【ライブレビュー】初夏の風とロックの音に包み込まれた4月の終わり【Base Ball Bear 日比谷ノンフィクションⅤ】

 

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4月30日。GW2日目。ピークは外してるにしてもそれなりな混み方をしてる東海道新幹線に乗り僕は東京を目指した。「10th&15th Aniversary Base Ball Bear 日比谷ノンフィクションⅤ〜LIVE BY THE C2〜」を見るためだ。
Base Ball Bearのライブは1ヶ月前のツアー名古屋公演以来。だが、あのライブの素晴らしさとはまたひと味もふた味も違ったライブになる予感に溢れかえっていた。
 
今回の日比谷は、ツアーでサポートを請け負ってくれたフルカワユタカ氏に加え、元Number Girl田渕ひさ子氏、the telephones石毛輝氏、POLYSICSハヤシ氏という、邦ロック好き、音楽好きなら堪らない面々が揃った。特に元Number Girl田渕ひさ子氏。Base Ball Bearは元々Number Girlに憧れ、インディーズ盤をリリースした時はNumber Girlに酷似していると(主にネットで)所謂炎上をした(と、実際今回のライブで小出本人が語っていた)。そんなBase Ball Bearの演奏に田渕ひさ子が加わっている。こんな夢のような時間があるだろうか。本当に素晴らしい時間だった。
 
入場してまず思ったのは日比谷野音のライブ会場としての素晴らしさ。すり鉢状の見やすさや、いい塩梅の自然、ビル群が立ち並んでる中の非現実空間。ビル群は現実のメタファー、舞台を覆うように広がる自然は非現実のメタファー。現実と非現実の融合はまさに「日比谷ノンフィクション」。Base Ball Bearのために作られたような会場とすら思ってしまった。
 
18:00。定刻通り開演。いつもの垂れ幕は「日比谷ノンフィクション(ローマ数字)」だったけど、今回初めて「HIBIYA NONFICTION Ⅴ」と変更になっていた。その意義や理由を考える間もなく、ライブが始まる。いつも通り入場SEの「Making Plans for Nigel」が流れる中、堀、フルカワユタカ、小出、関根の順で入場。ちょっとした音出しの後、堀之内の4カウントで4人揃ったイントロが始まる。
①「それって、for 誰?」part.1


やはりこの曲からスタート。フルカワさん、名古屋公演以上に自分の色をはっきりと出したギタープレイをしている印象。お客さん全員がサビに合わせて腕を振る姿は圧巻。

 ②不思議な夜


やっぱりここかー。と。野外ってこともあるから夜聞きたかったけどなー。既に4人の演奏にアドレナリン出まくり。汗でへばりついた僕の髪も、初夏の風が剥がしていった気がした。

 ③曖してる 
曖してる

曖してる

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ここで「C2」キラートラック「曖してる」!!!やっぱりツアーとは違ったセトリになることを確信。「ベース関根史織!!」カッコよすぎかよ!!関根嬢のニューベースもブリッブリに鳴ってる。どこまでもファンク。ファンキー。既にライブのピークみたいな盛り上がり方。 

ここで改めてご挨拶。もちろん、あの騒動以来の東京ライブだったので名古屋公演と同じように説明を。そしてツアーに帯同してくださったフルカワユタカ氏へのお礼。フルカワ氏の「どうもロックスターです!!!!」は痺れたなぁ。そしてフルカワ氏は引っ込み、早速次のゲストギタリストへバトンタッチ。なんとここで田渕ひさ子氏。可愛い。上記したようなBase Ball BearNumber Girlの深い関係性を語った上で、「そんなBase Ball BearのライブにサポートとしてNumber Girlのギタリストが参加してくれている!」という悦びをこれでもかと素直に口にしていた小出。本当に嬉しかったんだろうなぁ。
「そんなNumber Girlの田渕さんの弾く音色をイメージして作った曲たちです」という言葉とともに次のブロックが始まる。
④こぼさないでShadow
こぼさないでShadow

こぼさないでShadow

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ツアーでは最初の2公演だけ披露し、それ以外の公演では演奏されなかった曲。勿論僕が参加した名古屋公演でも披露されなかっただけに、嬉しかったなー。空も徐々に暗さを帯びてきて、まさに空から零れ落ちたような暗闇と共鳴するようにこの曲が日比谷の空に響いていた。「本当のサヨナラは想像しないってことだと 得意げに言ってた あなたを思い出してる」「現実はただ一筋の涙」湯浅将平の脱退を思い出さない訳にはいかなかった。
⑤short hair
田渕ひさ子の演奏でこういう曲が聴けることに大いなる意義がある。日比谷野音の特徴とも大いにマッチして、少し早めの夏を大いに疑似体験できるひとときだった。この曲で気がついたが、田渕さんのギタープレイは相当重めで厚みのある音だ。フルカワ氏、田渕氏、そして湯浅。同じ曲でもギタリストが変わっただけで全く違った印象を受ける。それぞれに持ち味がある。

