音楽ライブにおけるネタバレに関するアレコレ
「ネタバレ」という概念がある。
「ネタバレ」とは基本的に「その作品の概要を知っている、もしくは既に一度見ている」者が、知らない者にその概要を明かしてしまう行為とされている。
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%8D%E3%82%BF%E3%83%90%E3%83%AC
漫画、アニメ、ゲーム、テレビ番組。「作品」とされる、そして「ネタバレ」が発生する範囲は広く、故にSNSやインターネットが発達した今、何かと問題になりがちだ。
僕のように音楽を追っている人間にとって一番身近なネタバレはライブにおける「セットリストのネタバレ」である。
僕も何度か、セットリストに関してはネタバレを喰らったことがある。参加予定のツアーのセットリストの一部楽曲名がTwitterに流れてきたのだ。そのツアーの核となる楽曲を知ってしまったことが僕は残念でならなかった。
何故この時僕は「残念」だと感じたのだろう。最近Twitterの僕のタイムラインでこの話題を多く見かけたこともあり、今回は僕の感じる「ライブのセットリストのネタバレ」について、雑多に考えたいと思う。
ミュージシャンにもいろいろなタイプがある。そしてライブの形も、それによってセットリストとの向かい方も様々である。
わかりやすいところで言えば、ヤバイTシャツ屋さん。
#タンクフェスツアー 神戸
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) March 19, 2019
ありがとう!!!
w/ENTH
セトリはお客さんのツイートから拾いました。
完全に酸欠なった!!!!すごい!!!ENTHは広島も一緒です!!
松原さんと写真撮ったよ! pic.twitter.com/9VtXrIollG
#タンクフェスツアー 盛岡
— ヤバイTシャツ屋さん(バンド) (@yabaT_official) April 7, 2019
ありがとうございました!!
セトリはお客さんのツイートから拾いました
dustboxと2年ぶり対バン!
盛岡でできてよかったー!!!!嬉しい!!!!
明日は郡山。よろしくね🍧 pic.twitter.com/IcCaTKCuSw
自らのツアーのセットリストを毎公演自らのオフィシャルアカウントで公開する手法。今でこそ単発のフェスなどならば、セットリストをSNSで公式に公開するバンドも少なくないが、自身のツアーのセットリストを毎公演公開するバンドというのはなかなか少ないのではないだろうか。これは彼らが自身のツアーの中でセットリストを流動的に変更し、全く同じセットリストの公演が無いようにしているからこそ成せる技であり、決してどのバンドもやれるようなモノではない。が、参加者は自身の参加したライブで演奏された曲をいち早く知ることが出来る。特に今の時代では、配信さえしていればストリーミングで即どんな曲にでもアクセス可能だ。セットリストが簡単に共有できるのはバンド・ミュージシャンサイドにも得がある。
ではその一方で、ネタバレを厳禁としているミュージシャンについてはどうだろう。
真っ先に思い浮かぶのはPerfumeだ。
Perfumeの6th Tour「COSMIC EXPLORER」の公式サイトにはWeb上へのネタバレ掲載を明確に禁止している旨が掲載されている。
演出に力を注ぎ、寸分狂わぬダンスパフォーマンスを行うPerfumeのライブにおいて、上記したヤバTのようにセットリストを流動的に変更することは不可能だろう。一部の例外として「セットリストをその場で決定する」ことをライブの主軸とした「Perfume Anniversary 10days 2015 LIVE 3・5・6・9」という企画が過去に存在した。
これは逆を言えば「セットリストを流動的に変更すること」そのものがライブの企画として成立するほど、Perfumeのライブは演出やセットリストに力を注いでいるということ、そして演出、セットリストによる驚きをオーディエンスに楽しんでほしいという考えの現れではないだろうか。
ライブは生モノと呼ばれる。それは例えば同じセットリストでも、例えば演者のコンディションやオーディエンスの盛り上がり方によって変化が生まれるからである。僕だって同じツアーに複数回参加したこと、つまりセットリストを完全に知った状態でライブに参加したこともあるし、それでその2回目のライブを楽しめなかったかと言われれば、めちゃくちゃ楽しんでいる。そういう意味ではネタバレなんて気にしなくても良いのかもしれない。
