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雑記

カルチャーが好きなだけ。

キングコング西野さんの「絵本無料公開」は日本中の書店を潰す

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 キングコング西野さん。お笑い芸人という肩書を捨てて、今は絵本作家として働きつつも色々な活動で人々を驚かせ続けてる「スーパー作家さん」です。

えんとつ町のプペル

えんとつ町のプペル

 

彼の描いた「えんとつ町のプペル」は23万部の大ヒット。絵本でこの売上は相当のヒットです。間違いなく近年でも「大ヒット」の部類に入るような作品です。私はとある地方にあるそれなりに大きな書店で働いています。私の働く店にも「えんとつ町のプペル」は沢山入荷しました。平積みにしてレジの前に置いておく程度には、沢山売れると期待して入荷しているのでしょう。

彼の公式ブログにこんな記事が載りました。要は「無料で絵本を公開します」という話。少なくとも僕は、という前置きをしますが、相当違和感の感じる記事でした。

「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ?糞ダセー。

……いや、モノによっては、そういうモノがあってもいいのかもしれません(←ここ大事!ニュースになると切り取られる部分ね)。

しかし、はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?

キングコング西野 オフィシャルダイアリー 「魔法のコンパス」内記事 「お金の奴隷解放宣言」より引用

ココの部分に僕は強烈な気持ち悪さを感じました。

ネットがより発達し、芸術作品に対して「お金を払わない」人が増えています。音楽は無料で聴ける違法ダウンロードアプリを使い、映画は違法ダウンロード。勿論、違法のものばかりではなく、正規の手順で無料化されている物も数多くあります。LINE MUSICやAWASpotify辺りのサブスクリプション音楽配信サービスの一部サービスはまさにその典型です。そんな中で、「芸術にも人がいる、お金がかかる。芸術にも相応な対価を払わないといけないんだよ」という事を子供に教える事こそ大人が今するべきことなはずなんです。「絵本」、ひいては「本」は間違いなく「お金を払わないと読めないモノであるべき」はずなんです。何故ならそこにはクリエイターの努力や沢山の人の苦労があって初めて1冊の本が売れるから。

ただ、もしかしたら、『本』は…もっと言うと『絵本』は、「お金を払って買いたい人は本を買って、無料で読みたい人はネットで無料で読めるモノ」になれるかも、と思いました。

キングコング西野 オフィシャルダイアリー内記事「『えんとつ町のプペル』を無料公開したらAmazonランキングが1位になった。」より引用

ここの価値観が僕と西野さんは相交われない部分なのかなと思いました。今の若者が「音楽は無料で聴けるもの」と勘違いしているように、西野さんのしたような事が繰り返されれば、若い人たちにとって「本は無料で読めるモノ」になってしまいます。

なにより僕が今回1番気にしているのは「小売店」です。

「情報としての絵本のお金はもう要らないよ」ということ。
子供の教育のことを考えてもね、
その方が、本屋さんに足を運ぶ子供が増えるのよ。
その方が、キチンと値段が付いている本に触れ、物の価値を理解する機会が増えるのよ。

キングコング西野 オフィシャルダイアリー内記事「声優・明坂聡美の危うさ」より引用

今回、絵本の情報を無料公開したことによって、Amazon楽天の書籍総合ランキングが1位になり、本屋さんでもたくさん買っていただいたそうだ。

キングコング西野 オフィシャルダイアリー内記事「声優・明坂聡美の危うさ」より引用

本屋さんに足を運ぶ子供が増える、としながらも今一番本屋の敵であるamazon楽天の書籍総合ランキングで1位。本屋さんの記述だけ曖昧なのは書店での販売数のデータが計りにくい、というだけのことなのでしょうか。

僕を含めた書店員が今一番お客様にして欲しいことは「本屋に足を運んでいただく」事です。実際の本を見て、中身をチェックして貰い、その上で店舗で本を買っていただくのが1番嬉しいことであると思ってます。「最近西野の本が流行ってるらしいから本屋に行って中身見てみよう」と書店に来ていただけることに期待して「えんとつ町のプペル」を入荷した書店さんも多いのではないかと思ってます。西野さんの行った「無料公開」は「書店から客の足を遠ざける」事以外の何物でもありません。

絵本は安くありません。
なので、『絵本を買う』となると、絶対にハズすわけにはいかないので、まずは本屋さんで(若干、店主の目を気にしながら)最後まで立ち読みすることが少なくありません。

キングコング西野 オフィシャルダイアリー内記事「絵本とフリーミアムの相性」より引用

どうぞ立ち読みしてください。先のツイートにも書きましたが、立ち読みして頂いて買われる本を決めていただくことに対して僕達はなんの抵抗もありません。本の折れやシワを防止するために絵本にビニールを掛けている店舗も多いですが、お申し付け頂ければスグに外します。

小さな子を持つお母様方にお金や時間が無い、というのはよく分かりますが、そことネットで無料公開をする、という部分が僕は繋がりません。ネットで立ち読みするのと実本を立ち読みする時にかかるお金や時間に差はあるのでしょうか。西野さんの仰る「ネットで立ち読みしてもらって書店で本を購入してもらう」のならば「本屋に行って本屋で立ち読みしてその場で本を購入してもらう」のと結局かかる時間は同じです。「買うか・買わないか?」のステージには本来皆立っている筈では?

部分的に無料化した方がお金が回る場合があります。
部分的に無料化した方がクリエイターが救われる場合があります。

キングコング西野 オフィシャルダイアリー内記事「絵本とフリーミアムの相性」より引用

「部分的に」という表現をされていますが、僕はむしろ「瞬間的に」の間違いだと思います。この一瞬お金が回っても、その先々を見た時にこの無料公開が引き起こすのは「負」が強いのではないかと考えます。クリエイターさんの方がよほど「市場の崩壊」に備えたお金の価値や流れの変化を見極めています。ただただ西野さんは「市場の崩壊」への歩みを早めただけでなく、「その先にある市場」への道までぶち壊しているのではないかと。

 

僕は書店が好きです。自分の目当ての作品だけでなく、書店だからこそ出会える本があるからです。今、僕が所有する本の半分以上は目当てで購入した訳ではなく、書店でふと気になったから買ったものが多いです。遅かれ早かれ書店という文化は廃れて行きます。僕自身、その恐怖を肌で感じています。それでも、クリエイターの方や問屋さん、小売店は必死に本屋という文化を存続させようと必死に考えてます。今回、絵本が大ヒットしたのは本当に書店にとっても嬉しいことだったと思います。だからこそ、「本屋」という存在を(考えている風に見せかけて)おざなりにした西野さんの行動が残念でなりません。本屋に足を運んで貰う機会を奪った西野さんの行動が残念でなりません。

 

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