「ギター 田渕ひさ子!!」の小出の一言で、イントロのあの音が響き渡る。ツアーには無かった楽曲。うねる様なギターの音像がこの曲をよりキラキラと、そして青春の初期衝動感をより強く感じさせる。どこまでも蒼い。どこまでも夏い。曲が終わると、「田渕ひさ子さんでしたー!!!かわいいー!!!」ここが田渕ゾーンだったのかと納得。しかしこいちゃん、もう普通にただのファン丸出しだったな...w まあねー。そりゃあそうなるよなーとか思ってるうちに田渕さん捌ける。しかしドラムのリズムは止まらない。

⑦ぼくらのfrai awei
ぼくらのfrai awei

ぼくらのfrai awei

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 「続いてのゲストギタリスト、ハヤシ君です!!」の紹介に合わせてPOLYSICSのハヤシ氏が入場。いつものツナギと バイザー姿。そのまま「ぼくらのfrai awei」!!!ここめっちゃテンション上がった。というかもうずっとクライマックス。気の抜ける、しかしちょっと胸が痛くなるような歌詞と、キャッチーなメロディに惹き込まれる。照明も今日1で鮮やか。飛び跳ねっぱなし。

⑧UNDER THE STAR LIGHT
UNDER THE STAR LIGHT

UNDER THE STAR LIGHT

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息付く間もなく「UNDER THE STAR LIGHT」へ!!まさに「UNDER THE STAR LIGHT 状態」の中で聞くこの曲はまた違った印象を受ける。ハヤシ氏はノリの良いギタープレイ&電子音っぽい音像って感じ。歯ギターまで披露。凄すぎ(笑)
ここでMC。ハヤシ氏への「TOISU!!」禁止令とか、レットマンの話とか、「ハヤシくんです!」連呼とか。ユルユルベボベMCはやっぱりいい。和む。
小出「次の曲はハヤシくんがあんまりやらないような曲です」
ハヤシ「あーそういうことなんだ。性格悪いねww」
という紹介で始まったのは
⑨どうしよう
どうしよう

どうしよう

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恋の独りよがり感を描いたグルービーな1曲。化学反応が起きてる感じ。この曲に限らず、ゲストギタリストの皆様は決して原曲通り弾いてる訳じゃなく、それぞれが曲を解釈して自分なりの色を付けている。それがこの化学反応感に繋がっているのではないだろうか。その特別感にどんどんどんどん惹き込まれる。
ここでハヤシ氏は終わり。最後に「TOISU!!!!」言ってって笑ったwwww。続いてthe telephonesから石毛輝氏。こちらも同じく「DISCO!!!!」禁止令。「言わないよ!デリケートな問題だもんね!!」と石毛氏。この時点で振り感が満載wwww
そして次に歌われたのは
⑩17歳
こちらもツアーでは未演奏だった楽曲。まさに「青春」ソング。これを野音で聴けるのは嬉しい。徐々に寒さを帯びてきた初夏の風と黄色と緑の照明が、より歌の世界観を鮮やかにしていてまさに「檸檬が弾けるよう」。
 ⑪changes
Base Ball Bear屈指のアンセム。お客さんみんなが人差し指を掲げる姿は壮観。メンバーが一人欠けた中、メンバー、そしてお客さんのそれぞれが「Base Ball Bearの未来」を人差指で夜空に向けて指し示していた。
⑫十字架You&I
十字架You and I

十字架You and I

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ダークでファンキー、そしてリズミカルな1曲。こちらもまた、ツアーでは演奏されなかった1曲。ベース、そしてギターがそれぞれ前奏で見せ場を作りつつ、石毛氏がギターを置き、跳び跳ねたりヒゲダンスをし、最後にはバク転も披露。「ダンス湯浅」を彷彿とさせるような演出に切なさも感じつつ、石毛氏のサービス精神の旺盛さに爆笑したり。再度ギターを持った石毛氏はなんとブリッジでギターを演奏。どんだけだよwww
最後は勿論「DISCO!!!!!」で締める。小出も「DISCO!!!!」コール。いいもの見れた。
ホーリーロンリーマウンテン
ホーリーロンリーマウンテン

ホーリーロンリーマウンテン

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ここでフルカワ氏再登場。一転して重くのしかかるようなエモ―ショナルな演奏が始まる。哲学的な歌詞とも合わさって、心を闇の中に引きずり込まれるような感覚。
⑭カシカ
カシカ

カシカ

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一転して所謂下北ロックなサウンド。しかしそこも一筋縄ではいかないBase Ball Bear。歌詞カードを見なければ分からない細工を施している。上手いよなぁ。。。
⑮真夏の条件
そして「真夏の条件」!!!!野音で聞く「真夏の条件」はやはり良い。もう野音最高。もうこうなるとただ音に体を委ねるだけ。
⑯LOVE MATHEMATICS
 