しかしその一方でそれまであまり披露されてこなかった楽曲の披露に驚いたり、演出に驚いたり、そういうサプライズを心待ちにしたって良いはずだ。僕が以前、ネタバレを見てしまったときに残念だと感じた理由はこの辺にあるのだろうと思う。何も知らないからこそ感じる興奮やワクワク。それもまた、ライブの魅力なのではなかろうか。
「楽しみ方は自由」。だからこそ、誰かの楽しみを奪うことは良くないのではないか、誰かの楽しみを奪わない楽しみ方があるのではないかと僕は考える。
とはいえ、セットリストを踏まえてライブの感想を書きたい人だっているだろうし、ライブにはそういう楽しみだってあるのもまた事実である。そういう人にとって「ネタバレ厳禁」というのはなかなか容認出来ないようにも思う。
僕の考えとしては、この問題の要は「意図しない形でネタバレが嫌な人にネタバレしない」ことだと考える。例えば、TwitterなどのSNSはユーザーの意思とは関係なく投稿が流れてくる。故に、閲覧者の意図しない形でネタバレが流れてしまう可能性がある。
逆に言えば、あらかじめ注意・警告をするような形であればネタバレしたって大丈夫なのでは?と僕は考える。
例えば、セットリストを投稿できる「Live Fans」というサイトがある。
このサイトは、ライブの参加者がセットリストの情報を投稿し、纏めているサイトである。スマートフォン用アプリも配信されていて、自分の参加したライブ一覧を見たり、ライブの感想を投稿して共有したり、セットリストに準拠したプレイリストの作成もアプリ上で可能である。
僕自身このアプリはよく使っていて、参加したライブのセットリストを投稿し、その帰り道にプレイリスト化して聞く、なんてことをしたりしている。このアプリそのものが「ネタバレ前提」なので、楽曲に踏み込んだ感想を書くことが出来る。
また、ブログを活用するのも手だろう。タイトルに「ネタバレ含む」と書いたり、記事の序盤でネタバレを含むことをあらかじめ予告しておけば、閲覧者の意図しない形でのネタバレを避けることが可能である。僕自身、以前からネタバレを含む記事、例えばツアー期間中のライブレポートに関して、どうしても曲名に踏み込んで書きたい場合はこういう対応を取っている。
このやり方はrockin'onなども活用している。ツアー中のライブレポートを掲載する際は殆どの記事の頭にお断りが入る。それはレポを書いているライターさんがちゃんと配慮しているからだろう。
いずれにしても、誰かの意図しない形でネタバレを喰らってしまうようなやり方は僕はあまり推奨したくはない。ネタバレそのものを否定するのではない。ネタバレをされたくない人もいることを踏まえた上で、そういう人にも配慮のある形で音楽を皆で、そして様々な形で楽しめれば良いのかなと思う。
ここからは余談として。
桑田佳祐が毎週土曜夜に放送している「やさしい夜遊び」では、サザンのライブ前になると桑田さん自ら「1曲目は〇〇〇〇だよ」と披露曲を予告なく暴露する、という展開がある。冗談なのだろうとライブに実際参加すると、本当にその曲から始まったりする。桑田さんのサービス精神故のことだろうが、僕はこれでラジオを聴くのを止めてしまった。
その一方で、サザンのバックダンサーの一員である佐藤郁実さんはSNSなどのコメント欄で徹底したネタバレ排除を行っている。
サザンのダンサーで知られる佐藤郁実さん(@ikumisato929)のInstagram、ネタバレコメントへの注意、そしてそれでもネタバレしてしまった方のコメントは削除しつつもその人たちにも物凄く丁寧に対応されていて、スゴい誠実さを感じた。僕もこうありたい。 pic.twitter.com/dPxGtRAscd
— ふじもと@Hello,CULTURE (@fujimon_music) May 14, 2019
なんか、色々逆じゃね?
Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP「LIVE 3:5:6:9」(初回限定盤) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
- 発売日: 2016/01/13
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (3件) を見る