「グッドバイ」。

グッドバイ 世界から知ることもできない

不確かな未来へ舵を切る

半年前の我々は、こうしてライブ会場に足を運べなくなり、オンラインライブが主流になることなど知る由もなかった。我々は今まさに、不確かな未来の真ん中で足掻き、もがいている。暖色系の印象的な強い照明と、その光を強調するように濃く立ち上るスモークの中での演奏は、観客をその歌世界へと没入させる。

「「聞きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」」では極彩色のレーザーが会場を覆い尽くし、ステージを、そして見ている全てのオーディエンス達の部屋をダンスフロアへと変化させる。

ユリイカ」では壁いっぱいに東京の風景を投射し、その歌詞をより視覚的に届ける。

「ネイティブダンサー」ではトピックライトがステージの四方八方に飛び交い、「茶柱」では茶柱に見立てた間接照明を活用した演出が飛び出す。

どれも「光」を巧みに操り生み出された演出だ。書き出せば暇が無いほどに、至る場面、至る曲で「光」が印象深く活用されていた。光による演出によりバンドメンバーの姿や表情はハッキリしないが、その分我々オーディエンスはサウンド、そしてその楽曲の世界観をより広げる演出をじっくりと楽しむことが出来た。

本ライブの光への拘りは単純な「光」の使い方使い方だけではない。普段のライブであればスポットライトが多用され、光源の位置が分かりやすくなっているが、今回のライブ、特に「陽炎」演奏までの前半では画面上から「分かりやすい光源」は排除された。これにより、人工的な作り出された光という印象ではなく、自然な光の変化とそれによって構築される世界観をオーディエンスは体感することができる。その映像はまるでライブではなく、ミュージックビデオのようだ。このライブの開催前に山口一郎が「ライブ映画」というコンセプトであることをSNSやメディアで語っていたが、まさしくそういった感慨のある映像になっていた。

思えば、前述したあいちトリエンナーレでの「暗闇 -KURAYAMI-」公演は、完全暗転して視覚を失った中で、研ぎ澄まされる聴覚によって新たな音楽体験を味わえる、といった趣旨のライブパフォーマンスであった。

fika.cinra.net

今回のオンラインライブは「暗闇 -KURAYAMI-」での経験が強くフィードバックされた、「暗闇 -KURAYAMI-」があったからこその演出でありライブだっ。「光」と「暗闇」、一見すると相反するコンセプトのようだが、その中身はかなり接近したものとなっていた。光を中心とした様々な演出は、時にはメンバーの姿以上に強調された形となり、結果として演出によってバンドメンバーの姿が見えない場面も何度もあった。それはサカナクション、中でもフロントマンの山口一郎が如何にして音楽を届けるかという試行錯誤を重ねに重ねた末に生まれたライブであったと言えるだろう。

また、今回のライブ演出は「光」だけではなく、「オンライン」であることを利用した物も多く見られた。

例えば「マッチとピーナッツ」では演奏している姿に被せるように女性がマッチとピーナッツを手にする映像がインサートされたし、「ワンダーランド」では我々の見ている映像がリアルタイムで ノイズ加工された。

これらの演出は実際のライブ会場では体験できない、オンラインならではの新しい表現と言えるだろう。

そのリアルタイム映像演出の最たるものが、終盤で披露された「ミュージック」だ。バンドメンバーの身体を覆うような演出がアルタイムで加工される映像はオーディエンスの目に新鮮に写ったことだろう。

技術の発達でリアルタイムでの映像加工も容易になったが、音楽の場での活用は限定的だった。コロナ禍により今まで通りのライブが難しくなった今だからこそ生まれた演出と言っても良い。コロナ禍は我々の生活に大きな影を落としたし、特に音楽業界には大きすぎるほどの傷をつけたが、コロナのおかげでこの演出を見れたと思えば少し良い気持ちになる。そのリアルタイム映像演出の最たるものが、終盤で披露された「ミュージック」だ。バンドメンバーの身体を覆うような演出がアルタイムで加工される映像はオーディエンスの目に新鮮に写ったことだろう。なにより、こんな逆境の中でも新しい表現、新しい体験を生み出そうと模索し続けるサカナクション、そして彼らのライブのサポートを行うチームサカナクションには頭が上がらない。全く新しい音楽体験を与えてくれた彼らに感謝を。

834.194 (通常盤[2CD])(応募抽選ハガキなし)

834.194 (通常盤[2CD])(応募抽選ハガキなし)