努涛、とも言えるような曲たちの連打にやられっぱなし。
曲が終わると、改めてツアーに帯同してくれたフルカワさんへの感謝。フルカワ氏も「Base Ball Bear、好きになっちゃったよ」と。ここ嬉しかったなぁ。どうであれ、湯浅の友達だったフルカワさんにとってこのツアーに帯同するということは辛いことだったはずだ。そんな彼が「好きになった」と言ってくれるだけで、嬉しくなってしまう。
「若干キツい言い方かもしれないけど、今のBase Ball Bearは側から見ると、片腕を失ったバンドだと思うんです」と言及したのち「メンバーが両手両足だとしたら、Base Ball Bearというものは頭なんです。『片腕失って本体のBase Ball Bearどうする?』っていうときに、『作りたいこともやりたいこともあるし、ここでやめるわけにはいかないな』っていうのが3人の共通の意識で。今までは絶対に4人だけで!っていう強い気持ちがあったんですけど、これからはカメレオンのようにやっていきたい。でも僕らの上に乗っている頭は、あくまでもロックバンドですので! これからもよろしくお願いします」(ナタリーより引用 トイス!DISCO!ギタリスト4人が彩ったベボベ決意の日比谷野音公演 - 音楽ナタリー )

片腕を失った状態、というのはかなり的を得た表現だと思う。「ギターロックを4人で演奏する」ということをずっと不文律として続けてきたバンドからギタリストが脱退する、ということが指す意味は想像に容易い。それでも、片腕に義手を嵌めながらこのツアー、そして日比谷野音公演を完遂した。そこには転んでも屈しない精神だったり、「それでも何かあるような気がしてる」が故のことなんじゃないだろうか。「まだまだ何かある、まだやらなきゃいけないことがある」という強い気持ちがこのツアーや日比谷公演を中止や延期にする、という選択肢ではなく、完走する、絶対に終わらせる、という選択肢を彼らが選んだ動機ではないだろうか。

⑰HUMAN

HUMAN

HUMAN

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そんなMCを挟んで、本編最後の曲へ。丁寧に丁寧に演奏されたこの曲は、強い現実味を帯びて演奏された。僕たちもこの曲に出てくる1人でしかない。「人間味」なんてひどくつまらなく、鬱蒼なもので、でもこの人間味と一生僕たちは付き合っていかなければならない。現実味と付き合っていくことこそが人間味なのかもしれない。

この曲で印象的だったのが、照明の光線が「C」や「C2」などのジャケットに使われた「電波塔」モチーフのようになっていたところ。

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勿論、まんまこれ、という訳ではなかったが、それが何か切なくて、でも感動してしまった。演奏後、舞台袖にメンバーは捌けていった。

Enc.

アンコールはツアーと同じく3人での演奏。舞台に上がってきた小出は

「今回湯浅の脱退があったけど、ミュージシャンの皆さんやお客さんがこんなにもBase Ball Bearを心配してくれるんだ。考えてくれる人がいっぱいいるんだっていうことに、本当に救われました」(ナタリーより)

と感謝を述べ、アルバムやツアーも行う宣言をした。

⑱「それって、for 誰?」part.2

3人での演奏。勿論音源に比べたら物足りなさは感じるが、それ以上に3人の気迫を強く感じる1曲だった。

「それって、for 誰?」part.2

「それって、for 誰?」part.2

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⑲The End

The End

The End

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「終わりは そう終わりじゃない」。ベボベ第2章の始まりを予感させる幕開けの様な歌。まだまだ彼らのバンド活動は終わらない。

 今回のライブのハイライトは上記したようにやはりゲストギタリストの皆さんではないだろうか。Base Ball Bearのピンチを支えるためにこれだけの有名どころが集まった、というところにファンとしては嬉しさしかないし、こんな機会が無ければ見れなかったであろうギタリストを自分の好きなバンドの曲の演奏で聞くことが出来る。こんなに貴重な機会はないだろう。telephonesやPOLYSICSは、「名前は知ってるけどなかなか聞く機会が無かった」バンドだったのでこれを機に聞こうかなと思う。

そして私事で恐縮だが、このライブの後、田渕ひさ子さんにTwitterでリプを送ってみたところ、なんと返信をいただいた。

こんなに嬉しいことはない。これを糧にまだまだ頑張って行きたい。

 

このライブを最後にBase Ball Bearは新しいステージに突入していくと思う。今回のライブはそのステージに突入する直前の「今のBase Ball Bearでの最後のステージ」だったのではないだろうか。それを現場で体験できたというだけで感無量だ。

 Base Ball Bearの音を日比谷野音で体験できたのもうれしい。そりゃあ今回のライブは今までの「日比谷ノンフィクション」シリーズとは全く違う構造だし趣旨だった。それでも「short hair」や「PERFECT BLUE」、「17才」のような歌たちをあの日比谷野音という独特の空間で聴けたということにめちゃくちゃ意義があったんじゃないかと思う。すごく良い雰囲気のライブ会場だった。特にベボベとの親和性は半端じゃないなと思う。是非「日比谷ノンフィションⅥ」も見に行けたらなと思う。

 ツアー名古屋公演のレポも併せてどうぞ。

fujimon-sas.hatenadiary.jp

C2(初回限定盤)

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