【ライブレビュー】Base Ball Bear、6回目の日比谷野音で吹かせた新しい風!!【ネタバレ含】

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9月30日に日比谷野外大音楽堂で開催されたBase Ball Bearの「Base Ball Bear Tour 日比谷ノンフィクションⅥ ~光源~」に参加してきました。

前回の野音は傷だらけの中、なんとか立ち上がろうともがく中で様々なギタリストに支えられ、転んでも屈しない姿を魅せたBase Ball Bear

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 今回は、前回のツアーに引き続き弓木絵梨乃がサポートギタリストとして出演することが決定しており、6月から始まった地方公演や夏フェスは彼女がサポートを勤めた。さらに一部の夏フェスは弓木さん無しのBase Ball Bear三名で出演するなど、活動の展開をひとつに絞らず、様々な展開を行うことで、これからの活動を見極めているような、あるいは自分たちのやれることの幅を広げているような、どちらにしても音楽家としてとても正しい形での活動を昨年以来続けている。既存の形に囚われず、様々な展開を魅せる、というのはクリエイターとしてのお手本のようだと思う。

Base Ball Bearにおいて「日比谷ノンフィクション」というシリーズライブは、本人たちにとってもファンである僕たちにとっても、とても思い入れのあるライブだ。特に近年の「日比谷ノンフィクション」は毎回毎回意欲的に新しい挑戦に挑んでいる。4回目の「日比谷ノンフィクションⅣ」では1曲目からRHYMESTERをゲストに迎えたり、前回のⅤでは様々なギタリストが入れ替わり立ち替わりサポートを務めるという、いずれもエンターテイメントに富んだ内容となっていた。果たして今回はどんなライブとなったのか。早速レビューしていこうと思う。ここからは今後のツアーのネタバレを含みます。「Tour 光源」参加予定の方でネタバレを見たくない方はお気をつけください。

 

 

18:00。9月の終わりということでもうこの時間になると外は暗くなる。日比谷野音という途轍もなく雰囲気のある会場にピッタリの夕闇になった頃、恒例の登場曲であるXTCの「Making Plans for Nigel」が日比谷野音に響きだす。本来であれば4人だけが登るはずの舞台には7人の人影が。どういうことなのか分からないまま、1曲目の「すべては君のせいで」がはじまる。そこで気付いたのだが、ツアー本編(筆者はツアー初日の浜松公演に参加しました)には無かった管楽器とキーボードが!「すべては君のせいで」の音源には無かった管楽器の音、そして音源にはあったもののツアーには無かったシンセの音が盛り込まれた「すべては君のせいで」は、今までのBase Ball Bearには無かった要素に溢れていて、聞いているだけでもドキドキしてしまう。

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続いて7人編成で鳴らされる「(LIKE A)TRANSFER GIRL」。秋めいてきた秋の夜空にピッタリな歌詞のひとつひとつが胸を衝く。

(LIKE A)TRANSFER GIRL

(LIKE A)TRANSFER GIRL

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ここでMC。サポートメンバーの紹介。SANABAGUNからトランペットの高橋紘一、サックスの谷本大河(オシャレポイントの高さ)。そしてキーボーディストのRyu Matsuyama(パリに留学していたからミラノ風ドリア作れる説)。そして今やお馴染みの弓木絵梨乃。強靭な技術を持つミュージシャンが揃った。メンバーも始めての編成に緊張しているのか、いつものキレのあるMCではなかったけれど(笑)これもまたノンフィクションらしさだろう。

MCもそこそこに披露されたのは「光源」から「Low Way」。これも7人編成での演奏。この曲も原曲ではホーンが取り入れられたもので、ついに完全版が聞ける喜び。終電を逃しひとりで歩いて家に帰る、というだけの歌なのにどうしてこうも叙情的で切なさがこみ上げるのだろう。ゆったりとしたサウンドが、少し早い秋風と合わせて心を締め付ける。

Low way

Low way

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このまま7人編成で全曲演奏するのかと思っていたら、ここで管楽器とキーボードの3人は一旦引っ込む。そして演奏されるは「抱きしめたい」。初期の楽曲ながら、今だからこそのグルーヴや感慨がそこにはあり、彼らの成長と共に楽曲も成長していることを感じてしまう。

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そして「恋する感覚」!!ツアー本編でも歌われていた楽曲ではあるのだが、やはりこのサプライズに感動。歌うのはサポートギタリスト弓木絵梨乃とベース関根史織。2人のキュートな歌声、そして間奏で2人が向かい合わせでソロを弾く様に、まさに「きゅるり」。Cメロで一瞬堀くんがファルセットで歌っていたのには会場中が爆笑の嵐に(笑)。こんなキラッキラのアイドルソングのような曲を作ってしまう小出祐介の手腕に舌を巻いてしまう。

