サザンオールスターズが背負い続ける、この国で大衆音楽を歌う覚悟と矜恃

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先日『WOWOW presents サザンオールスターズ LIVE TOUR 2019「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」 supported by 三ツ矢サイダー』福岡ヤフオク!ドーム 初日公演に参加してきました。

今回は曲名や具体的なセットリストに触れないように、今回のライブを見た感想を記していこうと思います。

サザンが見つめた40年

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今更言うまでもない事かもしれないが、サザンオールスターズは昨年デビュー40周年を迎えながら、なお日本音楽シーンを牽引する最重要バンドのひとつであり続けている。その理由は他でもなく、この40年、彼らが泥臭くがむしゃらに、そして覚悟を持って大衆と向き合い続けてきたからに他ならない。大衆と向き合うということはつまり、大衆を内包する社会そのものと向き合い、その社会を楽曲に反映し続けたということだ。サザンオールスターズは40年間この日本という国を見つめ、時にユーモラス、時にシニカルに、そして批評的に社会への視点を、絶やさず自身の生み出す楽曲に還元し続けてきた。

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「社会」や「大衆」と言うと、いわゆる「社会派」「政治的」なモノを連想しがちであるが、何もそれだけが「社会」でもなければ「大衆」ではない。恋も愛もセックスも、四季も地域も芸能も流行も俗も、悲しみも苦しみも憧れも悔しさも切なさも愛しさも、そしてそのどれにも属さないスゴく限定的な人間の感情や行動も、その全てが「社会」を構築しているし、サザンはその全てをこの40年歌い続けてきた。

サザンオールスターズの音楽は「ポップス」と形容されてきたが、近年の彼らは自らの音楽性を「ポップス」ではなく「大衆音楽」と形容している。それは彼らが「大衆」と向き合い続けることで貫いてきた「大衆音楽家」で在り続ける覚悟の現れだ。

今回のライブではこの40年、或いは40年以上前も含めて、日本社会や日本に住む国民、そしてこの国に起きた様々なモノ・コトを思い起こさせるような楽曲・演出が随所に配置されている。まるでそれはこの国の歴史を音楽を通して振り返っているかの様だった。このライブでサザンオールスターズが表現したかった事とは、自身が見つめたこの国の40年そのものだったのではないだろうか。

日本大衆音楽史を体現するサザン

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そして「サザンがこの40年見つめてきたもの」は社会だけではない。日本の音楽シーンを牽引しながらも、同時にシーンを真摯に見つめながら楽曲制作をしてきた彼らにとってこの40年は「如何にサザンオールスターズらしさとあたらしさ」を混ぜ込みながら新曲を作るかを考え抜き続けた長い時間だったはずだ。歌謡、テクノ、民謡、R&B、ラテン、古典、ハードロック、ボサノバ、シャッフル、ロックンロール、ヒップホップ、ファンク、カントリー、ディスコ、打ち込み。それらの様々な音楽性がひっきりなしに飛び出すのがサザンオールスターズというバンドの最たる魅力であり、多様な音楽を鳴らし続けた彼らの40年の歴史はそのまま日本の大衆音楽の40年の歴史と言える。

今回のライブは、そんな自身の「音楽的な多様さ」を3時間半に徹底的に詰め込むことで、自身の40年の総括でありながら、同時に「日本の大衆音楽史」すらをも振り返ってしまう、他のどんなバンドでも出来ない、サザンオールスターズでしか出来ないことをやってのけてしまっていた。後にも先にも、こんなライブを見ることはきっともう出来ないだろうと思う程、攻めに攻めた構成ながら、それでいて普遍さも持ち合わせた、大衆音楽が目指すべき境地に達している「大衆音楽劇場」がそこにはあった。

現役であり続ける意味

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昨年末の紅白でのサザンオールスターズを見て、僕はこんなことを書いた。

未だに現役としてシーンの最先端を走るサザンオールスターズは、伝説なんかじゃない。現役で走り続ける最高にカッコいいロックバンドだ。

ongakubun.com

そんな彼らの「現役性」は今回のライブでも健在だ。最新曲が演奏されることは勿論、過去曲も現在形に、それも「あくまでも原曲に忠実」でありながらも、例えば曲と曲のの繋ぎ、あるいは曲の始まり、そして曲中の気付くか気付かないかの、でもそれがあるとないとでは全く聞き心地が変わってくるような細かいアレンジの積み重ねによる大幅なアップデートが全編に渡ってなされている。それらがサザンオールスターズというバンドの「現場で戦い続ける」という「現役主義」を決定的に表している。

 大衆音楽はその時代の世相、時世、大衆そのものを歌い続けなければならない。音楽は時代を超えるが、大衆音楽家が大衆音楽家で在り続けるためにはリアルタイムに「"今"の時代」を楽曲に反映し続けなければならない。自身が大衆音楽家で在り続けるため、日本という国の「今」を「未来」へと遺していくため、サザンは今でもシーンの第一線で大衆音楽を歌う覚悟と矜持を背負いながら歌い続けている。

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ただの「周年イヤーライブ」ではない、大衆音楽を鳴らし続ける覚悟を持った彼らでなければ生まれない「完全無欠の大衆音楽劇場」がそこにはある。これからツアーに参加される人においてはきっと、タダの音楽ライブではない、3時間半の大スペクタクル大衆音楽ショーに度肝を抜くことだろう。サザンの背負う、覚悟と矜持を会場で体感してほしい。