涙の国を超えた、その先に ~ねごと「お口ポカーン!LAST TOUR~寝ても覚めてもねごとじゃナイト~」名古屋 CLUB QUATTRO公演を見て。
ねごと解散の報を聞いたのは、昨年の年末だった。何故?という疑問も、勿体ないなという感情も湧いたが、それ以上に「最初で最後、ちゃんとこの目で見届けたいな」と言う気持ちが強かった。学生時代から聞いていたバンド、でもこれまでタイミングが上手く合わずライブを見ることが出来なかったバンド。そんなねごとを見る、最初で最後の機会。彼女たちの演奏をちゃんとこの目で見届けたかった。その一心でチケット購入を決断し、7月15日に名古屋 CLUB QUATTROへと足を運んだ。
デビュー当時の正統派ガールズバンドという出で立ちから、近年のエレクトロな楽曲まで、彼女たちは決して同じ場所に立ち止まること無く、彼女達がその時鳴らすべき音を鳴らしていた印象だった。だから最初こそ解散を「何故?」と思ったけど「やれることは全てやり切った」という解散の理由に納得も出来た。同時にだからこそ残念でもあったのだが。
始まる前こそ、「解散前最後のツアー」である以上、「寂しさ」や「物悲しさ」が着いて回るライブになるのだろう、と思っていた。どんなバンドだって、どんな人間だって「終わり」は辛いものであるはずだ。しかしねごとの4人はそれをおくびに出さず、あくまでもライブの真ん中には「音楽」があり、「ねごとの音楽を届ける」ことがライブの根底にあった。本当に今見ているこのライブがラストツアーだとは思えないほど、本当にこのバンドが5日後にラストライブを迎えるとは思えないほど、彼女たちはフラットに音楽を鳴らしていた。その潔さは、彼女達の音楽やファンへの誠意の現れと言えるだろう。
デビュー当時のピアノロックバンドな楽曲もカッコよかったが、やはり近年のエレクトロなモードの楽曲、「ETERNALBEAT」や「アシンメトリ」には痺れた。否が応でも踊り、跳ねたくなるビート、星屑のように煌びやかなシンセ。こういう言い方が正しいかは分からないが、タイミングや手法さえもう少し上手くシーンと合致すればサカナクションのようなエレクトロを武器としたバンドとしてもっと別のステージに立てたのではないかとすら思った。
そしてやはりねごとというバンドの肝はVo.蒼山幸子の歌声にあるんだな、とも思った。聞いているだけで宇宙にポッカリと浮かんでるような浮遊感を覚えたり、深海の中でなんの雑念もなく漂っているような感覚にさせてくれる。「水中都市」なんかはまさに、そういう曲だろう。宇宙も海も人の理解の及ばない場所で、そういう人間の人智すらも越える場所に聞き手を連れていってしまうな独特の魅力が蒼山の声にはあるなと、生で聞いて一層感じた。
やはり、どんなバンドやグループでも、解散というものは悲しい。涙だって溢れる。でもねごとの解散は未来ある解散だと、今回のラストツアーを見て確信した。こんなにも音楽性豊かで、愛に溢れ、ただ真っすぐに音楽を届ける4人の姿を見て今後を心配するような人はきっといないはずだ。解散後もねごとの四人はそれぞれのステージでそれぞれの音楽人生を歩むことだろう。彼女達の代表曲にして、ライブの最後に歌われた「カロン」のように、涙の国を超えた、その先の輝かしい道を。
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- アーティスト: ねごと
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- 発売日: 2019/04/24
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