恋する感覚 -Feat. 花澤香菜-

恋する感覚 -Feat. 花澤香菜-

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 そんな「青春の蒼さ」でいっぱいのまま、アオハルの極地のような「GIRL FRIEND」へ。小出がアルペジオに合わせてサビのフレーズを歌い、イントロに突入。このあたりはもう彼らの十八番といった感覚だろう。

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さらに「LOVE MATHEMATICS」!!!代表曲を出し惜しみせずにぶち上げてくる彼らに、会場もヒートアップ。

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ここでMC。「日比谷野音公演は毎回晴れている」という話。流石晴れバンド。小出の「晴れ男ですみません(ドヤァ」みたいなMCと「9月開催ははじめてだけど、鈴虫の鳴き声とか銀杏の匂いに癒されてしまって面白いことが言えない」みたいなMC。緊張してる感じがやっぱり伝わってくる。

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SANABAGUNの2人とは、元々RHYMESTER主催のフェス「人間交差点」の際にコラボした、という話を挟んで新しいゲストを迎え入れることに。現れたのは元ズットズレテルズ、現KANDYTOWNの呂布!!!Base Ball Bear小出ともプライベートで仲良しの彼。今回は「人間交差点」でも披露したスクランブル」(まさに人間交差点!!)の特別バージョンを披露。SANABAGUNの二人も加えてグルーヴィな6人の演奏と呂布の言葉のマシンガンのようなリリックが日比谷の夜空にこだまする。まさにノンフィクション、まさに人間交差点。このスペシャル感、本当に来てよかったと始まった瞬間からずっと思わされてる。

スクランブル

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 「スクランブル」を演奏し終わると舞台が暗転。暫くして舞台の真ん中1点だけにピンスポットが。小出がひとりでアコースティックギターを抱えている。弾き語りだ。

「Ryu Matsuyamaの作ったミラノ風ドリアをみんな食べに後ろに戻ってしまったのでひとりで歌います」というジョークも飛び出したところで歌ったのは「WHITE ROOM」。小説のようなストーリー性の強い歌詞に引き込まれるかのように、情景が頭の中に浮かんでくる。

White Room

White Room

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続いて弾き語りで演奏されたのは「恋愛白書」。「恋愛の1ページ目に好きなんて言葉は出てこない」。という歌詞にハッとさせられる。思えばこの公演、ここに至るまでで既に総勢8名にも渡る大所帯での演奏からフロントマンの小出1人での弾き語りまで、実に様々な形態、編成での演奏を魅せている。その様はまるでカメレオンで、どんな体制もしっかりと魅せきってしまう彼らの音楽的テクニックの凄さを再認識させられる。

恋愛白書

恋愛白書

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再び舞台は暗転。奥に引っ込んでいたメンバー、そしてサポートのSANABAGUNの2人が現れ、寛解のイントロが。「WHITE ROOM」の続編のような歌詞に秘められた確かな一筋の希望をジリジリと感じる。スタンドマイクで歌う小出祐介の珍しさ。

寛解

寛解

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 一転して重厚なハードロックサウンドが呻るような「リアリティーズ」。「学校」という社会の狭さ、そしてそんな小さな椅子取りゲームに固執する同級生、「外の世界」の広さに気付けない狭い部屋の中の自分。そんな小出自身の体験を踏まえて描かれた歌詞は、小学生時代の自分自身を思い出してキリキリと心が締め付けられるよう。この曲を当時の自分が聞いていればもう少し違う人生を歩んでいたのかもしれないな、なんて思いにふけってしまう。

リアリティーズ

リアリティーズ

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ここで3度目のMC。周りのメンバーと「擦り合わせ」(楽屋でやれ)をしながら「音楽が楽しい、面白い」と語る小出祐介。「音楽をやる」「音楽をする」であった彼らがこの1年で「音を奏でる」「音と戯れる」に変化したと、ユーモラス(「真夜中のニャーゴ」で恒例になっていた海鮮丼へのブチ切れがここで出てくるとは...笑)で、でも真剣に語る。数年前、なんなら2年前の彼だったら決して出てこなかったフレーズだろう。青春時代の苦み・苦しみを音楽で取り戻そう、あの頃のあいつらを見返そうともがき苦しんでいたデビュー当時の彼、音楽シーンを俯瞰して、シーンと徹底的に戦おうともがきながら曲を作っていたつい数年前までの彼。そして一緒に歩んできた友との別れ、それによって今まで不文律として無理やりにも守り続けてきた「ルール」から結果として開放され、今一度改めて音楽と真剣に向き合い見出した「楽しさ」。今までのすべてが現在に繋がり続けている。いつだってBase Ball Bearは今に生きている。

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そんな「今まで」と「現在」の感覚を再認識するかのように「レモンスカッシュ感覚」のイントロが流れ出す。この曲の真っすぐなギターロックサウンドは今までの彼らそのものであり、まさに血肉となったギターロックを改めて定義すると同時に、いつだって彼らの真ん中には「一生求む感覚」がある事を宣言するような歌唱と演奏に、僕も突き動かされるような感覚を覚えた。

レモンスカッシュ感覚

レモンスカッシュ感覚

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ライブはいよいよ佳境。「SHINE」「逆バタフライエフェクト」「CRAZY FOR YOUの季節」といった新旧のブチ上がり青春ギターロックの数々に会場のボルテージも最高潮に。「SHINE」は岡村靖幸、「逆バタフライエフェクト」はTRICERATOPSのエッセンスを色濃く含んだものであり、小出祐介の音楽的ルーツに触れたような気がした。「逆バタ」イントロの堀之内の煽りもシンプルにカッコよい!!!

