未来への虹が架かった夜 ~NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019 愛知公演を見て~【ネタバレ無】

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ASIAN KUNG-FU GENERATIONSTRAIGHTENER、そしてELLEGARDENという、00年代邦楽ロックシーンを支え、盛り上げた3バンドが15年振りに邂逅する「NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019」。開催の知らせはバンドファンだけでなく、全てのロック好きを歓喜させた。当然、ライブチケットは超がつくほどの大激戦。参加したくともそれが叶わないファンの方も多かったと聞く。

そんな中で愛知公演に参加することが出来た僕が目にしたものは、タダの同窓会ではない、彼らの未来への一歩だった。

演奏曲やMCなど、詳細なレポートは他サイトのほうがきっと充実していると思うので、僕はあくまでも僕が感じたことに絞って書き進めようと思う。

まず思ったことは各バンド、皆熱量の高い演奏だったということ。アジカンは結成から20年以上の時を経て培った地力を感じさせるような、足腰の強いドッシリと構えた演奏を見せたかと思えば、ELLEGARDENは休止していた10年分を取り返さんと言わんばかりの魂を焦がすような爆発的な演奏を以て会場にいるすべての人間を奮い立たせる。そしてストレイテナーはこのツアーの骨格だ。アジカンのような文学性とエルレの激しさを掛け合わせた、この3バンドを繋ぎ合わせるような演奏を魅せる。続けた者、再び動き出した者、変化を重ねた者。皆バラバラのようで、でもだからこそ彼らは盟友として今でもこうして共にライブを行っているのだろうとも、各々の演奏を見ながら感じていた。

そして出演した3バンドは皆、15年前を懐かしみ、僅かな時間を噛みしめるように演奏し、話をしていた。アジカンのゴッチは「楽しい」「嬉しい」と何度となく口にしていたし、エルレの細美さんはアジカンメンバーとのやり取りをユーモアを交えながら優しく楽しそうに話していたし、テナーのホリエさんは「今でも一緒にライブが出来て嬉しい」と心から話していた。彼らは盟友で、もうやることはないと思われていたこの3マンライブをまたこうして開催出来ているのだから、嬉しくない訳がない。誰だって、同窓会で過去の友人と会えば楽しいはずだ。

しかし、彼らはこの夜をそんな「タダの同窓会」にはしなかった。

アジカンのゴッチは最後に「10年後もまたこうして音楽を鳴らしていると思う」と話し、「ボーイズ&ガールズ」を高らかに歌い上げた。

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新しい 扉開こうか

We’ve got nothing

ELLEGARDENは「過去を更新し続けたい」と話した後にゴッチをステージに招き入れ、最後に「虹」を歌った。

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間違いとか すれ違いが

僕らを切り離したって

僕らはまた 今日を記憶に変えていける

そしてストレイテナーは細美、ゴッチの両名をステージに呼び、この日のライブのオーラスとして「ROCKSTEADY」を歌った。

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僕らは進まなくちゃ 先を急がなくちゃ

足が言うことを聞いてくれているうちに

君等は残らなくちゃ 後を担わなくちゃ

星が闇を削ってくれるうちは

皆、音楽を通して未来への希望を叫んでいた。アジカンは新しい扉を開こうと歌い、エルレは今を記憶にすることで未来に進めと叫び、テナーは進み続けることを告げていた。

未来なんて誰にも分からない。音楽シーンも、この社会も、自分自身の生き様だって、誰も分からない。災害で一夜にして生活を失う人が居る。いじめを苦に今居る場所を去らないといけなくなる人が居る。誰もそんな未来は予想できないし、その瞬間の辛さ、苦しさ、生き辛さは当事者以外には誰にも分からない。

だからこそ、未来に希望は捨てちゃいけない。この世界には絶望と同じように、希望もあるのだから。

彼ら自身の、そして音楽シーンへの、何より参加者一人一人が渡る未来への七色の架け橋。その第一歩がこの「NANA-IRO ELECTRIC TOUR」だった。10年後も彼らがナナイロをやっていますように、その時僕を含めた今夜の参加者皆が音楽が好きであり続けられますように。この奇跡みたいな夜が終わり、誰もいなくなったステージを照らす七色の証明を見ながら僕はそんなことを考えていた。

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