アメトーーク・Perfume芸人に見る音楽番組のこれから

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10月30日、深夜の高視聴率番組「アメトーーク」にて「祝15周年!Perfumeスゴイぞ芸人」が放送された。メンバーはサバンナ高橋さん・ハリセンボン近藤さんことなっぴ・栗原類くん・ファンの中ではカリスマとされる掟ポルシェさん・流れ星ちゅうえいさん・ダイノジ大谷さんと、Perfumeファン界隈でも有名な「著名なPerfumeファン」が一堂に会し、Perfumeの魅力を語ってくれた。番組中盤ではサバンナ高橋さんと阿佐ヶ谷姉妹の渡辺さんことエリツィンが実際にPerfume日本武道館ライブに参加した様子が放送されたり、終盤にはPerfume本人がスタジオに登場してライブを敢行。1時間丸ごとPerfumeとPerfumeへの愛に溢れた番組になっていた。

放送終了後、Twitterのタイムラインを眺めていたけどスゴイ反響だなと思った。Perfumeにそこまで興味の無い人の「ライブ行ってみたい!」「映画見に行こうかな!」という書き込みをたくさん見た。深夜帯ではあったが、Twitterトレンドに「Perfume」がしっかりとトレンド入りしていた。iTunesにもPerfumeの楽曲やアルバムがランキングしていた。

勿論、これだけの反響があった理由としては間違いなく「アメトーーク」という番組そのものが持つパワーがあるのは言わずもがなだ。流石高視聴率番組の貫禄だなと思った。しかしそれ以上に、普段の音楽番組より「魅力を伝える」という点に関してこの番組の構成は上手かったと思う。

日本の音楽番組と言えば、「MUSIC STATION」が真っ先に思い浮かぶ。生放送でスタジオにアーティストやミュージシャンを複数組招き、それぞれ軽めのトークをした後演奏するというパターン。勿論この構成はそれ以前から「ベストテン」などで使われてきた手法だ。この構成の利点は間違いなく「複数のミュージシャンを一度に楽しめる」点だろう。沢山の人が沢山のアーティストの音楽を楽しんでいた80〜90年代でこの構成は音楽ファンにとって毎週ワクワクしながら見ていたのだろうということは想像に容易い。

しかし、時代の流れは移ろうものだ。

00年代後半からインターネットがより発達を遂げ、一家に一台・下手すりゃ一人一台パソコンを持つことが普通になってきた。10年代からはスマートフォンが普及し、より手軽にインターネットにアクセスできるようになった。「YouTube」「ニコニコ動画」などの動画サイトがどんどん普及した。アーティスト1人やバンド1組に対しホームページを1つ持つことは当然のこととなった。「着うたフル」「iTunes」などのダウンロードサイトの勢いが増していった。「iPod」「Walkman」などの「携帯デジタル音楽プレイヤー」もどんどん普及していった。その結果、それまでに比べて音楽の趣味、そして趣味そのものの多様性がより今まで以上に強くなり、80〜90年代ほどCDが売れなくなったというのは皆さんご存知の通りだろう。この結果、音楽の楽しみ方そのものが変わってしまった万人が沢山のミュージシャンやアーティストを聞くことが減り、少ないアーティストを深く深く聞くという楽しみ方にシフトしてきているのだ。
勿論、これは時代の流れだからどうしようもできないし、利便性が圧倒的に増しているのは事実だろう。しかし、音楽の楽しみ方そのものが変わってしまった結果、「音楽番組の見方」も変わりつつあるのではないだろうか。昔は沢山のミュージシャンが出てればそれだけ楽しめたMステも、今や1回に好きなアーティストが1人出てれば御の字、といった方が多いのではないだろうか。この結果が音楽番組離れに繋がっている気がする。事実僕だって毎週見ている音楽番組なんて1番組しかない。Mステなんてスルーする時の方が多い。

音楽番組はこれからどうするのが正解なのか。どうしたら音楽番組から離れていった音楽ファンを取り戻せるのか。そして音楽番組から音楽市場を盛り上げるためにはどうしたらいいのか。

僕は「1組のアーティストに深く迫る番組を作るべき」だと思っている。そして今回のアメトーークがまさに、Perfumeの魅力やファンでしか知りえないようなコアな部分にまで深く迫る」番組になっていた。

「ライブの演出」も「メンバーの人柄」も「楽曲の良さ」も、「なんとなくテレビでやってたのを見たけど、よくわからないけどすごいんでしょ?」止まりの方が多いのではないだろうか。これはPerfumeに限ったことではなくだ。世間には「ファン」か「ファンじゃない人」だけじゃなくて「ファンじゃない人以上、だけどファン未満」な人だって沢山いる。そういった「なんとなく」な層にまさにこの番組はドンピシャだったのではないのだろうか。
誤解を恐れずに言えば「この番組を見ればなんとなくPerfumeを知った気になれる」のだ。そうした刷り込みこそが「ファン未満」な人を「ファン」にさせるキッカケになる。

音楽の聞き方が変わってしまった昨今において、「如何に自らの魅力をプレゼンするか」はアーティストやミュージシャンにとって最大の課題だ。魅力的な音楽を作るのは大前提だが、それをどうなって知らない人に伝えれるかが今後アーティストやミュージシャンにとって考えなければならないことだと思う。その点において、今回のアメトーークのような構成はまさに「最大級のアーティストの魅力プレゼン番組」。音楽番組のように少ない尺でちょっとVTRを流すより、芸事を生業としている芸人さんをはじめとした人達が本気で魅力を伝えたり、普通の番組では流れないような実際のライブ映像を流したり、ライブ初体験の人がライブ後に泣いちゃった映像を流したり。それだけで説得力が段違いだ。勿論、この為にはそもそもそのアーティスト・ミュージシャンのフォロワー・しかも芸能界でそれなりの地位に登りつめた方々がいることが大前提となってしまうし、そこまでの過程が難しいのは事実だが。

1番組で1つのアーティストしか特集できないというのは非効率的だ。だがその分アーティストの魅力に気付いていない人が振り向いてくれるというのはとても大きいことなのではないだろうか。

「1組のアーティストに深く迫る番組」がもっと増えれば音楽市場ももう少し活性化するはずだ。Perfumeに限らず、まだまだ魅力的なアーティストは沢山いる。まだまだ一部のファンしか知りえない魅力を隠し持っているアーティストが日本には溢れている。今回の反響はそれ程に大きかったし、アーティストではないが、漫画「キングダム芸人」の時もスゴかった。書店員がビビるくらい売れてた。アーティストに限らず、魅力を万人に伝えるためにああいう番組は極めて効果的なのだ。

是非今後も「アメトーーク」さんにはミュージシャンやアーティストを定期的に特集して欲しいし、むしろこういった構成の特番を別で作ってもいいんじゃないと強く思う。テレビ各局の皆様お偉い様是非ご検討を...。