【CDレビュー】あいみょん「瞬間的シックスセンス」感想 〜やっぱりあいみょんって大衆的で、偏執的 〜

f:id:fujimon_sas:20190213010124j:image

あいみょんが2ndアルバム「瞬間的シックスセンス」をリリースした。

 この作品以前までの「ふじもと的・あいみょん評」はこの記事に纏めたので、この記事の前にぜひ一読いただければと思う。

端的に言えば、あいみょんは類まれなるポップシンガーである一方、その本質とはポップ、つまり王道性、そしてサブカル、つまり偏執性の2面を兼ね備えた存在と僕は考えている。今作のリリースに際して、改めて前作「青春のエキサイトメント」を聞き直したが、その考えは益々強固になった。

「憧れてきたんだ」「生きていたんだよな」の歌詞は社会を俯瞰的に見つめたあいみょんのエグみが滲み出ている一方、「君はロックを聴かない」の普遍性に満ち満ちたサウンドや歌詞は90年代ポップスにあったエバーグリーンな雰囲気を醸し出す。そうかと思えば「ふたりの世界」の生活感のある歌詞はクリープハイプなんかを連想せずにはいられないし、「愛を伝えたいだとか」の気だるげなサウンドはまさしくサブカルのソレと言えるだろう。王道性と偏執性をいったりきたりする彼女の音楽性は、今の音楽シーンを追う音楽ファンだけでなく、CDが大ヒットしていた当時の音楽ファンや、そもそも音楽を熱心に追わない層にまで届き、その上で「良い」と多くの人間を思わせた。その結果が2018年の彼女の大ブレイクに繋がったと言える。

さて、そんな大ブレイクを経てリリースされた「瞬間的シックスセンス」。特に夏以降のシングル群「マリーゴールド」や「今夜このまま」などの楽曲は、彼女の持つ偏執性は薄れ、王道性ともいえるポップに富んだ作風となっていた。「NHK紅白」にも出演したこともあり、王道ポップスに舵を切った作風になると僕は予想していた。

しかし、その予想は良い意味で裏切られることとなる。

 「ナンマイダ」と繰り返す歌詞が印象的な「二人だけの国」。その歌詞もさることながら、浮遊感のある音作りと敢えて一本調子で歌うあいみょんの歌声は、初めて聴くと少しギョッとしてしまう。そしてサビで示唆されるのは心中。愛し合う二人が愛を確かめ合う為に選んだ歪な最期。愛し合う二人のグロテスクな物語は、水たまりの気泡のような音を絡ませながら僕の耳に届く。「マリーゴールド」とは真逆の世界観と言えるだろう。

 情事の後を歌った「GOOD NIGHT BABY」。一聴すると爽やかな恋の歌なのに、歌詞を熟読するときっとこれは情事の後なのだろうと思うと詞が違った聞こえ方をする。これも彼女の偏執的な面と言えるのではないか。彼女と同時期に世に名前が知られるようになったシンガーソングライター、吉澤嘉代子。この「GOOD NIGHT BABY」は吉澤嘉代子の「残ってる」にも近いモノを感じる。あいみょんは狙ってやっているのだろうか。ある種のアンサーソングなのだろうか。もしそうならば両者のファンとしては嬉しくなる。

ここまで取り上げてきた通り、歌詞はあいみょんの大きな魅力の一つだ。彼女の最大の武器はその類まれなるメロディセンスだ。彼女の紡ぐメロディはどんな曲もポップにしてしまう。だからこのアルバムは全曲が良質なポップスになっている。その一方で、彼女の楽曲はアレンジが絶妙だ。「普通のポップス」ならこうするだろう、というパターンにもう一捻りを加えてくる。

「恋をしたから」はまさにその一捻りが光る1曲で、1番は丸ごとあいみょんの弾き語りで進む。ハッキリ言えば、タダのポップスなら1曲丸々弾き語りで歌い切ってしまうだろう。何故なら「曲として」はその方がわかりやすいからだ。でもこの曲は2番からフルートの音が入り、大サビの前に一度全ての楽器の音がブレイクし、SEとして鳥のさえずりが導入されている。

夕方の匂いが苦しくて

夕飯も喉を通らなくってね

絵に描いたようにほら私ほんと

簡単に泣いている

恋をしたから

明日が少し怖かった

覚めないでほしい夢も見たわ

この曲の歌詞は、夕方・夕飯→明日が怖かった(夜)→夢を見る と歌い進めることにこの曲の主人公をとりまく時間も進んでいることが示唆されている。それを踏まえて最後のサビの前の鳥のさえずりを聞くと「朝の訪れ」を否応なく彷彿とする。恋をして、その人のことを思うと寝れなくなって朝を迎えたり、眠りについても夢の中で恋してる人に会ったり。聞き手によってこの主人公の「朝の迎え方」が想像できる。フルート、鳥の泣き声。そのちょっとしたこだわりによって、ひとつの「曲」としてはわかりにくくなっても、この曲で描かれる「物語」には奥行きが生まれているのだ。

そして彼女の特筆すべき部分は、世に浸透していく曲はポップなアレンジが得意なアレンジャーに、そうでないアルバムの中でこそ真価を発揮する曲はそんな一捻りが巧みなアレンジャーに任せているところだろう。彼女自身の(最早第六感とも言えるような)メロディメーカーとしての才能と、そのメロディを乗りこなし様々なアレンジを生み出す幾人かのアレンジャー。それがあいみょんあいみょんたらしめ、大衆的で偏執的な彼女の音楽性を生み出している。

彼女のブレイクは、今後の音楽業界にも大きな影響を与えることだろう。「タダのポップス」「タダのロック」。きっとそんなものは皆聞き飽きている。そこにどんなプラスアルファをするのか。あいみょんを経た音楽業界の変化は最早必然だ。