【500文字レビュー】佐藤千亜妃「SickSickSickSick」

今回の500文字レビューは佐藤千亜妃の「SickSickSickSick」です。

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 ロックバンド・きのこ帝国のVo.佐藤千亜妃初のソロE.P.。

佐藤千亜妃/SickSickSickSick 全曲Digest

ストレートなギターサウンドが特徴的なきのこ帝国・バンド本隊の楽曲とは真逆の、打ち込み中心のエレクトロな曲が多数収録された1枚。全編通して印象的なのは、気だるげな佐藤千亜妃の歌声。

佐藤千亜妃/SickSickSickSick Teaser

表題曲「SickSickSickSick」は、ノイズとキラキラした音色という真逆のサウンドが同居した印象深い構成。イントロのオートチューンを使用したと思われる声にならない歌声ひとつで聞き手をこの歌世界に一気に没入させる。「恋煩い」がテーマの歌詞は思わず読むだけで胸がチクチクと疼く。

佐藤千亜妃 - Summer Gate

2曲目「Summer Gate」は夏の夜に聞きたくなるような、憂いと涼やかさを感じる1曲。夏夜の街を駆け抜けて、恋人に会いにいくストーリーは年齢を越えた「青春性」を感じてしまう。indigo la End「夏夜のマジック」やBase Ball Bear「不思議な夜」なんかと合わせて聞きたくなる。気だるげな佐藤の歌声と、人工的なサウンドがより一層「夏の夜のあの感じ」という、言葉にならないのに日本で生きる全ての人が持ち合わせる「夏への追憶」という感情を蘇らせる。また1つ夏の名曲が生まれた。

佐藤千亜妃 - Bedtime Eyes

「Bedtime Eyes」はCharaを彷彿とさせるハスキー加減と、柔らかに息を吐くような歌い方が印象的。失恋した女性の淡い傷心を丁寧に描いた歌詞には、思わず頭の中で景色をイメージしてしまう。

夏らしい5曲が収録された「SickSickSickSick E.P.」。きっと今年のあと僅かな夏を彩る1枚になることだろう。今作をきっかけとするエレクトロを中心としたソロ活動は、佐藤千亜妃という音楽家の新しい扉を開く筈だ。今後とも大注目。

SickSickSickSick

SickSickSickSick