大雪とココアと栞のテーマ
Twitterだったり、ブログでも何度か書いた話にはなるのですが、折角の機会なので改めてキチンと書き留めておきたくて講義中にコソコソ書いています。ちょっとした思い出話です。青春時代の青春時代らしい良い思い出が少ない僕にとって、唯一と言っていいくらい甘酸っぱい思い出の話です。よければお付き合い下さい。
この前、日本列島を大寒波が襲いました。センター試験に直撃した事もあり、大変な思いをされた方も多いのかな~と思ってます。僕の住む街に雪は滅多に降りません。同じ県内の大都市は割とよく降りますが、僕の住む街は海沿いで西風がめちゃくちゃに吹き、比較的南側に位置してる事もあって温暖な気候です。2~3年に1度降ればいい所で、その度に街中大混乱って感じです。それこそ、この前の大寒波の時は2、3年振りの雪でした。InstagramやTwitterには中学や高校の同級生が雪の写真を挙ってUpしてました。僕も例外ではなく、上に載せた写真はバイト終わりにパシャリと1枚撮ったものです。その日のバイトはお客さんも来ず、バイトも雪が原因で出勤不能となり早じまいしてしまう始末でした。この街にとって雪はそれ位特別な、貴重なものです。
雪が降る度にに思い出すのがサザンオールスターズの「栞のテーマ」という曲です。サザン、と聞くと夏のイメージがあるし、別に「栞のテーマ」も冬の曲という訳ではありません。桑田佳祐は冬の曲も何曲も書いてます。でも、僕はやはり「栞のテーマ」を思い出してしまうのです。
それは僕が高校1年生の冬、2011年の1月の事だったと思います。東日本大震災が起きる前で、やっと高校にも慣れて、毎日馬鹿話を友達としつつも、部活に精を出してた頃だと思います。
日曜日の夜、今回の寒波と同じか、それ以上の大雪が降りました。路面は完全に凍ってましたので、いつもだったら自転車通学をしていた僕も、翌日はバスで学校に向かうことにしてその日は寝ました。翌日朝になっても雪は止まず、雪に慣れてない我が街は大混乱に陥っていました。とりわけ、僕の家の側を走る、街の一番の大動脈である国道は完全に車が止まってしまってました。どうやら事故があったようで、それ故にバスも完全にストップ。定刻から30分ほど遅れてバスが最寄りのバス停にやって来ました。
僕の高校へバスで行くには、まず駅にあるバスターミナルまで向かい、そこで乗り換えをしなければ行けませんでした。やっとの思いでバスターミナルに着いたと思ったら、見たことも無いような長蛇の列。僕の通う高校は市内の総合病院がすぐ側にあり、どうやら病院へ向かう患者さんや病院スタッフ、ウチの高校の学生や教師が全員足止めを喰らってる状態でした。バスも1つ遅れたことにより他も連鎖的に遅れているようで、全く来る気配もありませんでした。
「こりゃあ遅刻どころか1時間目の授業すら間に合わないだろう」と覚悟した時、ふと後ろを見ると当時気になっていたクラスメイトの女の子がいました。
その子は「おやすみプンプン」という漫画に出てくる中学時代の「愛子ちゃん」に似てて(あそこまで闇深い感じじゃないけど)少しの陰がありながらも愛嬌のある女の子でした。気になっている、とは書きましたが、特段2人でデートしたことも、2人きりで喋った事もなく、授業中にふと会話をする程度でした。だからこそ、この「2人きりで学校に遅刻していく」というシチュエーションが何かとても、漠然とした「特別」でした。
2人で色んな話をしたと思います。スカートだと女の子は寒さが大変だよね、男はズボンの下にスウェットとか履けるからズルイ、担任がいつも口の周りに唾の泡が着いててめちゃくちゃ気持ち悪い、クラスメイトがどうだこうだ。5年も前の事だから全然思い出せないけど、他愛も無い話を、授業中には出来ない話を沢山しました。
彼女がどうしても寒いから、ということで何か飲み物を買って来てくれることになりました。「何飲む?」と聞かれたので「ココアがいいな」と答えると「可愛いねw」と。ホントなら男の俺が買いに行くべきだったよなぁと今頃になって後悔してたりもします。
そうこうしてるうちにバスがやって来ました。やっとクソ寒いバスターミナルから抜け出して暖房の効いた教室に行けるんだ、と嬉しくなった反面、「あと30分もしたらこれも終わりかー」なんて寂しくもなって。バスの中でも他愛も無い話をしました。音楽の話になって、彼女はELLEGARDENなんかを聞くよ、と言われて当時の僕はあまりピンと来ませんでした。「ふじもとくんは?」と聞かれ、バカ正直に「サザンが好きなんだよね」と答えました。サザンなんか古臭いといつも周りの友達には言われてたので、そういうリアクションされたらヘコむなぁ、なんて思ってたら
「サザン!いいよね。栞のテーマとか好きだよ~」
と。続けて彼女は栞のテーマのワンフレーズを口ずさみながらハニカみました。
彼女が髪を指で 分けただけ
それがシビレるしぐさ
今でもこの曲を聞く度に、あの日初めて見たこの街の雪景色を、彼女が口ずさんだ「栞のテーマ」を、あの日飲んだココアの味を、ドキドキしたあの瞬間を思い出してしまうのです。
その後、実はその女の子はその当時からクラス1のヤンチャ男と付き合ってて、彼氏が謹慎喰らってるのに彼氏の家行っちゃって、そこにたまたま運悪く高校の教師が来ちゃったりしてまあまあ修羅場になったらしいとか、僕は僕でそのヤンチャ男の家で開催されたクラス会に出席して、みんなで「酔っちゃうやつ」飲んじゃって、クラスでも2番目か3番目にヤンチャしてる奴に騙されて(というか俺が無知なだけだったけど)その女の子の胸用のパッドを勝手に持ち出した冤罪に掛けられたりしたのはまた別の話。