SHINE

SHINE

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逆バタフライ・エフェクト

逆バタフライ・エフェクト

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「ありがとう、Base Ball Bearでした」のキメ台詞と共にはじまった本編最後の曲は「Darling」。幾度となく季節を超えた先にあった「希望」。「時間」という女神が与えてくれる「救済」。所詮ただの物質でしかない人間の人智を超えたところにある「概念」をこんなにも美しく描く歌詞に、自分や、Base Ball Bearというバンドや、この世界の未来すらをも考えてしまった。

Darling

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そしてアンコール。サポートメンバーを改めて紹介。そしてスペシャルゲストとして「スクランブル」を披露した呂布を呼び込むと「このメンバーが揃ったらあの曲をやるしかないでしょう」と小出。「僕のディーヴァ!!チャットモンチー福岡晃子!!」という紹介とともにチャットのあっこが登場!!日比谷ノンフィクションならではの超特大級のサプライズに会場も大盛り上がり。「今日もかわいいかよ~おまえ~」というこちらがにやけてしまうふたりの絡みも良かったけど、そもそもこのタイミングでこの二組が揃うことに意義があるというか。元々ずっと同期で仲の良い二組であったこともさながら、チャットモンチーもメンバーの脱退を経験しているし、Base Ball Bearも昨年の脱退劇を公に公表する前にチャット主催の「こなそんフェス」に「体調不良」という名目で湯浅を抜きに出演した経緯が(本当はその時点で彼は蒸発してしまっていたのだが)あった。そういう経緯を踏まえてウルウルしながら彼らの絡みを見ていると、あっこが「お互いメンバーが増えたり減ったりだねぇ(笑)」という言葉を。僕号泣。どんなに転んでも起き上がって新しい音楽のカタチを探し続けるこの2組の仲が良いのは絶対的な運命だったのかな、なんて思ってみたり。

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勿論このメンバーで演奏するのは「クチビル・ディテクティヴ」!!!堀くんのツリーチャイムが新鮮すぎて。まるで深夜のカラオケのように、和気藹々と遊んでいるかのように演奏や歌唱を楽しむ9人にこちらも思わず身体が動いてしまう。なんでも5年ぶりの演奏とのこと。イイもの見れたなー!!

 楽しかった時間もあっという間。あっこ・呂布、そしてホーン隊とキーボードの5名が舞台を降りると、最後に4人で演奏されるのは「十字架You and I」!「C2」でスキルアップした各メンバーのテクニックや弓木絵梨乃の超絶ギターに加え、すっかり暗くなった野音の雰囲気も相まって、妖しさ満点。会場中が思い思いに踊っている様は圧巻のひとこと。そんなこんなで6回目の日比谷は幕を下ろした。

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十字架You and I

十字架You and I

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 今回の「日比谷ノンフィクションⅥ」、圧倒的なサプライズの連打で見ているこちらも驚きの連続でクラクラしてしまうほどだった。これこそ「ノンフィクション」。そのサプライズも小手先でゲストを呼ぶだけみたいなチンケなものではなく、ちゃんとそれぞれに理由付けがしてあるのもなんとも彼ららしい。前回の野音では「今後はカメレオンのように形を変えていくかもしれないけれど、僕たちはあくまでロックバンドなんで」と話していた小出だったが、1人編成から9人編成まで展開した今回の野音はまさにカメレオンのようで、しっかりと有言実行しているところに頼もしさすら感じてしまった。

ツアーはまだまだ続く。この「光源」というアルバム、そして9か月にも渡るツアー、今回の日比谷公演を経たBase Ball Bearが次はどういうカタチで僕たちの予想や期待をいい意味で裏切ってくれるのか。いや、最早どんなカタチでも良いモノを描き切ってくれることは間違いないとまで断言してしまいたくなるほどに、今回の公演は素晴らしいモノだった。ツアーにも、これからの活動にも期待したいと思う。

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何より、改めて僕は彼らのことや彼らが創り出す音楽がどうしようもなく好きなんだと再確認させられた公演だった。海鮮丼が嫌いすぎるボーカルと、キャラをせき止めてしまうドラマーと、女の子なのにおじさんって呼ばれてるベーシストと。そんな彼らがまたひとつ好きになった。これからも僕にとって大切な大切なバンドで在り続けてほしいな、僕自身もそう在りたいなと思う。

光源(通常盤)

光源(通常盤)

 
日比谷ノンフィクションV ~LIVE BY THE C2~ [Blu-ray]

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