【ライブBlu-rayレビュー】「おいしい葡萄の旅ライブ」に見たサザンオールスターズの「今」

購入しました!!

 

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素晴らしい映像作品。Blu-ray3枚で計8時間近くも楽しむことができる。このボリュームだけでファンとしてはもう言うことなしだが、そのどれもが音楽に真摯に向き合うサザンの姿を映し出しているのもまた素晴らしい。

あと、サザンのDVDは散々買ったけどBlu-rayは初購入でした。くっそ綺麗だねマジで。その場にいるかのような感覚になる。音も素晴らしい。

ここからは各discを見た所感を。

①武道館編

多分会場自体ドームに比べて音が良い場所だってのもあるのだと思うが、ドームに比べても明らかに音の細部をハッキリと感じ取ることができる。生で聞いてても気付かなかった、でもこうして改めて聞くと明確なアレンジ、それもCDの原曲から大きく離れたものではなく、よりライブ映えするように隅々にまで拘ったアレンジが施されている。ここが彼らの大きなこだわりなのだろうなと思う。

そしてあの夏、サザンファンを熱狂の渦に巻き込んだ武道館公演を限りなくそのままパッケージされているのもGood。何よりThe Beatlesのカバー「HELP!」が収録されたのはもうこの上なく嬉しい。権利関係の厳しいビートルズがこうして収録されるあたり、サザンの37年で培ってきたものが今実っているのかなと思わされる。そして改めて語るまでもないかもしれないが今回のツアー、セットリストが強すぎる。アルバム「葡萄」の楽曲は勿論だが、定番曲からファン垂涎のレア曲まで網羅しつつも「葡萄の旅」に相応しく「葡萄」の世界観を壊すようなことはなく、むしろ過去曲が「葡萄」の世界観をより強固なものにしている。なにより特筆するべきは「いらないコーナー」と評されたあの4曲の流れだろう。2015年の日本を過去の曲で痛烈に批判する様には「ロックバンド・サザンオールスターズ」の真髄を感じることができた。死ぬほどカッコよいのだ。桑田さんの声の調子もめちゃくちゃ良いのもこの武道館に向けて体制を整えてきたことが伺えるし、それだけこの武道館公演が特別なものだとサザン自ら自負してるのだろうなと思わされる。そして客席ももこの特別な公演を心の底から楽しもうという思いで溢れかえっているし、それが熱気となって会場中を包んでいる様子も鮮明に捉えられている。それがなんとも泣けるのだ。

そして映像作品として忘れてはならない「カメラワーク」や「編集」もばっちりだなぁと思った。いろいろな会場をぶつ切りにしパッチワークにするような編集はサザン映像部の十八番だったが、武道館の映像なだけあってぶつ切り感は少なく、ライブ感をより感じることができる。シンプルな編集でライブ感がよく出ている。「Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)」の撮り方なんかもう素晴らしすぎる。映像の撮り方もその楽曲の世界観を構築する要素の1つだ。そういう点においてこの武道館discは素晴らしい編集だったと思う。

惜しむらくは13年の映像作品「灼熱完全版 胸熱の“茅ヶ崎”完全版 」の時のように、会場周辺の盛り上がりや開場→開演間の盛り上がりなどを映像として残してほしかったのだが尺の都合もあったのか収録されなかった。あとはMCも割とバッサリカット(「年明けに怒られまして…」のくだりとか「Aqua Timesが前日までライブしてて」のくだりとか)されていたのだが、所謂「大人の都合」というやつだろう。こればっかりは仕方ない。そのため4時間のライブが3時間半近くに短くされていた。これに関してはむしろ見やすくなったと考えるべきなのかもしれない。

②ドキュメント編

初回限定盤のみに付属されるドキュメント「Document Film-サザンオールスターズとおいしい葡萄の旅-」。これが素晴らしい作品だった。こんなのオマケのレベルを超えている。個人的には構成があまり好きではなく、「桑田佳祐 LIVE TOUR & DOCUMENT FILM 「I LOVE YOU -now & forever-」のドキュメントの構成のほうがライブを作り上げていく過程がより鮮明に映されていて好きだったのだが、とはいえこれは好みの範疇だし、そもそも今回のツアーとI LOVE YOUツアーじゃそのライブの本質も異なるものだったと思う。今回のツアーの本質に十分に沿ったドキュメント作品だったし、映画として公開されても全然違和感のないものだったと思う。各会場の盛り上がりもしっかりと収められている。

惜しいのは沖縄の「真夏の果実」がフル尺で収録されていたのだが、それなら「All My Loving」入れてほしかったのだが…流石に権利問題かなぁ。あとはWOWOW版では収録されていた各会場の「〇〇,The World is one!!」も収録してほしかったところ。

③ドーム編

やはりこちらはどうにもぶつ切り感が気になって仕方ない。衣装が1曲の間にコロコロ変わるとそれだけでもうノイズが凄い。会場の見かけはさほど変わらないからまだいいが、衣装をツアー途中で何度か変えてしまったのは失敗なのでは?

武道館の編集は割とシンプルで、それが結果として素晴らしいモノになっていたが、こちらは演出の映像として使っていたような表現をそのまま使っていたりもする。テレビの音楽番組的な編集に近い気がする。僕はそんなに好きではないが、それでも好みによって分かれるのではないだろうか。

やはり武道館は本来サザンのライブ規模てはない。どう見ても小さすぎる。派手な演出やセットの中で歌うサザンを観たいならばこちらを見るべきだと言わざるを得ない。



サザンの「今」が鮮明に刻まれた映像作品。武道館ライブとツアードキュメンタリーは併せて絶対に見て欲しいし、ファンじゃない方にこそ寧ろ見て欲しい。ファンですら知り得ないようなサザンの側面をイヤでも感じ取れる筈だ。


【過去記事再掲】サザンオールスターズ 「おいしい葡萄の旅」追加公演 日本武道館2日目【ライブレポ】 - Hello,CULTURE

実際に僕が参加した日本武道館二日目のライブレポも併せてどうぞ。